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ラオスの鍼灸事情視察レポート [2012.11.26]

ラオスの代表的な仏塔の1つであるタート・ルアン

ラオスの代表的な仏塔の1つであるタート・ルアン

ラオス日本大使館を介し、稲葉俊顯氏(神奈川柔道整復専門学校鍼灸学科長)ら6人はラオスの国立病院内にある鍼灸診療科を見学しました。親日家が多いというラオスですが、日本ではラオスのことはあまり知られていません。しかし、日本の昭和30年代を思わせるような風景がラオスにはあり、訪問すればなつかしい思いを抱くとか。ラオスの医療制度は、中国と同じように国立病院の中に内科、外科、鍼灸科が併設されています。日本の鍼灸に対しても大きな期待があるようです。

■タイを経由してラオスへ

 

少し前になりますが、今年の3月16日~20日、ラオス日本大使館の計らいで国立MAHOSOTO病院の見学と実習が実現しました。


ラオス(ラオス人民民主共和国)は日本の本州と同程度の面積で、人口580万人の多民族国家です。社会主義国ですが、市場経済システムを導入し、政経は分離しています。

 

3月16日早朝、寒い中を震えながら成田空港まで行き、午後5時頃、真夏のタイに着きました。気温は35度。翌17日の早朝はバンコクから国境近くのウドンタニ空港へ行き、タイ国境までタクシーで向かいました。出国手続きを済ませ、おんぼろバスでラオス国境へ行き、徒歩で国境を越えました。入国手続きを済ませ、タクシーで首都ビエンチャンへ。午後3時ごろ到着しました。陸路での出入国という貴重な体験でした。

 

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ラオスのホテルとその周辺

 

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華やかな色のフルーツが店頭に並んでいた

 

 

ラオスは日本の昭和30年代を感じさせる日常風景があり、なぜか懐かしい思いに駆られます。日本の支援で水力発電があり、道路や武道館などが建設されたそうです。そのせいか、ラオスは親日家が多いと聞きますが、日本ではラオスのことを知る人は少なく、私もその一人でした。

 

 

■日本スタイルの鍼灸学校を望む声


17日午後7時、皇室の方や首相などが利用したというクアラオで会食会が行われ、国立MAHOSOTO病院の副院長、鍼灸の先生方、外務省が特別につけてくれた通訳さんたちと民族舞踊を観賞しながらラオス料理をいただきました。歓談では「日本スタイルの鍼灸を学びたい」「将来、日本スタイルの学校ができたら、ぜひ教鞭を執りたい」という声がありました。ラオスで鍼灸医学を学ぶには、中国へ留学する方法と、中医免許保持者の先生に教わる方法がありますが、いずれにしても鍼灸診療を学ぶことは難しい状況のようです。このようなことから、将来的にはラオス国内に日本スタイルの鍼灸学校を設立することが有望と考えられ、大いに期待されています。

 

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会食会での筆者(左)と国立病院副院長

 

 

さらに、副院長とのお話の中で、「日本の医師は鍼灸学校へ入学するのか」「入学している医師はいるのか」「日本の医療制度はどのような状況なのか」といった質問がありました。私は、中国へ留学して中医学を学んできた医師は知っているのですが、日本の国内で医師が鍼灸学校に入学しているかどうかはよく知らなかったので、そのように答えました。また、日本の医療制度については、国の予算の3分の1以上を占める医療費が大きな問題となっていることを伝え、世界で進む「統合医療」について触れました。統合医療の利点は、病気の治療から予防、健康の維持増進に役立つと説明し、特に鍼灸は安全で、簡易で、安価で、医療費の抑制につながり、治療効果も高いと付け加えました。


ラオスの医療制度は、中国の医療制度と同じように西洋医学と中医学(鍼灸医学)があり、国立病院の中で内科、外科、鍼灸科といった具合に併設されています。患者自身が各科を選び、受診しています。「貴国がすでに行っている西洋医学プラス中医学が、統合医療として注目されつつありますよ」と私は伝えました。

 

 

■真ん中に穴のあいたベッド

 

18日は近くの患者さん約20人がゲストハウスに訪れ、鍼灸診療を受けました。日本の鍼灸診療はほとんど無痛で、心地よく、非常に評判がよかったです。また来てほしいとの要望が多くありました。

 

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ゲストハウスでの治療。パルスと温灸を使用

 

 

その日の夕方は、国立病院鍼灸科代表のシーチャン先生の鍼灸診療所を見学しました。シーチャン先生の診療室のベッド数は15台です。1人で15台のベッドを置いていると聞き、驚きました。

 

 

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シーチャン先生の鍼灸診療所の屋根に掲げられた看板

 

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シーチャン先生の鍼灸診療所内

 

 

その中には変わったベッドがありました。ベッドの中央に大きな穴があり、下から薬草などで患部を燻したり、薬湯で温熱を施すことなどができるそうです。

 

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これが真ん中に穴のあいたベッド

 

 

夜はシーチャン先生とメコン川のほとりのレストランで食事をしました。日本人の味覚によく合った料理でした。

 

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シーチャン先生(左)とスタッフ。中央は筆者

 

 

■西洋化で病院の建設が進む

 

19日は国立MAHOSOTO病院鍼灸科を見学しました。内科病棟や外科病棟などと並んでいます。診療ベッド数は約30床で、7~8人の鍼灸の先生方が受け持っていました。ラオスの医療は遅れていて、重症患者さんはタイで診てもらっているそうです。しかし、先端の病院建設が急ピッチで進められています。驚いたことに日本の徳州会病院が全面的に協力しているとのことです。ニュースによりますと、地元の方々は大いに期待しているようです。

 

鍼灸医学は一般の内科や外科と同レベルの診療体制で、患者さんたち達は自分の意志で選択し、鍼灸診療や内科・外科診療を受けていました。鍼灸科の患者さんたちの症状は、脳卒中後遺症の片麻痺や座骨神経痛、腰椎ヘルニアなど、運動器疾患が多かったように思います。

 

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国立病院の鍼灸診療病棟の入り口

 

 

斜視の患者さんの治療を私が中国鍼を用いて行わせていただきました。鍼灸治療の今までの経過はよいとのことでしたので、安心して治療にのぞめました。先方から手渡された中国鍼(日本鍼の寸3‐5番鍼程度)、深さ約5分、使用経穴は背臥位にて瞳子髎、翳風、曲池、合谷、曲泉、足三里、パルス通電15分です。その後、腹臥位にて風池、肩井、肝兪にパルス15分施しました。日本人鍼灸師による診療は初めてのようでした。

 

その日の昼過ぎ、ゲストハウスから国境へとトラックの荷台へ座席をつけた車に乗り込みました。現地の人が子供連れで一緒に乗車して、熱風を受けながらガタゴト走って無事国境に到着。出国手続きのための長蛇の列に並び、汗をかきながら何とか済ませました。タイ側に渡ると、ラオスと数段違う冷房の効いたワゴンのタクシーに乗り、ウドンタニ空港へ。夜遅くバンコクに着き、16日と同じホテルで同じ料金なのに素晴らしい部屋に案内されました。

 

20日早朝にはバンコクを出発し、午後にはまだ寒い成田空港に到着。短くとも充実した数日間でした。

 

 

稲葉俊顯(いなば・としあき)
1970年、教員免許(高校社会・中学社会)取得。77年、東京鍼灸柔整専門学校柔整科卒業。79年、稲葉鍼灸接骨院開業。柔道整復師専科教員、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師専科教員。85年~2006年、呉竹鍼灸専門学校(現呉竹鍼灸柔整専門学校)勤務。2007年、学校法人平井学園神奈川柔道整復専門学校勤務鍼灸科学科長となる。

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