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ゴッドハンド・妻木充法氏の
南アフリカワールドカップ現地レポート(最終回) [2010.07.15]

サッカーワールドカップでFIFA(国際サッカー連盟)の要請を受け、審判へのメディカルサポートに参加した妻木充法氏。前回のレポートでは、日本対パラグアイ戦で審判のフィジオ(トレーナー)として帯同したことが伝えられました。決勝戦でも帯同し、ボルテージが最高潮に達した試合会場の舞台裏で、審判を見守りました。審判団の中には日本人の西村雄一さん、相楽享さんもいました。

みなさん、こんにちは

先日、ヨハネスブルグのFIFAヘッドクォーターに行きました。下の写真の銅像は、マンデラスクエアにあるマンデラ元大統領です。この奥に見える建物にFIFAヘッドクォーターが入っています。ここでは、運よくブラッター会長の執務室に入ることができました。

 

 

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ヨハネスブルグは、最大の犯罪都市として有名です。しかし、さすがFIFAです。セキュリティーはしっかりしていました。写真は、残念ですが、お見せできません。

ワールドカップは決勝でスペインがオランダを延長戦の末1-0で下し、フィナーレを迎えました。私とマリオは、その決勝戦の審判に帯同しました。指名されたのはイギリスのトリオですが、第4、第5の審判は、思いがけなく日本の西村雄一さんと相楽享さんでした。担当審判は通常、試合日の48時間前に知らされます。日本の二人は、意外だったようです。下の写真は決勝前日の練習です。5名の審判とインストラクターです。

 

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相楽さんのブログにそんな審判にまつわることが、いっぱい載っています。
http://sagaraman.jugem.jp/

 
 ●審判の装備
 
おそらく、多くの方が、審判は、ホイッスル(笛)とカード(イエローとレッド)を持っているだけと思っているのではないでしょうか? しかし、FIFA審判は、それ以外にユニフォームの下にテクノ機器をつけています。4年前のドイツ大会では、試合中に、応援や楽器の音で、主審の声がまったく副審や第4の審判に届きませんでした。そのため、ドイツ大会のあとから、無線によるコミュニケーションシステムを導入しました。イヤホンとマイクのヘッドセットと腕に付けた通信装置からなります。わかりにくいですが、の右腕に触覚のようなアンテナが見えます(下写真)。


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そして、逆の左腕には、白いサポーターで保護した、副審からのシグナルを受ける受信機(音と振動を発生)をつけています。上腕二頭筋が大きくなり、力強く見えますが、結構不便です。
さらに、胸に心拍計測装置をつけ、右手首にそのモニター、さらに左の手首にタイマー付きの時計をつけます。つまり、両手首、両上腕、胸、そして、口と耳になにかしらつけていることになるのです。実は、すべての試合で審判の心拍数は、ウォームアップから延長、PK、試合終了まで記録されチェックされています! 下の写真のように全員の両手首に時計とモニターが見えます。

 

 

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余談ですが、今は冬(南半球なのです)、まだ問題は少ないのですが、夏にこの装備で選手と同じ距離を走るのは、かなりきついものだと思います。

●決勝戦の前のケア


決勝戦の前に、ロッカールームでスタッフと記念写真を撮りました。西村さんも相楽さんも心地よい緊張感からか、いい顔をしています。

 

 

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決勝は、会場はほぼ満員(8万5千人)だったそうです。私とマリオは、水戸の黄門様のようにどこにでも入れるアクレディテーション(all area)と決勝のチケット(下写真)を持っていましたが。

 

 

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残念ながら、医務室のテレビで観戦しました! 閉会式? 審判の帯同ですから、当然見られません。私は、日韓、ドイツ、南アフリカと3大会に帯同しましたが、決勝は、すべてTV観戦でした!こんなときフランス人は、C'est la vie といいますね。
(セレヴィ これが人生 という意味)

余談が多くなりました。帯同すると、試合前のマッサージをすることも当然あります。今回は、マリオが10分程度下肢だけオイルマッサージをしました(下写真)。

 

 

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決勝は、激しい攻防となり、珍しくイエローカードが14枚も出ました。どの選手に出したのか、主審は、イエローカードにメモを残していました。

 

 

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あまり知られていませんが、表彰式で、最初に表彰されるのが、審判です。それだけ重要な存在なのです。下の写真は、ブラッター会長に向かう審判たちです。この後ろに2位になったオランダと1位のスペインが控えているのです。

 

 

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●大会中、審判に起こったケガ

本大会では、試合中のケガ(外傷)は、主審の下腿の肉離れと副審の足関節の捻挫の2件だけでした。練習中に足関節捻挫が2件ほどありましたが、4年前のドイツ大会と比べると、発生件数が激減しました(注)。RAP(Referee Assistance Program)のメディカルサポートの成果でしょう。
 
ところで、下腿の肉離れは、審判にとってかなり深刻です。なぜなら、大腿部に比べ、時間がかかることと再発しやすいからです。そして、選手と違って交代ができないからです。ですから、大会期間中に肉離れをすると期間中に試合に復帰するのは、大変難しいことです。今回、主審が肉離れをしたのですが、予想より早く復帰できました。治療の実際は、月刊『医道の日本』9月号で紹介します。



(注)Mario Bizzini, Astrid Junge, Roald Bahr, Werner Helsen and Jiri Dvorak;Injuries and musculoskeletal complaints in referees andassistant referees selected for the 2006 FIFA World CupTM -Retrospective and prospective survey、Br. J. Sports Med. published online 4 Jul 2008  doi:10.1136/bjsm.2008.048314

 

さて、7週間に渡る私のワールドカップもとうとう終わりました。ここまで、お読みいただきまして、ありがとうございました。また機会がありましたら、いろいろお話ししたいと思います。

それでは、みなさん、さようなら

私のブログも随時更新しています。
http://blog.goo.ne.jp/tmsblog-tsumaki


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