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書籍『知りたいこと、いっぱい! 東洋医学ポケット用語集』著者インタビュー [2013.05.13]

この春、東洋医学用語の解説をまとめた小さな用語集『知りたいこと、いっぱい! 東洋医学ポケット用語集』が刊行されました。著者は臨床経験45年以上、兵庫鍼灸専門学校の学校長を務める野々井康治先生。制作に至るまでの経緯や、本書にかけた想いについてお話をうかがいました。

●言葉の意味の理解が、臨床に役立つ

――本書を執筆しようと思われたのはなぜですか。


野々井 私は約35年前から養成施設で教員を務めており、これまでずっと「東洋医学概論」や「東洋医学臨床論」などの授業を受け持ってきました。

授業中は、よく学生から「“疏泄”や“運化”は何と読めばいいのですか?」や「“正気”とはどのような意味ですか?」など、読み方や意味に関する質問を受けています。その都度口頭や板書で答えているのですが、後日「先生、この言葉の読み方、もう一度教えてください!」と同じ学生が再度質問に来ることがあるんです(笑)。

また、臨床現場において「この患者さんは“気逆”が起きているから、これからこういう治療をしますよ」と説明しても、ぽかんとしている学生や若手の鍼灸師は少なくありません。教科書でよく見かける用語でも、意味をきちんと理解していないと臨床に応用できないのです。

そのため、彼らが気軽に手に取れて、勉強や臨床の場に持って行きやすい用語集があればいいなと思い、10年ほど前から少しずつ本書の執筆を始めました。

 


――野々井先生ご自身は、かつて用語の意味が理解できなくて困った経験はありますか。

 

野々井 もちろんたくさんありますよ! まだ20歳頃、多留内科クリニック(石川県金沢市)でお世話になっていたときのことです。多留淳文先生からはいつも「さまざまな古典を読破しなければ、よい鍼灸師にはなれない」と諭されていたことから、金沢市内の古書店や東京の古書店街をはしごして、古典関連の書物を漁っては、必死に読んでいました。ですがやはり、難しい用語や表現にぶつかることが多く、非常に苦労したのを覚えています。

 


●用語の選定基準とは?

――本書には、古典に関連する用語がたくさん掲載されていますね。そのときに購入した書籍の中からピックアップされたのですか?


野々井 それらの書籍から引用したものもありますが、その後多数の講習会やセミナーに参加した際、入手した資料も参考にしています。

これらの資料のなかでも、私が特に影響を受けたのは、朱明清先生の『朱氏頭皮針』(東洋学術出版社刊)です。今から23年前、朱先生のセミナーに参加した際、先生から直接いただいたのですが、それまで学んできた古典の知識に新しい中医学の知識が加味されており、新鮮な印象を受けるとともに、大変感動しました。

そのためこの用語集でも、私がこれまで収集してきた古典用語の解説に、中医学的な解釈を組み込むスタイルをとりました。

 


――本書に掲載されている用語は、どのような基準で選定されたのですか。

 

野々井 まず、『東洋医学概論』、『東洋医学臨床論』(ともに東洋療法学校協会編、医道の日本社刊)に記載されている用語は基本ですので、ほとんどカバーしています。あとは先ほど説明したような古典文献や、セミナーの資料を参考にしながら、養成施設や臨床における私の経験に基づき、重要と思われる用語をピックアップしました。

また、本書の特徴の一つである「臨床に役立つ」用語の選定作業を始めたのは、私が三木健次先生のもとでの修業を終えて、兄の鍼灸院で勤務し始めた頃のことです。

臨床現場では、患者さんは症状を言葉に変えて、私たちに訴えかけてきます。ところがその言葉が東洋医学でいうと果たしてどの用語に当てはまるのか、結びつかなくて悩むことがあるのです。

そのような経験から、この「臨床に役立つ」用語を抜き出すことを思い立ち、兄の指導を受けながら、日頃臨床で出合う言葉を東洋医学用語に置き換える作業を始めました。

残念ながら兄は5年前に他界してしまったのですが、最期まで臨床一本でしたから、臨床的な立場からいろいろとアドバイスをしてくれました。

大阪鍼灸専門学校(現・森ノ宮医療学園専門学校)附属鍼灸施術所で勤務していた頃も、私は日々患者さんの言葉を大切にしていました。その結果が今回の「臨床に役立つ」用語に結びついています。

 

 

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「臨床に役立つ用語」が満載

 

 

●東洋医学をもっと身近に!

――本書の制作において、こだわっているのはどんなところですか。


野々井 コンパクトなポケットサイズにもかかわらず、必要な情報がギュッと詰まっているところです。軽くてかさばらないので、持ち運びやすく、ちょっとした空き時間に取り出すことができます。ふとした疑問をすぐ解決できるので、ますます東洋医学を身近に感じられることと思います。

また、オリジナルの表を多用しているのも大きなポイントです。病証の鑑別や証候の分類、類似の用語などを一覧表にして、見やすくまとめています。

 

 

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病症の鑑別や類似の用語などはオリジナルの表で見やすくまとめている

 

さらに巻末には付録として、東洋医学の歴史をまとめた表や、『新版 経絡経穴概論』(日本理療科教員連盟・東洋療法学校協会編、医道の日本社刊)に基づく経穴部位の表、筋の起始・停止・支配神経をまとめた表も収録しました。

ふだんの勉強から臨床まで、幅広く活用していただける内容になっていると思います。

 

――本書をどのような人に読んでもらいたいですか。

 

野々井 学生や、臨床に出て間もない鍼灸師にはぜひ読んでもらいたいですね。また、東洋医学を愛するすべての人はもちろん、東洋医学の見方や考え方をご存じない方や、否定的な方にもぜひ手に取っていただきたいと思います。

東洋医学は、とてもシンプルでエコロジーな学問です。西洋医学を学ぶ方々にも、本書を通じて、その素晴らしさを理解していただければ幸いです。

 

 

野々井 康治(ののい やすじ)

1942年12月31日生まれ
1961年 大阪府立佐野高等学校卒
1963年 明治鍼灸柔道整復専門学校卒
1963~1965年 多留内科クリニックにて卒後研修
1965~1967年 三木健次先生に師事
1977年 大阪鍼灸専門学校非常勤講師
1982年 大阪鍼灸専門学校附属鍼灸施術所勤務
1988年 大阪鍼灸専門学校附属鍼灸施術所室長
1990年 大阪鍼灸専門学校専任教員
1997年 野々井はりきゅうIN森ノ宮開院 院長
2001年 兵庫鍼灸専門学院(現・兵庫鍼灸専門学校) 副学院長
2008年 学校法人兵庫医療学園 兵庫鍼灸専門学校 学校長

【現職】
学校法人兵庫医療学園 兵庫鍼灸専門学校 学校長
公益社団法人 東洋療法学校協会・教材研究部教科書委員会 委員
一般社団法人日本小児はり学会 理事
野々井はりきゅうIN森ノ宮 院長

 


 

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