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紫雲膏灸で灸の可能性を追求する

越石鍼灸院・越石まつ江

DVD『越石式灸テクニック』(医道の日本社)や本誌2016年12月号特集「喘息・肺病へのアプローチ」に登場していただいた越石まつ江氏は、34年間にわたってほぼ紫雲膏灸のみを用いて、急性・慢性問わずさまざまな疾患を治しており、「灸にはまだまだ可能性がたくさんある」と語る。そんな越石氏に、灸専門治療院を始めた経緯や治療院づくりの工夫を聞いた。また取材当日、イギリスから来日し、越石鍼灸院を訪問していたモクサアフリカの伊田屋幸子氏にもコメントをもらった。

 

【みんなが思っている以上に 灸には力がある】

―灸専門の治療院になった経緯を教えてください。
越石  1982年に開業して最初の1年半ぐらいは、ひと月5000本も鍼を使う治療院でした。私自身、鍼でつわりが治り、それで鍼に魅せられて、鍼灸学校に通ったぐらいですから、効果は確信していました。  
  とはいえ、新しいことを勉強して、臨床をして、経営までするわけですから、常に忙しく、昼も夜もなく働いているうちに病気になってしまいました。高熱が1カ月も続いて、微熱は病気が治るまでずっとありました。まずは西洋医学の門を叩きました。腎盂炎と診断され、抗生剤を1カ月飲み続けましたが、治りません。近所の病院から大学病院に変えましたが、治療は変わらず抗生剤のみ。さらに2カ月続けましたが、治りませんでした。それどころか、それまで問題のなかった肝臓の数値にまで異常が出てきたので、抗生剤を打ち切ることにしました。

  口も利けず、よろよろ歩きしかできないほど体調が悪化して、次は鍼に頼ることにしました。とある有名な先生の治療院に毎日通いました。1カ月通って変化がなかったので、もう1カ月続けてみたのですが、全く治りませんでしたし、ちょっとした手応えすら感じられませんでした。  
  そんな折、安藤譲一先生が「僕が少し診てみましょうか」とおっしゃってくださいまして、2回ほど来ていただき、紫雲膏灸を受けました。そのとき、ごく微弱ではありましたが、「エネルギーが動いた」ような感覚を覚えました。これならいけるかもしれないと思いまして、先生に施灸法を教わり、娘に毎日据えてもらいました。この頃は起き上がることさえできなかったのですが、2カ月間灸を続けたところ起き上がれるまでに回復し、さらに、もう1カ月続けると完治してしまいました。  
  治療院を休業して7カ月も経っていました。9kgも痩せてしまい、「お化けみたいですけど、先生、大丈夫ですか」と患者さんに同情されたぐらいです。この再開時から、灸のみの治療に切り替えました。自分の病気が治ったことで、「みんなが思っている以上に灸には力があるのではないか」と考え、これを臨床のなかで追求していきたいと考えたのです。

――このときからずっと紫雲膏灸なのですか。
越石  そうです。当初は何がどう効いているのか分からないので、糸状灸(紫雲膏灸では太さ1〜1.5mm程度の艾炷)のみの施術を3年間やり続けました。今にして思えば、よくそうしたなと思いますが、病気だった頃の自分にはやや大きめの米粒大の多壮灸(紫雲膏灸ではやや大きめに、ふわっと捻る)では強刺激だったのか、糸状灸しか受けつけなかったです。それでよくなりましたからね。

  その結果、糸状灸は私の病態のような虚証状態にも効果があり、さらにぎっくり腰や捻挫などの急性疾患に著効するということも分かりました。「灸は慢性疾患」というイメージが強く、日常の臨床で多い症例である急性疾患には使ってはならないというのが常識でしたが、艾炷を極めて小さくして紫雲膏の上に乗せ、さらに素早く火を消して温度管理を行えば、そんなことはないかもしれない。急性疾患でも使えるとなれば、灸のみで治療院をやっていくことができるかもしれないと自信を得ました。  
  こうした経験から、急性疾患や過度の虚証の患者さんには糸状灸を中心に、慢性疾患には多壮灸を中心に、という2種類の灸を組み合わせるスタイルができ上がっていきました。ひたすら3年間も糸状灸のみをやり続けたことは、自分の灸法の基礎を固めるのに役立ち、財産となりました。

―― 一般的に「鍼灸だけでは食べられないから、マッサージの免許も取るべき」と言われ、今では柔整とのダブルライセンスも当たり前になっているなかで、灸のみでやっていくことに不安はありませんでしたか。
越石  「自分の病気が灸によって治った」ということが、何よりも自信につながっていました。灸専門にしてから、「鍼もやってよ」という患者さんも実際にはいました。そんな患者さんには「鍼もやりますけれども、ちょっと私に任せてもらえませんか」とお伝えしました。それでもどうしても鍼もやってほしいという患者さんには、本当につけ足しみたいな鍼を1~2本打つ程度にしました。そのぐらい灸だけでやっていけるという確信がありましたし、これを追求していけばもっと面白い治療ができると思いました。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2017年3月号」でお読みください。