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訪問マッサージの未来 ―企業3社からの提言―

澤登拓氏(株式会社フレアス) 川久保次朗氏(長谷川興産株式会社KEiROW事業部) 山下寿朗氏(株式会社ケアプラス)

  脳血管障害の後遺症や関節の拘縮などにより、治療院へ通うことのできない患者に医師の同意のもとで在宅でのマッサージ治療を提供する「訪問マッサージ」は、一部を除いてほぼ高齢者をターゲットとする業態といえる。今回、いずれも医療保険制度のもとで訪問マッサージ業を営む3社に集まってもらい、働き手の確保・育成や、業界を揺るがす不正請求問題への対策などについて話してもらった。

【高齢者向け事業への各社の思い】

─―まず、各社の業務内容について簡単にお話しいただけますか。
澤登  株式会社フレアスは2000年に山梨県でスタートしました。現在、北海道から沖縄までの一部地域を除いた全国でサービスを展開しております。事業所数が50ありまして、社員数は約600人です。利用者数は約1万人で、年間約70万症例の施術を提供しています。
  サービス内容は主に訪問の鍼灸マッサージですが、そのほか、4年前に訪問看護事業をスタートし、現在7カ所の拠点があります。それから、歯科クリニックと提携して、訪問の歯科サポートを行っています。
  「在宅事情を明るくする」というのが当社のテーマです。高齢者一人ひとりがその人らしくあるために、マッサージを軸に口腔ケア、看護、リハビリも行って、総合的に高齢者の尊厳を保つ事業を行いたいと考えて、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、歯科医師、看護師との連携を今進めているところです。
川久保  長谷川興産株式会社は、「おそうじ本舗」というハウスクリーニングのフランチャイズチェーン運営からスタートしました。当社はさまざまなジャンルでトータルに家族と暮らしを支えるサービスを提供していくという理念で事業展開しています。現在、有料老人ホームなど約90施設を直営で運営する一方、少子化への対策として、認可保育園約60施設の運営にも取り組んでいます。
  当社の訪問マッサージ事業「KEiROW」は、2013年の9月16日、つまり敬老の日に産声を上げました。当社はフランチャイズという手法を用いて、訪問マッサージにかかわる経営者を育てながら、鍼灸マッサージ師の社会的立場を上げていこうと考えています。
  また、当社は視覚障害者の採用を積極的に行っており、チェーン全体の施術者約400人のうち52%が視覚障害者です。視覚障害者が使われる立場ではなく経営者として、健常者と肩を並べて共生、競争できる、そんなステージを用意していきたいとの思いで事業を運営しています。

─―フレアスさんも視覚障害者を雇用していますね。
澤登  当社は約50人雇用しています。 山下 株式会社ケアプラスは、もともと「まごころベルサービス」という屋号で2000年頃から運営されていた訪問マッサージ事業を引き継ぐ形で2007年に設立しました。営業所はすべて直営ですが、施術者は雇用契約を結んでいる「社員施術者」と、もともと開業している施術者と提携する形の「提携施術者」がいます。社員施術者が約100人、毎月稼働している提携施術者が約300人います。1カ月当たりの利用者数は約4000人で、札幌から福岡まで、政令指定都市を中心に20拠点でサービスを提供しています。当社のテーマは「明るい地域社会づくりに貢献する」です。障害を抱えた人たちが前を向いていけるようにお手伝いをして、本人や家庭を明るくすることに貢献していきたいという思いで、少しずつ事業を拡大しています。
澤登  ケアプラスさんは昔からよく存じていますが、KEiROWさんとお会いするのは初めてで、しかもフランチャイズという異なる形態で経営されているので興味があります。現在、店舗数はどれくらいで、将来的には何店舗を目指していますか。
川久保  開始から約2年半、2016年3月末時点でおよそ190店舗を展開しています。将来的には600店舗を視野に入れています。
山下  現在の190店舗の中には、おそうじ本舗のフランチャイズ加盟店もあるのですか。
川久保  まだ10店ぐらいですが、もともとその店舗の経営者が興味を持っていて、十分なマーケティングを行っているところについては、厳正な審査をしたうえでKEiROWチェーンとしての出店許可を出しています。そういったフランチャイズチェーン網があるのも当社の強みですので、将来的に連携していく可能性はあります。
山下  他社でもおそらくそうだと思いますが、当社の利用者の約半分が脳卒中の後遺症を抱えた人です。この5年ぐらいで見ると、急性期を過ぎて退院後、すぐに訪問マッサージを希望するケースが非常に増えていると感じます。
  脳卒中の死亡率自体も今どんどん減少していて、15年ぐらい前と比べると半分ぐらいに下がっていると思います。そのこと自体はいいのですが、皆が健康で自宅に帰っているわけではありません。入院中はとにかく動けるようになろうと一生懸命リハビリに取り組むのですが、自宅に帰ってきた瞬間に、以前できていたことができなくなっているという現実に直面する人がたくさんいます。まずはそういった人たちのメンタルケアを中心にしながら、モチベーションが上がってきたら運動をがんばってもらうようにしています。

【いい人材を採る いい人材を育てる】

─―訪問マッサージについて、同じ高齢者を対象とする介護業界や、利用者自身に理解してもらうためにどのようなことが必要でしょうか。
山下  介護保険制度がスタートしたばかりの15年前は訪問マッサージ自体がケアマネジャーにほとんど知られていない状況でしたので、まずは存在を知ってもらい、居宅介護の現場に有効なサービスだと認知してもらうことが最優先課題でした。最近はケアマネジャーの認知もかなり進みましたが、大切なのは、毎日多忙なケアマネジャーに対し、私たちの目線で利用者がどのような状況なのかを適宜レポートすることだと思います。
川久保  介護現場に加えて、利用者への説明が正しくできているかどうかも重要だと思います。利用者のニーズを把握し、共通の目標を設定したうえで施術の内容や頻度を決め、関節可動域などの定点チェックをしっかりすることで、利用者からもこのサービスの意義や効果が正しく理解されるよう努めています。また、訪問型のサービスでまず大事なのは小さな約束を守ることです。例えば、訪問する時間、駐車場所、声がけの手順、さわってほしいところとそうでないところ、そしてサービス業としてのマナーやホスピタリティ。治療家としてのおごりから、こうした約束事を軽視することがないよう接客指導を行っています。

─―高齢者向けサービスを担う人材が不足するといわれるなかで、どのように働き手を増やしていこうとお考えですか。
山下  これから10年、20年先を考えると、私たちマッサージ業界だけではなく、小売り、飲食、アパレルなど、すべての産業が高齢者にサービスすることをある程度主軸にしてやっていかないと、日本の国内消費はそもそも成り立たなくなってくるはずです。
  マッサージ業界については、国家試験の合格者数が実質的な人材の上限数という状態ですので、当社でもマッサージ師以外の職制、すなわちOT・PTや看護師を採用する形のサービスを検討しています。サービスを提供していく対象は同じ高齢者ですが、いろいろな職制のラインナップを増やしていくわけです。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年4月号」でお読みください。