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経外奇穴10選
─5つの症状と施術例から─

岩崎和彦

  奇穴は経脈外にあり、圧迫して痛む、あるいは心地よく感じる部位とされる。経験的に治療効果があるとされ、阿是穴とも似ている。阿是とは中国語で「ああ、そこそこ」といった意味合いがあり、圧迫して気持ちのよい場所を「ああ、そこそこ」と言うことに由来したといわれる。
  筆者の治療法には一定のパターンがある。症状によって経外奇穴を合わせていく手法で、置鍼がメインとなる。背臥位および腹臥位での施術が主となる。
  整形外科疾患では阿是穴をプラスし、特効穴やオリジナルの穴も使用して日々臨床に臨む。奇穴のみの治療ではすぐに症状が戻るため、同時に本治法が必要である。逆に本治のみでは即効性に欠ける。患者に鍼灸のよさを理解してもらうには根本的に治すことと、治療効果を実感してもらうことの両方が必要であろう。そうした思いのもと、多くの人に鍼灸を受けてもらうことを夢見て日々臨床している。

【奇穴について 】

  取穴法を基本として穴を取っていくが、ツボがあるとされる部位の周囲に反応点がある場合はそちらを取穴する。その穴の反応は瞬時に変わることはなく、何回かの治療を重ねていくことで、当初は石のような硬さであったのがゴム状になり、最終的にはコロコロとした柔らかいものに変化する。その頃には、何をしても治らなかった症状も軽快していくことを日々の臨床で確認している。
  奇穴を用いるときに注意すべき点は、「生きた穴」を指でとらえて使うことである。書物に書かれている位置を正確に取穴するより、その周囲を丹念に調べ上げて反応点を探ることが重要である。
  奇穴の形状としては2つのタイプがあると筆者は考える。ゴム状の柔らかい硬結と、石状の硬い硬結である。前者は湿痰系であり、後者は瘀血系であるととらえる。施術の際には、どちらの硬結も貫くことなく、表面に近づけるよう刺鍼するのが効果的だと考えている。通常の穴は過敏なので深さ2〜3㎜の刺鍼で効果がみられるが、奇穴は反応が鈍っている印象があるため、硬結の形状に応じて直刺から斜刺で表面に当て、貫かないように刺入する。筆者はそれに加え、得気が出ない程度に細かい振動で雀琢することもある。

【奇穴を用いた施術の紹介】

  今回、10の奇穴を挙げるが、もちろんすべての治療を鍼灸のみで行うことは非常に危険であると思われる。筆者は西洋医学においての治療を基本としながらも、鍼灸治療で何かできることがないかという姿勢で行っている。奇穴といえば、どうしても一発勝負というイメージがあり、症状を劇的に変えるイメージがあるだろう。しかし、それだけを意識してしまうと、容体を悪くすることがあり、それでは元も子もない。
  そのため、施術によって症状がよくなっても患者を油断させることなく、西洋医学での治療も併行しながら的確に指示を出していくことが重要となる。症状の改善後も養生指導を行い、月1回程度のメンテナンスを行うことで、体調管理に努めるのが東洋医学の本質であると筆者は考える。
  以下に具体的な症状を挙げ、その際に用いる奇穴と施術例を紹介する。
  なお、以下で述べる経穴は施術点の目安であり、穴周囲の反応点を探り硬結に刺鍼する。筆者が考える経穴とは、反応の見られる生きた穴を捉えて取穴するものであるため、通常の取穴部位とはやや異なることをあらかじめご了承いただきたい。

1. 喘息
【使用奇穴】
定喘:「定」は安定することをいい、「喘」は喘息を指す。本穴は臥することもできない喘息を治すので、定喘と名づけられた。
  定喘は置鍼も効果的だが、柔らかい硬結には灸を、硬い硬結には円皮鍼(1.1㎜)を使用する。
【施術例】
  体位は坐位から始める。患者は両手を胸の前で交差させることで穴がよく出てくる。
  背部の膏肓、膈兪、定喘、督兪に円皮鍼または灸を行う。
  腹部の中脘、天枢、期門、章門、巨闕、中極、兪府、関元を適宜取穴し、刺鍼する。
  手部の曲池、尺沢、外関、列欠、合谷などに刺鍼する。
  足部の足三里、豊隆、太渓などに刺鍼する。
  次に、腹臥位で身柱、新堂、心兪、膈兪、肝兪、脾兪、胃兪などに刺鍼する。

  刺鍼時の使用鍼は1寸−1番。刺入の深さ2〜3㎜で、15分間置鍼する。
  上記の穴は毎回すべて使うわけではなく、脈診、腹診、要穴診などを行い選穴していく。要穴診としては、主に原穴や奇経八脈の穴を触診し反応点をとらえていく。
  筆者の治療の特徴は、治療後に反応の取れなかった穴に対して、円皮鍼・灸・吸い玉などを行う点にある。軽傷時は円皮鍼か吸い玉、重症時には灸を用いる。円皮鍼は痛くなければ1週間程度は貼ったままにしておくことで、こり固まって反応の取れなかった穴の反応が変化していく。灸は火傷を起こし、また吸い玉は皮膚に赤い反応を出して、それらが修復していく過程で改善すると推測している。

2. 潰瘍性大腸炎
【使用奇穴】
膵兪:原説は『千金方』にいう「胃管下兪三穴」のことである。「膵兪」の名称は広州軍区后勤部衛生部の『常用新医療法手冊』に出てくる。
痞根:「痞」とは胸腹間の気の機能の閉塞から起こる不快症状をいい、また常に膨満感を伴う。これを痞満という。このような症状を除く効果があるので、痞根と名づけられた。
腰眼:「腰」は腰部を指し、「眼」は両側対称の陥凹するところが眼に似ているのを指す。直立位、あるいは腹臥位の際、腰部の左右両側に現れる1対の陥凹するところが腰眼と名づけられた。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年7月号」でお読みください。