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鍼灸師が病院で働く条件とは?(2)
高津隆充氏(医療法人聖光園細野診療所診療本部診療部部長・鍼灸師)インタビュー [2013.03.26]

鍼灸師の卒業後の就職先として、鍼灸院や整骨院ではなく、病院やクリニックなどを希望する人も少なくない。ただ、一口に「鍼灸師が医療機関で働く」といってもその形態はさまざまだ。このコーナーでは、医療機関で働く鍼灸師の姿をレポートする。第2回目は、医療法人聖光園細野診療所診療本部診療部部長の高津隆充氏にお話を伺った。細野診療所は1928年に開設された漢方専門の医院で、医師が漢方治療を、鍼灸師が鍼灸治療をそれぞれ担当している。今回は診療所での仕事の模様や、入所当時の苦労などについてお聞かせいただいた。

――高津先生が細野診療所に就職されたきっかけを教えてください。

高津 私は幼い頃から母に連れられて鍼灸院に通っていました。鍼灸院は自宅から少し離れたところにあったのですが、近所の内科よりも頻繁に行っていたかもしれません。そのことが、鍼灸に興味を持つきっかけになりました。

就職したそもそものきっかけは、大学の掲示板で細野診療所の求人を見たことです。卒業を控えてさまざまな治療院を見学したのですが、漢方治療を行う医師がいることが決め手でした。医師と協力して治療を行うことに魅力を感じたのです。

――診療所での治療はどのような流れで行うのですか。

高津 最初に患者さんは医師の診察を受けます。診察の結果、鍼灸が適応でかつ鍼灸治療を希望された方を診察室のすぐ隣の治療室で鍼灸師が治療します。患者さんのうち、漢方と鍼灸治療を併用されるのは全体の6割程度です。やはり「鍼は怖い」という方もいらっしゃいますので。

――医師との連携はどのようにしているのでしょうか。

高津 当院は「医師の診察→鍼灸師の治療」という段取りですが、鍼灸治療の途中に患者さんが医師に伝え忘れたことを言われることがあります。その際は、すぐ隣の医師に確認します。また、治療室での鍼灸師と患者のやりとりを聞いて、医師から治療のポイントを伝えられたりすることもありますね。

カルテは、医師の診察後に鍼灸師が記入します。私は患者さんの訴えはすべて記録に残すようにしています。そのことが治療の大きなヒントになっています。まだ若いころに「カルテは宝物。何回も読み返しなさい」というアドバイスを受けたことが心に残っています。

 

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医師のいる診察室の隣の治療室で鍼灸師が治療に当たる(写真は細野診療所 京都診療所提供)


――1日にどれくらいの患者さんが来院されるのですか。

高津 予約制を取っておりますので、1日に20~30人程度です。年齢層は30代~60代が多いですが、幼児や学生さんも来院されます。そのうち1人の鍼灸師が治療を行う患者さんは10人前後で、治療時間は20~30分ほどです。

 

――診療所に勤務してよかったこと、大変なことは何でしょうか

高津 よかったことは、さまざまな疾患の患者さんを担当できることですね。鍼灸院、接骨院は運動器の疾患の患者さんが比較的多いと思うのですが、当院には内科、外科、皮膚科、循環器科…とあらゆる科の患者さんが来院されます。

大変だったのは、就職した当時ですね。入所してすぐに、「学校で学んだ鍼灸教育や治療方法は実践ではすぐには使えませんよ」と言われました。最初は尿検査を担当し、毎日結果の分析をしていました。

また、カルテは医師によって日本語・英語・ドイツ語と記入する言語がばらばらです。しかも漢方薬は難しい漢字ばかりで、カルテが読めるようになるまでが一苦労でした。仕事のハードルは高かったです。

 

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細野診療所 東京診療所の治療室。東京診療所には2名の鍼灸師が在籍している

 

――その当時で印象に残っているのはどんなことですか。

高津 就職して半年ほど経った頃に、学生時代の同級生と集まりました。同期の友人が「先輩は治りやすそうな患者さんを診ているのに、自分はなかなか治らなさそうな患者さんばかりで大変だ」とぼやいているのを聞いて、「もう患者さんを直接診ているなんてうらやましい」と思ったものです。当時の自分はまだ、患者さんを診察させてもらえませんでしたから。

検査の一連の流れを覚えてからは、治療室に入って先輩の治療を見学し、補助につきました。皮内鍼を貼ったり、お灸の手伝いをさせてもらえるようになりました。看護師の代わりに診察室に入ることもありました。あるとき、医師に「どきなさい」といわれたことがあります。私が、診察室に入ってくる患者さんが見える場所に立ってしまっていたのです。「患者さんが入ってくるときから診察は始まるのです。あなたはロビーから診察室まで、患者さんが歩いてくる様子を見ていなさい」と言われてしまいました。

就職してしばらくは先輩の見習いではありますが、こちらが真剣に先輩方の治療を見ていれば、患者さんにもそのことは伝わるものです。この時期に、何を学ぶかがとても重要だと思います。

 

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京都診療所の待合室から中庭を望む(写真は細野診療所 京都診療所提供)

 

――「病院で働きたい」という鍼灸師の方にメッセージをお願いします。

高津 病院で働くことで、西洋医学を学べるのはもちろんですが、それ以外にも学べることがあります。それは、チームの中で働くということです。病院には医師、看護師、薬剤師、事務のスタッフとさまざまな職種が一緒に働いています。病院は「治療チームの一員としてどうしたら自分が役に立てるか」ということを勉強できる場所だと思います。

将来、開業を計画している人もいるかと思いますが、開業してからもスタッフを雇い入れ、育てて組織を大きくするというプロセスがあります。チームの中で育てられ、自分も後輩を育てて組織が成長していくという過程を知っておくのは大事なことです。いろいろな先輩から学びたい、チームの中で勉強したいという方は、病院という場所で働いてみるのもよい経験になるのではないでしょうか。

 

高津隆充(こうづ・たかみつ) 1958年生まれ。1981年同志社大学法学部卒業。1984年明治鍼灸大学短期大学卒業。同年、医療法人聖光園細野診療所入所。細野診療所の京都診療所・大阪診療所にて漢方医と連携しながら臨床に携わっている。

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