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教卓の向こうから(5)(四国医療専門学校) [2010.10.11]

鍼灸マッサージ師の養成施設で働く先生たちが、どのような授業を日々心がけ、またどんな思いで生徒に教えているのか――――。教育現場の生の声を取り上げていくこのコーナー、第5回は四国医療専門学校の附属鍼灸治療院院長の大網直人先生、研修生の大西健司先生、鍼灸マッサージ学科・鍼灸学科学科長の大麻陽子先生です。おもに臨床実習についてお聞きしました。

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附属鍼灸治療院院長の大網直人先生

――附属鍼灸治療院院長の大網先生、実習は臨床現場に近いスタイルをとられているそうですね。

 

大網 本校では3年次の1年間、臨床実習を行います。2年生が患者役、3年生が施術者役です。なれあいにならないように初対面の者同士で組みます。2年生は3年生の様子を見て、自分たちが3年になったときに自分で気づいて実際に行動ができるように、このようなスタイルにしています。私は以前、整形外科の臨床現場に長く在籍していたので、現場さながらの実習はやはり力がつくと感じます。

 

 

 

また、1人の実習生に対して1人の教員がつき、極力マンツーマンで指導するようにしています。カルテには写真のように主訴、所見、推察する疾患名、病証、治療方針 or 治療原則、配穴、実習後の感想、反省、疑問点を詳細に記入します。

 

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実習後、カルテに記入する実習生
びっしりと記入されたカルテ

 

 

――具体的にはどのような指導方法をとられているのですか。

 

大網 教員は、最初は学生の隣で見ているだけです。実習生の動きが止まってしまっても、しばらくそのままにしておきます。次のステップは「学生自身に気づかせる」ことです。危険な行為をする場合は注意しますが、なるべく突き放すようにして、自分で考えさせます。患者さんに聞いて変化がないようだったらアドバイスをします。
具体的に注意する点は、治療の全体像をつかむことですね。実習生は自分の手元にばかり集中してしまうことが多いので、患者さんが今何をしてほしいのか、一歩引いて客観的な視点を持つように指導します。実際の患者さんをみるときも、座っているときの姿勢や歩く姿などに目を向けることが治療につながります。
ただ、治療技術や知識は卒業してからいくらでも学べます。学生のうちに身につけ大切にしてほしいのは、言葉づかいや身だしなみですね。

 

 

――次に、研修生の大西健司先生にお聞きします。四国医療専門学校は2年前に実習研修制度を導入されました。大西先生は6年間サラリーマンを経験したあと、四国医療専門学校に入学し、昨年卒業して研修生になったとのことですが、研修生としてどのような1日を過ごしていますか。

 

大西 朝8時15分ごろ出勤し、治療院の掃除をし、実習の準備をします。8時40分ごろ学生たちが来ます。実習の流れを説明してカルテを渡し、9時から10時半まで実習を行います。実習のあとは治療の予約があれば治療に入り、空いていれば勉強をしたり掃除をしています。夕方4時半から6時は2回目の実習があります。
研修生になれば免許をとってすぐに一般の患者さんをみる機会もありますし、教える立場ですから学生より知識がなければいけないので、日々勉強ですね。

 

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研修生の大西健司先生
附属鍼灸治療院の受付に掲げられた「癒」の文字は地元の書家の作品

 

 

――「院長先生が厳しい」という声が、さきほどちらっと聞こえてきましたが。

 

大西 院長の大網先生は「実習に笑顔はいらない」「まずは身だしなみから」とおっしゃいます。まずは今持っている知識で病態を把握し、足りないと思うところを一緒に確認して、考えて最終的に治療方針を立てる。「自分で考える」というベースがあるわけですが、「こういうケースはどうか?」「なぜそのツボを使ったのか?」を大網先生から聞かれるので、答えられるように準備をします。毎日がテストのようで(笑)。でも、一通りの治療ができるくらいに指導してくださいます。そして、患者さんのちょっとした変化に気づくようになっていきます。
研修は1年という短い間ですが、逆にリミットがあるのでその期間を大事に過ごしています。1年で1000人触るという目標を立てました。将来はお灸専門の治療院をつくるのが夢です。お灸はあたたかく、茶道や華道のように職人技で、よい伝統文化だと思っています。

 

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施灸指導をする大西先生(右)

 

 

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学科長の大麻陽子先生

――学科長の大麻先生、附属鍼灸治療院は4年前にリニューアルしたとのことですが、治療室の、通路の真ん中に水回りと収納があるのは特徴的ですね。このような設計にされたのはどのような意図があったのでしょうか。

 

大麻 東京医療専門学校の教員養成科で岡田明三先生のお世話になり、それから岡田先生を恩師と慕っています。治療院をリニューアルするにあたり、設計図の段階から岡田先生に相談にのっていただきました。通常、水回りのシンクは室内の隅に設置しますが、「カウンターと収納を中央に配置することで、すべての治療ブースから中央の集中カウンターへの導線が確保される。カウンターでミーティングや簡単なカンファレンスをすることが出来る機能を備えたらどうだろう」と助言され、収納とシンクを真ん中に持ってきました。

 

予想以上に使い勝手がよく、患者さん、スタッフ、学生の行動すべてが見渡せます。室内の隅や裏に水回りがあると、そこがたまり場のようになって私語が始まるので、中央に配置したのは非常によかったと思います。
ベッドの仕切りはカーテンではなく障子です。これもだいぶ費用がかかっています。

 

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広い附属鍼灸治療院。
中央のシンクと仕切りが特徴的

患者さんの動きも学生の動きも一目瞭然

 

 

――附属鍼灸治療院も広いですが、校舎の廊下や階段も広く設計されていますね。

 

大麻 本校は約15,000㎡の敷地に5棟の校舎があります。中庭を設け、四季の変化が感じられるようにしています。中庭は専従職員を配置し掃除も行き届かせています。玄関でスリッパに履き替えて校内に入るという点も、ちょっと違うかと思います。
学びの「場」の重要性は、本校理事長が唱える教育方針の1つです。3年間、広くて居心地のよい空間で学び、感性豊かな治療家のベースをつくりたい。附属鍼灸治療院のつくりや実習内容を充実させているのも、治療家としての資質を育てるものなのです。

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