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治療院のココがこだわり! ~音楽編 (2)~ [2010.07.26]

東京都江東区の清澄庭園に面した齋藤鍼灸院。築75年の老朽家屋をリノベーションしたときにわざと残した柱(写真)、庭園の緑を存分に愛でることができる大きな窓、和紙を貼った壁など、院長である齋藤友良先生のこだわりが随所に散りばめられた、心地良い空間です。1階のカフェギャラリーと2階の鍼灸院は吹き抜けでつながっていて、1階では音楽ライブが開かれることもあるとか。今回は齋藤先生の「音」へのこだわりにフォーカスします。

――齋藤先生の治療院に設置されているアンプは、あまり見かけないものですね。どこで入手されたのですか。

 

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齋藤 小松音響研究所制作のオリジナルの真空管アンプです。


(小松音響研究所 http://blog.komatsuonkyo.com/

 

 

この治療院の設計、トータルコーディネートをした建築家の畑山慶さん(株式会社AND LODGE)、小松音響研究所の小松進さんと私でイメージを練り、小松さんにオリジナルのモノを作ってもらいました。


音響へのこだわりは、畑山さんの提案でもあります。私の治療を実際の患者として受けたとき、ベッドで仰向けになったりうつぶせになっているうちに思いついたそうです。小松さんは、寺山修二の舞台の音響・照明をやっていたとても変わった方なので、それがデザインにも反映し、「えっ? これ何?」という印象を与えてくれます。そして、ステンレス製アンプなのに、昭和の温かみというかレトロな感じがします。

 

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スピーカーは、小松さんが選んでくれたものです。メーカーはわかりません(笑)。ただ、私が「大きなスピーカーではなく、むしろどこから音が出ているのかわからないような感じがイイ」と希望を出したら、天井からぶら下がっている球形のスピーカーをつけてくれて、それが一番気に入っています。右写真の右中央の球体がスピーカーです。

 


――オリジナルとなると、高価なのでしょうね。


齋藤 スピーカー・アンプ&照明電圧装置及びその設置料金(配線別途)、すべて込みで30万円です。

 


――齋藤先生はBGMにどんな曲を選びますか?


齋藤 ボサノバ(Joan Gilbertなど)、ジャズ(MilesDavis,、Bill Evans、 Keith Jarret など) が多いです。しかも、すごくゆっくりなリズムの曲です。基本的に、私が選曲しています。最近のお気に入りは、ポルトガル人のCD(Macela Passadore/Danzas Del Viento)ですね。


日本の曲は、ほとんどかけないです。沖縄の民謡ぐらいですかね。全く意味が聞きとれない日本語ですね。とにかく日本語は意味を追ってしまうので。もちろん、ラジオはNGです。

 


――患者さんの反応はいかがですか?


齋藤 音の良さに気づかれる方は、時々います。ご年配の男性の方が多いですね。「ライブを聴いているようだ」と言われたこともあります。1階のカフェギャラリー「楽庵」と2階の治療院で同じ音楽を流しているので、1階のギャラリーに在廊していた作家さんは、「上から音が流れてくるようだ」と言っていました。2階の治療院は、スピーカーの存在が分からないようにしているので、女性の方は「どこから音がしているの? 1階から?」と言われたこともあります。


写真は1階から見た2階(左)と、2階から見た1階(右)です。吹き抜けでつながっています。

 

 

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――1階のカフェギャラリー「楽庵」は、音楽ライブ会場に変身することもある、とのことですが、ライブはよく開かれるのですか?


齋藤 年に数回のペースでやっていました。今年は、ミュージシャン達が全国に散らばってしまって、行う予定はありませんが、来年の1月か2月あたりに開催する予定です。会場は無料で貸します。ただ、ライブを行うのは、細谷季子とアフリカ伝統音楽Mbiraのグループの2組だけです。その他のミュージシャンに貸す予定は、今のところありません。

 


――音楽ライブを開くようになったきっかけは何ですか?

 

齋藤 作家やアーティストが集まった、楽庵での飲み会(下左写真)です。その時にMbiraというアフリカの伝統楽器のグループ「Tokyo Mbira」が演奏してくれていました。その飲み会が、そのうちに大人数になっていったという感じですね。それで、ちゃんと観客用のイスなども用意しようということになり、ライブっぽくなってきました(下右写真)。

 

 

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ちょっどその頃に、細谷季子さんが、子供を対象としたアート系のワークショップを行うグループに所属していまして、楽庵にはよくグループで遊びに来ていました。あるとき彼女が、ここで突然唄い出しまして(笑)。「細谷季子、うたいます!」って感じで。まあ、イイ声でしたよ。ぜひ、楽庵でのライブで唄ってほしいとお願いしました。あの頃は、頼めば橋の上でも、道端でも、どこでも唄ってくれましたから、ふたつ返事でOKしてくれました。それ以来、もう5年ぐらいの付き合いですね。私の娘も彼女が大好きで、ライブのときは必ず聴きに来ます。


下左写真は細谷季子とTokyo Mbiraのライブ、右の写真は細谷季子のソロライブです。

 

 

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――「治療」と「音楽」について一言お願いします!


齋藤 心地よい鍼治療と心地よい音楽は、似ていると思います。 なぜなら、両方とも人の心と身体にかかわり、働きかけることができるからです。鍼の感覚を「響き」と表現するのも、そのせいではないでしょうか。


中国の古典「化書」には、「気従音、音従気。気動即音発、音発即気震」とあります。「気」と「音」が、密接にかかわっていることを昔の中国人は 感じていたのでしょう。


 いのちの本質が、目にみえる物質的なものではなく、目にみえないものであるとするならば、「Rhythm&Vibration(リズム・韻&ひびき・波動)」はいのちの本質にきわめて近いものだと私は考えています。音楽は、まさに、「Rhythm&Vibration」ですから。


それに、治療家で音楽をされている方は、やっぱり治療センスがイイですよ。

 


――ミュージシャンたちとの出会いのなかでそのように思い、ライブ会場を提供しているのですか。


齋藤 そうですね、やはりミュージシャンたちとの出会いには「縁」を感じます。その「縁」は大事にしていきたいですね。


私が、打鍼を臨床に応用するようになり「Rhythm&Vibration(リズム・韻&ひびき・波動)」の重要性に気づきました。ミュージシャンたちと出会い、それが間違っていなかったことを再確認させてくれました。そして、さらにそれを高めていくことができたのも、彼ら、彼女たちのおかげです。


私が忘れられない出来事のひとつが、細谷季子のライブのリハーサルです。リハーサルというのは、ボーカル・ギター・ベースで同じフレーズを何回も何回も合わせていきます。そうすると、音の響きがどんどん変化していくんですよ。そして、心地よい音になる。彼女たちはこれを「3人のspotがうまくはまる」といいます。そうすると、よいグルーヴが生まれるそうです。この現象を体感した時、私の無意識下にあった何かが、意識上へ顕現した感覚がありました。

 

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心地よい音をつくり出すという行為と、鍼で心地よい響きを出すのは似ている。つまり、我々鍼灸師は、身体という空間、古典的にいえば「内景」ですね、もしくは皮膚と骨でつくられた円筒形の空間(ちなみに皮膚と骨は「外景」ですから)といってもいいですが、その空間内にいかに心地よい響きを生みだすかが大事だということを再認識したわけです。

 

これを体感させてくれたミュージシャンたちには、本当に感謝していますし、これからも応援し続けたいと思っています。

 

(右写真はベッドを仕切るオリジナル障子のパーテーション。こちらも齋藤先生のこだわりの逸品)