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ゴッドハンド・妻木充法氏の
ロンドンオリンピック・レポート(1) [2012.08.13]

ロンドンオリンピックで躍進したサッカーのなでしこジャパンとサムライブルー。日本人選手の活躍の裏で、日本人トレーナーの妻木充法氏は審判にメディカルサポートを行うため、4週間ロンドンに滞在し、審判団に帯同していました。各国から集まった審判は総勢84人。いわば審判の各国代表です。審判は試合の途中で交代できません。メディカルサポートが重要な役目を果たします。

こんにちは 妻木です。
ロンドンオリンピックでのサッカー競技で審判のメディカルサポートをするため、4週間ロンドンに滞在していました。2回にわたり、サッカー審判のサポートの様子やロンドン雑感などをレポートします。

 

 

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ロンドンの街角でオリンピックのマスコットと

 

 

●自国代表チームが勝つと、審判は……

 

審判のサポートというと変に思われるかもしれません。サッカーでは、審判の判定が試合の流れを決めることは、よくあります。そのため、FIFA(国際サッカー連盟)は、審判を重要なパートで試合の一部であると考えて、4つの分野から専門的なサポートをしています。①テクニカル(審判技術)、②フィジカル(体力)、③メンタル、④メディカルです。私は、メディカルサポートを行うメンバーなのです。

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サッカーの聖地ウエンブリースタジアムで

 

オリンピックは、ワールドカップとは異なり、男女の種目があるため、審判も世界中からベストの審判が男女とも招聘されます。つまり、もうひとつの代表チームです。日本からは、男子は3人(西村、相楽、名木)、女子は2人(山岸、高橋)と合計5人の日本代表が選ばれました。

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日本代表審判。左から相楽さん、山岸さん、西村さん、高橋さん、名木さん


審判は、皮肉なことに自国の代表チームが上位に残ると、出場する可能性がなくなります。例えば日本の審判は、日本代表チームを含め、アジアのチームが決勝に残ると、当然その試合には選ばれないわけです。サムライブルーとなでしこジャパンの準決勝が決まった時点で、日本の審判は帰国しました。日本人は、私1人になってしまいました。日本トリオ(主審1人、副審2人)の評価が高かっただけに、残念な気持ちもありますが、日本代表が勝ってくれることがより大きな喜びです。

 

オリンピックサッカー競技は、男子16チームで32試合、女子は12チームで26試合が行われます。では、審判は何人選ばれたかというと、男子が48人、女子が36人です。なんと、男女合わせて84人が世界中から来ています(表参照)。

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これだけの人たちが審判として集まるサッカーとは、いつもながらすごいことだなと思います。また、いろいろな言葉、習慣、価値観を持った人々を治療するのは、コツというか、戦略が必要となります。

 

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練習前のミーティング。男女84人の審判が集合しました

 

とはいえ、はじめは、いつも緊張します。こんな↓気持ちです。

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ロンドンの夕暮れ時

 

 

●審判の平均年齢と1試合の移動距離

それでも、グラウンドに行って、審判の練習を見ていると少し落ち着いてきます。

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アジリティトレーニングの様子

 

実は審判はアスリートなのです。主審は1試合(90分)で10~14㎞、副審は6~8㎞移動するそうです。主審は1試合で1000回近く方向転換します。

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主審のフィジカルトレーニング、右端が主審の西村さん

 

副審は、ほとんど瞬間的なダッシュで、しかもフラッグを持っているので不自然な動きです。これではケガや故障が出たりするのも分かります。

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副審のオフサイドのテスト

 

そのうえ、選手と違って試合中交代できないので、コンディショニングは重要です。

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日本の女子主審である山岸さんの練習風景

 

さらに、年齢層も選手より上で、平均39歳くらいなので、四十肩や腰痛で悩む審判もいます。メディカルサポートは、選手よりも必要かもしれません。

 

 

●84人を7人でサポート

 

前置きが長くなりましたが、この84人の男女の審判をサポートするメンバーは、全部で7人です。いつも私と一緒に活動するスイスの理学療法士のマリオ氏、そして、イギリスのフィジオ(理学療法士)とマッサージセラピストが5人(男3人、女2人)です。FIFA(国際サッカー連盟)では、大会のメディカルサポートは、基本的に開催国のフィジオ(理学療法士)に依頼することになっています。私は、マリオ氏とともに特別枠で帯同しました。

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前列左からシャロン、カーラ、後列左からマリオ、マーク、ペーター、ロブ、筆者

 

イギリスでは、サッカーチームに帯同するのは、フィジオ(理学療法士)が多く、余裕のあるチームは、マッサージセラピストや鍼灸師(中医学)がいるということでした。今回のメディカルチームもフィジオが3人、マッサージセラピストが2人でした。

 

審判は、外傷はそれほど多くはありません。今回も足関節捻挫が1件、ハムストリングの肉離れ1件、内転筋肉離れ1件くらいでした。逆に障害というかオーバーユースは、大会期間中問題になります。そんなときは、キネシオテープを使うのが多くみられました。フィジオもハムストリングスやアキレス腱の痛みに使っていました。

それでは、次回また。

 

 

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筆者とマリオ氏

 

私のブログもご覧ください。 http://blog.goo.ne.jp/tmsblog-tsumaki

 

 

妻木充法(つまき・みつのり)

1952年静岡県生まれ。日本大学文理学部心理学科卒、東洋鍼灸専門学校卒。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。順天堂大学大学院医学研究科修了。医学博士。東京メディカルスポーツ専門学校副学校長。元ジェフユナイテッド市原・千葉チーフトレーナー。元横浜F・マリノスアスレティック・アドバイザー。2002年日韓W杯レフェリー部門マッサー、2006年ドイツW杯フィジオ、2010年南アフリカ杯フィジオ。日本体育協会公認アスレティックトレーナー・トレーナーマスター。

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