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教卓の向こうから(7) 東海医療学園専門学校  [2012.10.15]

鍼灸マッサージ師の養成施設で働く先生たちが、どのような授業を日々心がけ、またどんな思いで生徒に教えているのか――――。教育現場の生の声を取り上げていくこのコーナー、第7回は東海医療学園専門学校の鍼灸科学科長の木村博吉先生、小谷奉弘先生に臨床実習についてお聞きしました。

 

――東海医療学園専門学校では、3年間にわたって臨床実習を行っているそうですね。

 

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写真右から小谷先生、木村先生

木村 そうです。1年次はまず臨床に触れてもらおうということで、夏休みに施術所受療体験をしてもらいます。また、熱海駅前の臨床センターの見学も行っています。

2年次から評価実習に向けての学習が始まります。本来、一般の患者様に対して臨床実習を行うのが望ましいのですが、実際には臨床実習に参加してくださる患者様が少ないことと卒前教育学習に適した患者像が都合よく集まるとは限りません。ですので、それを補うために、2年生が演じる標準模擬患者を3年生が治療するという形になります。

2年生は、教務課の教員全員で作成した模擬患者像シナリオ集に記載された患者像を深く分析しながら正確に模擬患者を演じられるように1年間かけて勉強します。授業では、2人一組になって交互に医療面接をして、シナリオが頭に入っているか、患者の立場で症状を説明できるか、治療家として適切なコミュニケーションがとれているか、適切な検査法を提示できるかといったことをチェックします。

 

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2年生の臨床実習の模様。2人一組のグループになって、相互に医療面接の練習をする

 
こうした学習を繰り返しながら、2年生は3年生の評価実習(臨床実習の試験)のための予診表を作成して提出します。3年生の評価実習は、成績に反映しますので、2年生の責任も重大です。

 

――2年生の授業では、指導上どのような点に力を入れていますか。

小谷 「肩が張っています」という症状の場合、シナリオ的には症状がある具体的な筋名やツボ名などを表示しています。なので学生は教科書などを通じて目で見て学習し、何となくの当たりをつけることができるのですが、それが本物の人体になると具体的にどこなのかということを正しく理解するのが難しいようです。そこがしっかりとわかるように、授業中は各グループを回りながら、細かく指導していきます。その部位が自分の身体のどこにあるのかを実際に触ってもらい認識してもらいます。これを繰り返し、練習していくという形になります。

 

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2年生の授業は、20人をさらに数名のグループに分ける少人数制。の教員が各グループの席を回って、きめ細かく指導する

 

私たちが想定していないような反応が学生から出るので、それをくみ取りながら、「意外と○○筋についてわかっていない」とか「触っている位置の見当がついていない」とか、そういうことを見ながら、その都度修正していきます。

あとは、2年生の学習段階として、白紙の予診表を渡すと、医学的な知識がある程度身に付いているので一般の患者様が書くような表を作成することができません。ですので、これまで学んだ専門的な知識を一度取り払って、完全に患者になりきって、自分の身体のどこにどんな症状があるのかということを表現できるようにと伝えています。

木村 2年生が医学的な専門用語も入り混じった詳細な予診表を作ってしまうと、治療に臨む3年生が事前に調べる必要がなくなってしまい、病態把握が簡単になってしまうのですね。ですから、2年生には「なるべく簡潔な言葉で」というふうに指導しています。

小谷 ただ、これが学生にはなかなか難しいようです。今年の2年生は、専門用語を違う言葉で言いかえるということに苦労していました。表現力にかかわるところだと思いますが、これはあまり想定していなかった問題でした。

――今回拝見させていただいた3年生の授業はリスク管理の一環ということで、肩背部への安全な刺鍼の練習でした。やはりリスク管理の時間は多くとっているのでしょうか。

木村 臨床実習では、感染症の予防対策といった衛生管理や気胸の防止などのリスク管理には重点を置いています。特に今年度の患者像シナリオ集では、ほんの一例ですが血液透析患者様や関節リウマチなど感染症を起こしやすい患者様への治療も用意しています。学生にはそうした患者様に対して、禁忌を避け適切な治療ができる判断力と安全な鍼灸施術技術を身に付けてもらいたいです。これらのことはもちろん1年次から継続して指導していくのですが、3年生にはより実践に近い形で取り組んでもらいます。

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3年生の授業の様子。この日は秉風穴・天宗穴への鍼通電療法を中心とした、肩背部への安全な刺鍼を練習した

 

――今日の3年生の授業では、「もう少し深く刺しても大丈夫」というアドバイスをよくされていましたね。

木村 やはり学生は「深く刺すのは怖い」という印象を持っています。まず肩甲骨の位置を確実に把握できていれば、肩甲骨上であればある程度深く刺しても安全なのだということをもっと知ってほしいですね。今回は鍼通電療法も行いましたが、通電は筋を収縮させないと効果が出ない場合がありますし、鍼の深度が浅すぎるとチクチクして痛くなってしまいますので、適切な深度・角度で安全に鍼を刺入することを体験してもらいたいですね。

――取穴のアドバイスもよくされていましたね。

木村 そうですね、今回は特に側臥位だったこともあって、少し難しかったかもしれません。肩周りですと動かしてみて取穴することが多いですが、臨床実習では実際の患者様を想定して練習していくので、これまでに習った方法が使えない状況での施術にもチャレンジしていく必要があります。学生たちが側臥位にまだ慣れていないというところが出たかなと思います。ただ、評価実習でも五十肩(拘縮期)の患者像などがありますから十分練習してもらいたいと思います。

――今回は1年生の授業は拝見していないのですが、1年次には夏休みに受療体験をするそうですね。

小谷 治療そのものを、1時間の予約の枠で受けた経験がこれまでないという学生もいます。そういう学生にとっては新鮮な感動があるようです。あとは、手技や刺鍼の技術、コミュニケーションの方法など、学生たちが思っていた以上にプロの治療家のレベルに驚いたという感想がありました。学生たちは治療を受けてももう少し淡々としているのかなと思っていたんですが、こちらが思っていた以上に刺激になったようで、それはよかったですね。

――これから鍼灸師になろうと、がんばっている学生にメッセージをお願いいたします。

木村 臨床実習で重点を置いているところは、鍼灸の適否の鑑別ができるかどうかという点なのです。現代医学的な検査や治療が必要とされる重篤な疾患が隠されている可能性がある場合に医療機関への受診を促せるような適切な判断ができる能力をしっかり持って卒業してほしいと思います。そのためには日頃からどんな勉強が必要なのかということを常に考えて日々の学業に励んでいただきたいですね。

小谷 鍼そのものの技術にもっと執着して、「鍼で食べていく」という気持ちを持って取り組んでほしいですね。今は何でもマニュアル化して、治療もともすれば機械的になってしまう傾向があるように思います。そうではなくて、鍼そのものの力を引き出せるような職人的な技術を探求してほしいと思います。

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