業界ニュース

澤村投手への鍼施術報道
業団からの質問状に読売巨人軍が回答 [2017.11.09]

9月10日、読売巨人軍の澤村拓一投手が、「球団トレーナーによる鍼治療のミスで長胸神経麻痺が生じた可能性がある」との報道がなされた。この問題に対して、鍼灸業界の9団体が連名で9月21日に読売巨人軍に質問状を送付していたが、その回答が11月7日、読売巨人軍から寄せられた。

 

読売巨人軍と業団担当者が9月25日の週に1回目の面会を行い、10月19日に2回目の面会を行ったが、業団の質問に対して巨人軍から回答が得られず、再度回答を要求したことは医道の日本2017年11月号でも報告したとおりである。関係者によると、その後3回目の面会が10月27日、4回目の面会が11月7日に行われたという。4回の面会を経て、ようやく公式に発表できる回答を得たことになる。

 

鍼によって長胸神経麻痺は起こりうるのか――。解剖学的な視点から考えても、その可能性が低いことは医道の日本11月号でも検証したが、読売巨人軍からの回答はあくまでも「長胸神経の麻痺は、当球団のトレーナーが行った鍼治療が原因となった可能性が考えられる」というものであった。

 

その一方で、「当球団は鍼治療が有効であることを十分認識しており」との記載もあり、現在も多くの選手やスタッフに対して鍼治療が行われているという、不可解な回答であった。また、業団の質問は、診断した医師と施術したトレーナーに宛てていたが、トレーナーへの質問に対する回答にあたる文章は見当たらなかった。

 

読売巨人軍の回答文を、業団の質問状の項目に照らし合わせ、要約してみた。

 


 

医師への質問(読売巨人軍が回答)

 

Q1. 正確な診断名とその理由(所見)

長胸神経の不全麻痺、それに伴う前鋸筋の機能低下(選手の症状等から)。

当該選手を診察した複数の医師が、長胸神経麻痺は、当球団が行った鍼治療が原因となった可能性が考えられると答えた。

 

Q2. はり治療を原因とした理由(因果関係)

発症時期や当該選手の問診等から。診断した医師経歴や専門分野における実績等に秀でており、当該選手に関する診断は信頼に値する。

 

他の原因を除外した理由。はり治療前から長胸神経麻痺を疑う所見がなかったか。

鍼治療以外にも、強い力がかかる他の外的要因によって長胸神経の麻痺が生じた可能性もあるとの意見も出た。

 

Q3. 患者の転帰

すでに回復。

 

Q4. 安全対策

回答なし。

 

Q5. 意見感想

当該選手を施術したトレーナーは、現在も当球団でトレーナーとして勤務。当球団は鍼治療が有効であることを十分認識しており、現在も多くの選手やスタッフに対して鍼治療が行われている。今後も引き続き鍼治療を活用していく方針に変わりはない。

 

 

トレーナーへの質問

 

Q1. はり治療の詳細(主訴と治療の目的、使用鍼のサイズ、刺鍼部位・方向・深度・強度、等)

回答なし。

 

Q2. 刺鍼時あるいは刺鍼後に神経を傷害したことを示唆する現象(強い鍼響、痛み、シビレ、筋の単収縮、等)

回答なし。

 

Q3. 原因となる施術行為、防止策

回答なし。

 

Q4.意見感想

回答なし。

  

回答書の全文は以下の通り。



 

公益社団法人 全日本鍼灸学会
   会長 久光  正 様


日本伝統鍼灸学会
   会長 形井 秀一 様


公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
   会長 伊藤 久夫 様


公益社団法人 全国病院理学療法協会
   会長 平野 五十男 様


公益社団法人 東洋療法学校協会
   会長 坂本  歩 様


公益社団法人 日本鍼灸師会
   会長 仲野 弥和 様


公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
   会長 安田 和正 様


社会福社法人 日本盲人会連合
   会長 竹下 義樹 様


日本理療科教員連盟
   会長 栗原 勝美 様


冠省 貴団体から921日付文書「はり治療による長胸神経麻痺に関する報道についての照会」が当球団に送達されたことを受けて、当球団は当該選手を診察した複数の医師から、あらためてお話をうかがいました。


   いずれの医師も、選手の症状等から長胸神経の不全麻痺であり、 それに伴う前鋸筋の機能低下であるとの診断に変わりはないと話されています。また、発症時期や当該選手の問診等から、長胸神経の麻痺は、 当球団のトレーナーが行った鍼治療が原因となった可能性が考えられると答えられました。ただし、鍼治療以外にも、 強いカがかかる他の外的要因によって長胸神経の麻痺が生じた可能性もあるとの意見も出ました。


   お話をうかがった医師はいずれも、 経歴や專門分野における実績等に秀でており、当該選手に関する診断は信頼に値するものと当球団では考えています。


   当該選手の長胸神経麻痺はすでに回復しております。また、当該選手を施術したトレーナーは、現在も当球団のトレーナーとして勤務しています。当球団は鍼治療が有効であることを十分認識しており、現在も多くの選手やスタッフに対して鍼治療が行われています。今後も引き続き鍼治療を活用していく方針に変わりはありません。


   末筆ながら、 貴団体の益々のご発展を祈念しております。

草々

 

2017117

株式会社 読売巨人軍

 


 

開業鍼灸師をはじめ、鍼灸業界全体に及ぼされた風評被害が今回の回答で払拭されるのかどうかは、はなはだ疑問である。

 

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