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治療院のここがこだわり!「音」と「素材」 [2011.11.28]

治療院のこだわりを紹介するこのコーナー。今回のこだわりは「音」と「素材」です。東京都目黒区にある「きよら鍼灸院」の高野さおり先生は、築30年の2階建て住宅を治療院に改装し、2010年に開業しました。床は無垢材を使用したり、トイレの壁はガラスのタイルを1枚1枚高野先生がご自分で張ったりと、随所に趣向をこらしています。治療院で流す音楽と音質にもとことんこだわって、スピーカーとアンプは手づくりです。

●専門家に任せてよかった

 

――まずは高野先生が鍼灸師を職業として選んだきっかけを教えてください。


高野 20年以上前に父親ががんで亡くなり、それが明確なきっかけになったわけではないのですが、なんとなく「医療職はいいな」という思いがずっと頭の中に残っていました。ただし医師や看護師ではない気はしていました。


美術大学を卒業したあとは服地デザイナーを目指して、半年ほどイタリアに留学しました。イタリアの生活は何もかもがのんびりゆったりしていたので、帰国して日本の100円ショップをのぞいたときにクラッとめまいがしまして、日本の大量生産、大量消費に違和感を覚えました。これからデザインを仕事にしていくにしても、生産と消費を繰り返すだけなのかと思うと、方向性が違うのではないか、と。


そんなとき友人が病に倒れ、毎日励ます手紙を書いたり、毎週末お見舞いに行くようになり、どうやったら元気になってもらえるかを考えたり行動したりすることが非常に自分に合っているな、と感じました。あるとき友人が発した「肩こりがひどかったから今日は鍼灸院に行ってきた」の一言で「鍼灸って何??」と興味を持ち、そこから一気に「鍼灸師しかない!」と思い立ち、鍼灸学校へ行くことを決めました。学校を卒業してからしばらくの間、鍼灸院に勤務し、2年ほどしてから結婚して長男を出産して、その後は友人の治療院の手伝いなどをしていました。

 

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治療室にある観葉植物。学生時代にデッサンで使用した椅子に乗せている


――住宅を改装して開業することは、どの段階で考えられたのですか?


高野 ここはもともと私の実家です。母は2年前に亡くなったのですが、この家に誰もいなくなったので、1階を改装して鍼灸院にしました。昔ながらの建売住宅で、現在治療室として使っているところは和室、待合室は台所でした。この棚(写真)は作り付けの食器棚だったのですが、これはそのまま残すことにしました。2階は物置きにしています。

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待合室にある書棚は、もともとは食器棚だった。アンプもこの棚に置いてある


――床は無垢材を使用していますね。

 

高野 自分のこだわりは床を無垢板張りにすることにしぼり、あとはカフェなど飲食店舗の内装を専門にやっている友人に任せました。下手にデザインをかじった自分よりも、現場で数をこなしている専門家に任せたほうがいいものができるという確信があったのですが、正解だったと思います。もし自分の趣味だけを貫き通していたら、患者さんにとって居心地のよい空間になったかどうかわかりません。

 

例えば、私はゴールドよりシルバーが好きなのですが、友人は金物に真鍮やゴールド色を薦めてきました。結果的に木目のドアとゴールドのノブの組み合わせのほうが温か味があって治療室に向いた雰囲気になりました。ただ、換気扇を2つ取り付ける理由はなかなか理解されなかったようです。私は治療にお灸をよく使いますので、換気扇が2つ必要でした。


トイレのタイルはイタリア製で、他物件の内装で余ったものをもらって自分で張りました。タイルを張ったのは初めての経験で、近くで見るとかなりガタガタしています。

 

実は最初は自分が好きな青色系統を選んで張り始めたら、半分張ったところで同じタイルがなくなってしまったんです。友人に聞いたら「あとは茶色とベージュしか残っていない」と言われて……。茶色は全く好きな色ではないのですが、全部張り直して完成してみたら意外としっくりきて、トイレが一番好きな空間になりました。

 

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一番好きな場所は掃除も丁寧にする、と高野先生


●音質のクオリティーが分かってしまう

――さきほどから心地よい音楽が流れています。音域にも広がりを感じます。

 

高野 私の父はクラシック音楽と童謡が好きで、音に対するこだわりは相当のものでしたので、私も音質の良し悪しに敏感です。音が悪いと非常に気になってしまうので、自分が治療院をつくるときにはいい音を流そうと決めていました。たまたま夫も音楽好きで音へのこだわりが強い人です。スピーカーとアンプは夫の手作りです。これにいちばん手間と時間をかけています。夫は棚なども器用につくるので、丸投げでお願いしました。

 

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アンプも手づくりというこだわり


――スピーカーの後ろの棒は、地震に備えたものですか?


高野 いいえ。私もそのあたりは詳しくないのですが、低音域の振動を安定させるためのもので、このアイデアがこのスピーカーの肝らしいです。夫の「会心の作」です。地震対策としては、天井を張る前の段階でスピーカーを支える部分に補強の梁を入れてもらっていますので、スピーカーが落ちてくる心配はありません。BGMはヒーリングミュージックよりもジャズや民族音楽が多いです。

 


カーボン棒で低音域の振動を安定させている

 

 
●オーダーメイドの患者着で安心感を演出

――棚にある患者着は、見たことのない色ばかりです。既製品ではないですよね?

 

高野 綿100%の患者着を探したのですが、気に入ったものが市販されていないので仕方なくオーダーメイドしました。綿は化繊に比べれば傷みやすく、しわにもなりやすいので患者着としては扱いづらいかもしれません。でもこの肌触りの良さは譲れないですね。


治療の前後に患者さんとお話をするとき、ポリエステルの、いかに患者着というスタイルで椅子に座っていられると、対等な関係ではない気がして申し訳ない気持ちになります。患者さんも落ち着かないのではないでしょうか。ですので、この患者着は木綿の風合いを生かした生地を選び、治療着というより部屋着のような雰囲気を目指しました。


縫製してくださる方はネットで探しました。鍼灸治療のことはまったく知らない方なので、チャックがお尻のあたりまで必要な理由を説明したり、何度か試作が必要でした。1着7000円くらいです。

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淡い色の患者着。一目見て前後が分かるようにポケットにチロリアンテープをつけた


――最後にひとこと、お願いします。


高野 大きな治療院ではたくさんの患者さんが来院するわけですから、スタッフが1人の患者さんに接する時間はおのずと短くなります。その点、このようなこぢんまりとした開業の場合は1対1で十分に話をすることができます。

 

私、話をするのが大好きなんですよ。いわゆる「おばちゃん」ですね(笑)。自分のまわりに起こることはすべて治療のときの話のネタにして、治療中1回は患者さんを笑わせることにしています。現在のところは1人約70分かけて治療しています。


今はまだ子供が小さくて、治療だけに専念することは難しいのですが、気に入った空間で好きな鍼灸の仕事をできるのは、本当にありがたいなと思います。

 

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院長の高野さおり先生

 


 

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