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ゴッドハンド・妻木充法氏の
ロンドンオリンピック・レポート(2) [2012.08.27]

ロンドンオリンピックでサッカーの審判団に帯同し、レフェリーのメディカルサポートを担当したトレーナーの妻木充法氏。4週間滞在したホテルの近くにはロンドンの観光スポットが点在していたそうですが、じっくり観光する時間はなかったようです。しかしサッカーの試合はほとんど観戦したとか。お仕事とはいえ、うらやましいですね。さて今回のレポートでは、現地でのメディカルサポートの様子を紹介します。妻木氏による日本の鍼治療が大好きなレフェリーもいたようです(写真は男子バスケットボールの準決勝を観戦する妻木氏)。

 

 

●バッキンガム宮殿前の公園で

 

こんにちは 妻木です。

 

ロンドンでは「今日は天気が悪いね」「今日は雨だね」いう会話はできません。なぜなら、ほぼ毎日雨が降るからです。だから、あいさつは「今日は何回雨が降るかしら?」となります(笑)。テムズ川のクルーズボートでもご覧のとおりです。

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テムズ川のボートクルーズで雨に濡れるタワーブリッジを見る

 

イギリスの名誉のために書いておきますが、閉会式までの最後の1週間は、奇跡的に毎日晴れていました。このときは「最高にハッピー。だって晴れてるじゃん!」とロンドンっ子は言っていました。

 

また、ロンドンは昼と夜で雰囲気が一変します。タワーブリッジも夜はずいぶん印象が違います(雨の夜は知りませんが)。

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ライトアップされた夜のタワーブリッジ

 

開会式を行ったオリンピックパークは、昼間は人ごみでざわざわしていましたが、夜の雰囲気はご覧のとおりです。

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開会式で見たオリンピックパーク内のモニュメント

 

でもウインドウショッピングは昼間のほうがいいかもしれません。ピカデリーサーカスの近くのショーウィンドウに不思議なディスプレイがありました。

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あとで確認したところ、ルイ・ヴィトンと草間彌生のコラボだとか

 

サッカーを統括するFIFAのヘッドクォーターは、5星(!)のメイフェアホテルにあります。オリンピックの期間中、レフェリーも私もそこで生活(?)していました。ここは、極めて便利な場所でした。ホテルから歩いて5分のところの公園で時々練習するのですが、目の前がバッキンガム宮殿でした。その隣がロックコンサートで有名なハイドパーク、15分ほど歩けばウェストミンスター寺院やビッグベンがあり、名所には徒歩でほとんど行くことができます。しかし仕事があり、観光の時間がなかなか取れないのが実情でした。

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バッキンガム宮殿前で練習後の記念写真

 

 

●別室で行うコンビネーショントリートメント

 

さて、我々メディカルチームの目的は、レフェリーが練習や試合を不安なく100%でできるように医学的なサポートをすることです。日本でいうところのトレーナー業務ですが、こちらではフィジオ(理学療法士)と呼ばれています。レフェリーが練習中にケガをすれば、評価をして、RICE処置をします。また、写真のようにテーピングも行います。

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練習前にテーピングをするフィジオのカーラ

 

宿泊先のホテルでは、ケガの治療と疲労回復のマッサージが主な業務です。フィジオルームの前に予約表を張り出し、希望者は記入します。

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男子のフィジオルームの案内板

 

時間は30分刻みで、オイルを使ったマッサージをしています。前半の予選リーグ中は、かなり繁盛しました。

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ある日のマッサージの予約表

 

男子のフィジオルームをのぞいてみました。3人のフィジオが(ロブ、ピーター、マーク)がマッサージをしていました。

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男子のフィジオルーム内の様子

 

女子は、カーラとシャロンの2人ですが、下の写真のような雰囲気です。

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女子のフィジオルームで施術するカーラ

 

男性のマッサージのほうがパワフルな感じですね。

マリオ氏と私の治療室は別にあります。マリオ氏とは、ドイツワールドカップ(2006年)から一緒に仕事をしています。2人で、いわばコンビネーショントリートメント(西洋医学的評価と物理療法と日本的な鍼治療)をしています(医道の日本誌2010年9月号参照)。

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マリオ氏と筆者のフィジオルーム

 

前回述べたように、今回のトーナメントにおける試合中の外傷は、肉離れ2件(半腱様筋・半膜様筋、内転筋)、足関節捻挫1件、それにアキレス腱周囲炎だけでした。肉離れをしたレフェリーには鍼治療、低周波治療、シップ(アイシングも)、キネシオテーピングなどを行いました。

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筆者の治療用備品

 

 

●信頼を得たMADE IN JAPANの鍼治療

 

次の写真は微弱電流(40μA)の通電をしている様子です。スペインの女性レフェリーで、鍼治療は初めてでした。なお、いわゆる低周波通電は、初めて鍼治療を受ける人には刺激が強く、筋収縮も生じます。リスクもあるので、私は使用しません。

肉離れの鍼治療(微弱電流40μAを流している)

 

次の写真は内転筋の鍼治療の様子です。チェニジアの男性で、やはり鍼治療は初めてでした。

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内転筋の肉離れに対する鍼治療の様子

 

スペインのレフェリーもチュニジアのレフェリーもacupunctureは知っていましたが、太い針で強刺激と考えていたようです。私の使う鍼を見せると安心したようでした(パイオネックスと寸3の1番くらいなので)。また、MADE IN JAPANは品質がいいと思われているので、外国人には 「MADE IN JAPAN」と書かれた鍼をはっきりと見せれば、信頼感が増します(本当ですよ)。

驚いたことに、チェニジアのサッカー協会から感謝の楯をいただきました!(私のブログhttp://blog.goo.ne.jp/tmsblog-tsumaki/写真を載せました)

決勝戦のレフェリーは、男子はウズベキスタンのイルマトフ、女子はドイツのビビアンでした。イルマトフは、南アフリカワールドカップから私の治療が大好きになり、試合前日に必ず鍼治療を受けます。ドイツのビビアンは円皮鍼に興味を持ったようで、試合の2日前に施術しました。私の治療は医道の日本誌(2012年6月号参照)でも紹介したように、円皮鍼と寸3-1番鍼が主体なので、安全で、ほとんど痛くありません。ビビアンはびっくりしていました(ドイツの鍼は、太いのです)。

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女子サッカーの決勝戦。左から4番目がビビアン

 

じつは、今回の男子のレフェリーは、南アフリカワールドカップのメンバーではなく、別のレフェリーに若返りしました。2年後に開催されるブラジルワールドカップの選考メンバーなのです。私の治療を知るレフェリーは少なく、最初は鍼治療の希望者がそれほどいませんでした。しかし、2週間を過ぎた頃からいろいろな国のレフェリーを治療しました。言葉は通じませんが、鍼治療の効果に人種や国籍の違いは関係ないと改めて思いました。

次回のFIFA大会は12月に開催されるクラブワールドカップです。新たにノミネートされた見知らぬレフェリーが来るでしょうが、またマリオ氏と一緒に仕事ができることが楽しみです。
それでは、さようなら。

 

 

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ウエンブリースタジアムでマリオ氏(左)と男子決勝戦を観戦

 

 

私のブログもご覧ください。 http://blog.goo.ne.jp/tmsblog-tsumaki

 

妻木充法(つまき・みつのり)

1952年静岡県生まれ。日本大学文理学部心理学科卒、東洋鍼灸専門学校卒。鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師。順天堂大学大学院医学研究科修了。医学博士。東京メディカルスポーツ専門学校副学校長。元ジェフユナイテッド市原・千葉チーフトレーナー。元横浜F・マリノスアスレティック・アドバイザー。2002年日韓W杯レフェリー部門マッサー、2006年ドイツW杯フィジオ、2010年南アフリカ杯フィジオ。日本体育協会公認アスレティックトレーナー・トレーナーマスター。

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