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鍼灸師による施灸と 一般への普及を考える(動画あり)

恒石 真、松木宣嘉、山見 宝

四国には、日本に灸を持ち込んだ弘法大師(空海)が開いたといわれる八十八箇所霊場があり、家庭でも広く灸が親しまれている。今回の座談会では、四国在住の鍼灸師3人が集まり、自身が灸を愛用するようになったバックボーンや、臨床・普及活動での秘話を明かす。また、煙や匂いの対策などを通して、灸の今後を見つめる。

【灸頭鍼や接待灸が 定着するまで】

松木  司会を務める松木です。今日は四国在住で、お遍路さんへの灸を続ける恒石先生、愛媛県立中央病院の山見先生にお越しいただき、灸について語り合いたいと思います。まずは自己紹介からですが、私は四国ではなく広島の県北で生まれ育ち、鍼灸師の資格を取ったあと10年間は東京で働いていました。四国に来て6年目です。西日本の鍼灸文化を身に染みて学習してきたわけではありませんが、私の祖父は10代後半から20歳頃に四国に行って胃の六つ灸、打膿灸を受けていたそうで、背中に打膿灸の大きな痕がありました。
山見  私は生まれも育ちも愛媛です。1989年に鍼灸師の資格を取りましたが、それ以前からお灸はしていました。子どものときに悪いことをするとチリゲにお灸を据えられました。据える場所は選んでくれていたんだなと今になって思います。お灸には昔から大変なじみがありました。
恒石  私は高知の生まれで、1982年に徳島で開業しました。開業歴34年です。大阪の三木健次先生のもとで修業したときにお灸を習って、開業したらどうしてもお灸を据えたいと思っていましたが、実際に開業してみると据える対象がいませんでした。徳島の治療院で強引にお灸をしたら患者さんは来なくなっていたでしょう。あとで分かったことだけど、私が開業する30年ほど前までは徳島にもお灸の文化は少し残っていたそうですが、私が開業する頃には、お灸は台座灸、鍼は使い捨ての時代になっていました。

恒石先生の「バリバリ」の探し方(取穴法)を収録した動画をYouTubeに公開しました。

松木  そんな事情もあって、お遍路さんへのお灸の接待を始めたのですか。
恒石  お灸の普及をしたいと思ったのがきっかけです。例えば老人保健施設のような高齢者が集まっているところは、マッサージは求められても鍼やお灸は要らないといわれます。お灸は、熱さに耐えられない人には苦痛です。昨今では煙で火災報知器が鳴ることもあるし、煙を出して怒られないところはないだろうかと考えたら、お寺しかなかった。あとは、友だちに「お灸はありがたいんか」と聞かれたことがあって、ありがたい場所はお寺だな、と。徳島で一番人が集まる八十八箇所霊場の第一番札所である霊山寺での奉仕を思いついたわけです。私一人でやっても続かないので、徳島県鍼灸師会の総会で手を挙げて提案しました。「それはええことやないか。今からお寺へ行って直談判してみよう」と年配の先生が賛成してくれました。
松木  総会のあと、そのまま乗り込んだのですか。
恒石  車で行って、「社団法人としてお灸の普及活動がしたいけど、場所をお借りできませんか」とお願いしました。「続くかね」「言い出した限りは続けてみたいと思います」「ほな、やってみなさい」といったやりとりがあって、前の住職が許可してくれて、その次の年から始めました。明石海峡大橋が開通した1998年ですね。霊山寺には観光客がびっくりするぐらい来るようになるから、宣伝になるだろうと。前の年から段取りを練習したり、全部自分たちで準備しましたよ。
松木  お遍路の灸は、そうやって始まったのですね。
恒石  お寺のお茶室で、3月から11月の第2・第4日曜の午前中にやっていて、ほとんど座位で据えています。当初、時間帯は「午前9時~12時」の看板をかけていたけれど、遠方から来て待っている人がいて、「しゃあないな」と鍼灸師会の会員5、6人で手分けしてやって、12時が1時、2時、3時になっても終わらなかった。それで評判になって、テレビで全国放送されたりもして、その後ダーッと人が来たわけです。

山見先生の触診と施灸法を収録した動画をYouTubeに公開しました。

松木  今ではすっかり定着しています。
恒石  お灸がよく効いたとお寺に礼状が来るようだけど、これには仕掛けがあります。治療する場所がお寺の庭でもなく門でもなく、本堂のお茶室だから効くのです。お茶室って障子の向こうからお遍路さんが唱える般若心経が聞こえてくるでしょう。ありがたい弘法大師が治してくれる。「弘法大師が救ってくれるんや。熱いのも我慢しなはれ。手を合わせて辛抱しなさい」と言いながらお灸を据えます。そのせいか、火傷したと訴訟になるようなことはありません。
松木  弘法のお灸は呪術的な要素が多分にある灸法だと思いますから、伝統的というか、すばらしい環境ですね。
山見  私のところは愛媛県立中央病院という中核的医療機関に併設されていることもあり、ある種の信頼感を持って患者さんは来られます。
松木  町の鍼灸院も少しずつそういった定着が進めばいいですね。
恒石  最近はお遍路に外国の人が多くて、白人の肌はガサガサだったり黒人はツヤツヤだったり、治療院にいたら触れないような人たちも来るから面白いね。この間は、鍼灸経絡経穴図鑑の掛け軸を見た外国人の女性が「Oh, river run through」って言った。よく分かっている(笑)。
松木  お遍路には日本だけでなく海外から観光客が来られますものね。
松木  愛媛の人もよく来るけど、ホンマにお灸が好きやなあ。痕が付くお灸が効くと知っているから、愛媛の人にはどんどん据えますよ。蜜柑畑は坂道が多くて膝が痛くなるようです。島から来た人が「一番札所の霊山寺に行ったら、タダでしてくれた。膝が治って歩けるようになった」と、その後マイクロバス1台に乗り合わせてお寺に来たことがありました。村上水軍の菩提寺として有名な伯方島の曹洞宗・禅興寺の総代さんが呼んでくれたんですけどね。朝から晩までお灸して、50人みたら手の感覚が分からなくなりました。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2017年3月号」でお読みください。

松木先生の施灸の道具と施灸法を収録した動画をYouTubeに公開しました。