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超音波診断装置導入の意義と エコーガイド下刺鍼の実技

よしむら鍼灸治療院院長  吉村亮次氏

  鍼灸は基本的に、施術者の感覚でツボなどの反応点をとって施術していくという目に見えない世界である。そんななか、よしむら鍼灸治療院院長の吉村亮次氏は、施術の安全性と精度、そして患者の満足度の向上のため、1年半ほど前から臨床の現場に超音波診断装置(以下、エコー)を取り入れている。エコー導入の意義とそのメリットについて吉村氏に語ってもらい、エコーの画像を表示しながら鍼を刺す「エコーガイド下刺鍼」を実演してもらった。

【 臨床・教育・研究にメリット】

─エコーを治療院での臨床に導入されたのはなぜでしょうか。
吉村  きっかけは、技術の可視化をしたいと思ったことでした。自分の施術で、本当に鍼が身体のどこに向かっているのか、そして、どこに当たっているのかを見たかったのです。
  それから、教育ですね。当院は従業員がいるので、人を育てるうえで、技術を可視化することによって人に伝えやすくなる。そういう意味もあって導入しました。また、鍼灸にはエビデンスがないといわれることもありますが、エコーを使って可視化することによって研究が進むのではないかという期待もありました。
  エコーを使うことによって、施術者の感覚の世界が「見える化」され、生きている患者さんの身体の中のリアルな状態を見ながら鍼施術をすることが可能になります。
  臨床では施術者の経験や感覚が大事ですが、エコーはそれに加えて施術を安心・安全、的確に行うための道具といえるでしょう。

─実際に導入して、どのようなメリットがありましたか。
吉村  スクリーニングの精度が上がったのが最大のメリットです。つまり、鍼灸が適応か不適応かのジャッジをする際に、画像観察を判断材料に加えることで、施術者は「刺鍼していいのかな」というあいまいな状態で施術をしなくて済むんですね。そして患者さんも安心して鍼を受けられる。
  例えば、肩の痛みで来院した患者さんの場合、エコーで明らかな骨折や筋腱の断裂などの組織損傷(骨皮質の不整像、筋腱の不連続性)がないか確認します。次に、血流の速度と方向を色で表示するカラードプラ機能で腫脹、血流増加などの炎症所見を確認します。それから、呼吸による胸膜の動きを観察して、気胸の有無を確認します。
  このように、問診や徒手検査に加えてエコーで確認することで、鍼灸治療自体の適応・不適応を判断しています。
  その結果、明らかに鍼のテリトリーではないと分かるケースは、ご高診願いにエコーの画像を添付して、連携している医師に送ります。
  エコーを用いることで、鍼治療の適応・不適応や治療効果を客観的に評価できるようになりました。

【鍼灸師がエコーを使う時代へ】

─使用されている機器についてご説明いただけますか。
吉村  富士フイルムのソノサイトエッジという機器を使用しています。ノートパソコン型でコンパクト、しかも持ち運びを前提としているので衝撃にも強いのが特長です。そのなかでも当院で使っているのは1台の価格が300万円以上の上位モデルです。上位モデルと下位モデルの違いは、画質とドプラ機能の精度です。上位モデルは何といっても画質がきれいです。

─画像はデータとして保存することもできるのですか。
吉村  はい。ハードディスクを内蔵していて、静止画をパソコンなどで見られる画像ファイルとして保存できるほか、動画も撮影することができます。それらのデータを外部の装置にコピーすることももちろん可能です。

─この機器は、メーカーから直接購入されたのですか。
吉村  いいえ、販売代理店を介しています。
  日本の公的医療保険制度の枠組みでは、医師、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師の4師だけがエコーを実施できます。
  ただ、エコーの機器自体は2014年に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法、旧薬事法)で電子血圧計と同じ管理医療機器(ClassⅡ)に分類されているため、機器の発展に従って多くの人が使用し始めています。
  しかし、エコー使用技術の質の担保や、コスト上の問題などを理由に、鍼灸師には卸さないというメーカーもあるようです。
  ちなみに、鍼灸師がエコーを使ったとしても、医師法に規定された医行為にあたる「診断」はできません。

─これからエコーを導入したい場合は、どのようにするのがよいでしょうか。
吉村  私が立ち上げた一般社団法人日本超音波鍼灸協会(JAU)という団体で、鍼灸師の先生たちに向けて、エコー導入の相談から使い方のフォローまで行っています。興味を持たれた方はご連絡いただければ幸いです。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年6月号」でお読みください。