1704-1.jpg

定期購読のお申込みはこちらから

Apple、Apple のロゴは、米国および他の国々で登録された Apple Inc. の商標です。Mac App Store は Apple Inc. のサービスマークです。
Android、Google Play、Google Play ロゴは、Google Inc. の商標です。

1704_tit_contents.gif

1704_nakamen4.jpg

1704_tit_4.gif

国民生活基礎調査「健康票」における 「最も気になる症状」の治療に対する あんま・はり・きゅう・柔道整復師(施術所)の利用状況-前編-

矢野忠 安野富美子 藤井亮輔 川喜田健司

  我々は、これまで国民(20歳以上)を対象に、鍼灸療法の年間受療率について継続的に調査してきた。その結果をみると、鍼灸の年間受療率は2002年の調査開始時から2012年まではおおむね7%台で推移していたが、2013年に5%台に落ち込み、その後も回復することなく徐々に減少傾向にある。さらに近年の調査によると、鍼灸療法の受療場所が、鍼灸施術所から柔道整復施術所(鍼灸柔道整復を含む)へと移動しつつあると指摘されている。  
  このように、鍼灸療法は、その受療率ならびに受療場所において厳しい状況にある。しかも鍼灸療法は、ほとんどが運動器の疾患や症状の治療に利用されており、ほかの症状の治療や健康維持・増進、リラクセーションに利用されることは非常に少ない。すなわち鍼灸療法の利用は、運動器疾患や症状にほぼ限定されている。こうした状況は、受療率の阻害因子になっていると思われる。  
  鍼灸療法は、本来、予防、健康維持・増進から病気の治療にわたる広範な医療活動を行うことができる機能的多様性を特色としているが、現状は上記したように極めて狭い範囲での利用である。そのため、鍼灸療法に対する国民のとらえ方、あるいは認識は、「運動器障害の療法である」と固定的になっているように思われるが、本当にそうなのであろうか。  
  そのことを明らかにするためには、運動器以外の疾患や症状の治療に鍼灸療法がどの程度利用されているのか、また同じ症状の治療においてほかの療法(現代医学など)との比較ではどうなのか、といった情報が必要である。しかし、それらに関する調査は行われていない。このように鍼灸療法の啓発、受療率の改善などの戦略を立てるうえで必要とされる情報が不十分では、この先の展望を切り拓くことができない。そこで国民生活基礎調査「健康票」の報告を活用し、必要とされる情報の一端を補うことができればと考えた。

  国民生活基礎調査「健康票」では、「最も気になる症状」の治療について、どのような治療にかかったのかの調査が行われており、概略的ではあるが治療別の利用状況を把握することができる。本調査では日本の伝統的手技療法であるあん摩マッサージ指圧、鍼灸、柔道整復について療法別に集計されておらず、「あんま・はり・きゅう・柔道整復師(施術所)にかかっている」と一括りにされていることから、療法別の利用状況は不明であるが、「最も気になる症状」の治療状況の分析を通して、あん摩マッサージ指圧療法、鍼灸療法、柔道整復術に対する国民のとらえ方、認識などをある程度明らかにすることができると考え、1998年から直近の2013年までの「健康票」を調査対象に分析したので報告する。

【国民生活基礎調査について】

1. 国民生活基礎調査の概要
  国民生活基礎調査は、1986年を初年とし、3年ごとに行われている大規模調査である。その目的は、「保健、医療、福祉、年金、所得等国民生活の基礎的事項を調査し、厚生労働行政の企画及び運営に必要な基礎資料を得るとともに、各種調査の調査客体を抽出するための親標本*を設定することを目的としている」(厚生労働省の国民生活基礎調査ホームページ)とされている。それまでは、厚生行政基礎調査(1953〜85年)、国民健康調査(1953年〜85年)、国民生活実態調査(1962年〜85年)、保健衛生基礎調査(1963〜85年)の4種類の調査が行われていたが、世帯の状況を総合的に把握し、あわせて地域別に観察できるように上記4つの調査を統合したものが「国民生活基礎調査」である。

* 親標本
マスターサンプルあるいは標本パネルとも呼ばれ、母集団から抜き取った親標本であり、そこからさらにサンプルをとり、母集団のある特性を特定するために使われるサンプルのこと。

  本調査票は、「世帯票」「健康票」「介護票」「所得票」「蓄積票」の5種類で構成されている。このなかの「健康票」に「最も気になる症状に対して、なんらかの治療をしていますか」の設問に対する選択肢として、「①病院・診療所に通っている(往診、訪問診療を含む)」「②あんま・はり・きゅう・柔道整復師(施術所)にかかっている」「③売薬をのんだり、つけたりしている」「④それ以外の治療をしている」「⑤治療をしていない」の5つの選択肢を設定し、複数回答により答えさせている。なお、調査客体の総数は調査年度により異なるが、2013年では約30万世帯、約74万人であった。

2. 調査方法
1)分析対象とした調査年  
  1998年度、2001年度、2004年度、2007年度、2010年度、2013年度の国民生活基礎調査の「健康票」を用いた。
2)分析対象とした質問  
  分析対象とした質問は、「健康票」の質問3の補問3−2の「最も気になる症状に対し、なんらかの治療をしていますか。あてはまるすべての番号に○をつけてください」とした。  最も気になる症状とそれに対する治療については、最も気になる症状として42項目が列記されているが、そのなかから著者らがあんま・はり・きゅうの治療対象となり得ると思う26症状を選択し、これらについて分析した。
3)分析内容  
  選択した「最も気になる症状」26症状に対する治療状況として「1. 病院・診療所に通っている(往診、訪問診療を含む)」「2. あんま・はり・きゅう・柔道整復師(施術所)にかかっている」「3. 売薬をのんだり、つけたりしている」「4. それ以外の治療をしている」「5. 治療をしていない」の回答が出現する割合について比較検討した。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2017年4月号」でお読みください。