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教卓の向こうから(4)豊島紫乃先生
(九州保健福祉大学総合医療専門学校鍼灸学科) [2010.08.23]

鍼灸マッサージ師の養成施設で働く先生たちが、どのような授業を日々心がけ、またどんな思いで生徒に教えているのか――――。教育現場の生の声を取り上げていくこのコーナー、第4回は九州保健福祉大学総合医療専門学校鍼灸学科の豊島紫乃先生。教員歴は12年で、『経絡経穴概論』を中心に、『東洋医学臨床論』『臨床医学各論』『はり実技』なども担当されています。今回は、『経絡経穴概論』についてお聞きしました。

20100823-2.jpg―――― 経穴の授業はどのように行っていますか?


豊島 本校では1年生と2年生の2年間をかけて授業を行っています。1年生の段階では、経穴に慣れ親しんでもらうことに重点を置いていますね。というのも、1年生は入学して間もなく、医学用語や東洋医学の言葉に慣れていないこともあって、『解剖学』『東洋医学概論』の教科書を手元に置きながらの授業になっています。2年生では1年生で経絡経穴の全体像を把握してもらっていますので、次のステップとして「上肢・下肢」それから「胸腹部」「背腰部」「頭部」「顔面部」などのように身体を区分けして、経穴を認識する授業をしています。

 

 
 ―――― 授業中、特に気を使っているところなどはありますか?

 
豊島 特に重要な箇所やわかりにくい部位は、「ここがポイントだから」といって、ホワイトボードに絵を描くようにしています。すると生徒さん達も同じようにノートに絵を描きますよね。本に記載されている図を眺めているだけではなく実際に自分で描くと、やはり頭に入りやすく、それだけ記憶に残りやすくなりますね。

 
また、実際の身体に色のついた丸いシールを貼る作業もさせています。まず、筋肉や骨の隆起部位など、取穴するときに基準となる体表面の位置を正確に指で探れるように指導しています。この作業は、鍼灸師に大切な指頭感覚を磨くという基礎的な訓練にもなります。ただ、正確さだけを求めても時間がかかっていては、実際の臨床では患者さんに負担になりますから、次の段階ではスピードも重視し、臨床に即した形で教えることも意識しています。

 

 

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―――― 経穴名は特殊ですから、生徒さんに覚えてもらうのも一苦労だと思います。その辺りのコツはあるのですか。


豊島 世界的には経穴は例えばST36やLI4などのように、記号や数値で示しています。しかし経穴に使用されている「漢字」には、身体の凸凹を自然界の山や渓谷などにみたてていたり、治療効果を示していたりしていて、非常に意味があると思うのです。ですから、漢字の意味や成り立ちなどの関連情報を紹介しながら授業を行っています。例えば、「上髎」「次髎」の「髎」は、「くぼみ」という意味を表し、実際に仙骨の「くぼみ」の部分にあるというような話をします。そうすると生徒さん達も興味をもってくれるようです。


国家試験のためには、経穴という講義は覚えれば点数が取れる科目です。しかし、覚えるだけの授業ではなくて、そこに付随した東洋医学の整体観を散りばめながら授業を展開するように心がけています。


ただ、伝えたいことはたくさんあるのですが、生徒さんの容量オーバーになってしまわないように、情報量には気をつけています。

 


―――― 教科書には主治などは載っていません。その辺りは説明されますか。


豊島 私は経穴の授業だけではなくて『東洋医学臨床論』では「産婦人科、小児科」を、3年生では『臨床はり実技』も担当しています。これらの授業でも、もちろん経穴は出てきます。このような臨床関連科目では、古典的な解釈だけではなく、逆子で「至陰」・「三陰交」を用いるといった、経験則から用いられているような経穴の組み合わせを教えたりもしています。


また、取穴方法ですが、経絡経穴学で教える、きちんとした位置だけではなく、実際の臨床では取穴するとき、経穴学で覚えた位置を基準として、そこから指頭感覚で身体と対話しながら経穴を探すことも大切であるということを生徒さん達に伝えるようにしています。

 


20100823-5.jpg―――― 最後に鍼灸師を目指す方にメッセージをお願いします。


豊島 鍼灸学校は、どの学校の生徒さんも年齢の幅が広いです。高校を卒業してすぐに入学される生徒さんもいれば、60歳を過ぎて入学される方もいらっしゃいます。幅広い年齢層や様々な職業の方々と3年間同じクラスで共通の目標に向かって努力することは、非常に楽しく有意義な気がしますね。


そうやって勉強して、国家試験に合格すれば鍼灸師になるわけですが、髪の毛よりも細い鍼や米粒ほどの大きさの灸で、身体のバランスを整える治療ができるって、何か素敵ですよね。私は婦人科や小児科を担当していますから、特に女性患者さんにとっては、一生寄り添っていけるものだと思うんです。また施術する私たちも一生続けていくことができるので、とても魅力的ですね。


本校の特色として、『東洋哲学』や『生命科学』などの授業もあります。東洋哲学は東洋医学を深く知るために必要ですし、生命科学は医療人としての教養や良識を身につけてもらいたいという考え方に基づいています。このような教養科目を学ぶことによって「患者さんのどこに寄り添っていくことができるのか?」や「どういったお手伝いができるのか?」ということが、だんだんとわかってくると思っています。これは国家試験の勉強だけでは得られないものです。ですから、知識と医療人としての心構えを身につけよう、そんな志を持っていただける方が鍼灸を学ぶことを心待ちにしています。

 

 

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