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乳がん術後の リンパ浮腫に対する 圧迫療法

戸崎綾子

  乳がん治療後の合併症の一つとしてリンパ浮腫が挙げられる。  
  乳がんの場合、上肢のリンパ浮腫がほとんどだが、乳房や腋窩近くの体幹に浮腫が生じることもある。症状の進行においては、日常生活動作(Activities of daily living:ADL)の低下から、肉体的負担、整容的観点から精神的な障害となる。  
  現在、リンパ浮腫は発症すると治癒は困難だが、病態を理解し、早期からの治療に取り組むことが重要である。また、浮腫が増悪して重症となった例においても、適切な治療の選択を行えば症状を改善し安定させることは可能である。  
  リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法(complex decongestive therapy:CDT)が広く臨床現場で普及してきている。また近年、画像検査の性能向上と医療機器の進歩に伴い、リンパ管静脈吻合術を主体にしながら、外科治療も行われている。画像検査報告からは、これまでの臨床所見だけからの評価とは別に、リンパ節・リンパ管の抽出・リンパ動態の可視化によって客観的な機能の重症度が報告されている。リンパ管シンチグラフィー、ICG(indocyanine green)蛍光リンパ管造影法、スペクトCT(single photon emission computed tomography:SPECT-CT)などの画像検査報告を確認すると、皮下の鬱滞している組織液に対して直接的なアプローチが必要な場合もあることが分かる。そのため当院では、患者が病院から提示され、持参した画像検査報告の知見を参考に治療を行っている。

  なお、来院する患者は近隣病院からの紹介が多いが、浮腫の原因がリンパ管の機能障害か判明していない場合には、病院で診断を受けるよう促している。  
  本稿では当院での集中排液治療、特に圧迫療法における、実際の臨床での対応について述べる。

【乳がん術後のリンパ浮腫に対する治療】

1. 続発性上肢リンパ浮腫の集中排液治療
  上肢リンパ浮腫については乳がん術後の患者が多く、女性患者の割合が高い。治療後の経過観察中に発症する患者が多いが、放射線治療中や、抗がん剤治療中に発症する患者もいる。さらに、再発や転移の治療中患者や、完治してから20年以上経過したあとに浮腫を発症する患者もいる。  
  乳がん手術の術式は、腋窩リンパ節郭清の有無、乳房全摘や乳房温存、乳房同時再建(インプラント再建・自家組織再建の際、同時に腋窩にリンパ節移植を行う場合もある)などである。放射線照射や抗がん剤による治療についても患者により異なり、患者の治療事情は多様化している。このような状況のなかでリンパ浮腫患者は増加しており、病歴の詳細について聴取は重要である。
1)用手的リンパドレナージ(MLD)
  用手的リンパドレナージ(manual lymph drainage:MLD)は1936年にVodderが最初に発表し、Földiらによって広く普及した。その有効性を示す報告がいくつかなされているが、手法やドレナージの方向については客観的に検証されていない。そして、多くの場合はどの患者にも定型的な方法で行われているのが現状である。

  近年の画像検査から患者個々によってリンパ節の有無や、体幹や患肢のリンパの流れが異なっているという報告や、表層の流れだけでなく深部優位の流れについての報告もされている。よって、当院ではMLDの前処置や体幹のドレナージは行っておらず、また患肢の皮膚をずらすような一定方向のドレナージも行っていない。集中排液のドレナージをする際には、まず患肢の指や手背にはネット包帯、筒状包帯を装着し、その上にウェーブウレタンを巻き、弾性包帯で固定し、数回関節運動をさせ、包帯をほどきながらしっかりとした圧迫をするドレナージを行っている。  
  波型のウェーブウレタンで皮膚に凹凸の圧迫をかけてから行ったほうが、セラピストがハンドだけで行ったり、また包帯だけのフラットな圧迫よりも、硬い皮膚を柔らかく改善するためには効率がよいからである。  
  セラピストの行うドレナージは、皮下の鬱滞している組織液にアプローチするため、手掌や腕で圧をかけほぐすように行っている。上肢へのドレナージは治療の際、セラピストが行うのみで患者への指導は行っていない。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2017年8月号」でお読みください。