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心療鍼灸によるうつ病へのアプローチ─心理療法・カウンセリングと鍼灸治療の統合・折衷─

南 治成(南心堂鍼灸治療室)

「うつは心の風邪」*1というキャッチフレーズが世に出てから17年を経て、精神科や心療内科の受診への心理的ハードルは相当下がってきている。その功罪はさておき、近年、当院に来院する患者の9割は精神科の受診が先行している。15年前は3割程度であった。患者自ら、あるいは家族からの勧めはもちろんのこと、企業においても、産業医から受診を助言されるケースだけでなく、上司や同僚から勧められることも増えている。当院においても患者本人からの相談だけでなく、患者周辺からの相談も増えている。うつ病に対する治療の選択肢に鍼灸が挙がることは、腰痛に対する治療のそれとは比べるべくもないが、徐々に増えつつあるという印象を持っている。  
  本稿では、メンタルヘルス分野に特化した鍼灸臨床を行っている鍼灸師として、日常臨床における場面構造を概説し、後に抑うつ症状を主訴とする症例を提示する。

【基本構造】

  高橋孝二郎氏(ヒューマン研究所所長・故人)が、1990年に開催された全日本鍼灸学会学術大会大阪大会において、「心療鍼灸」を提唱した。当院ではそれを発展させて、身体的アプローチとしての鍼灸と、心理的アプローチとしての心理療法・カウンセリングを統合的、また折衷的に組み合わせて治療に当たっている。

*12000年頃から、特にSSRI(抗うつ薬)を販売するための製薬会社によるマーケティングで使用された、軽度のうつ病に対するキャッチフレーズ。

  施術の前後や施術中の患者との会話に、目的を持って意図的に心理療法を取り入れ、鍼灸と心理療法を一連・一体のものとしたのが統合的アプローチである。この場合、患者は心理療法を受けているという認識を持たないこともある。一方、別々に構造化された鍼灸と心理療法を、鍼灸のみ・心理療法のみ・鍼灸と心理療法の3つのパッケージを、疾患や患者の状態を考慮して計画的に、あるいは治療の進展具合によって組み合わせるのが折衷的アプローチである。  
  心理療法については、統合的、折衷的ともに来談者中心療法*2と認知行動療法を主に行っている。心理療法の習得は、高橋孝二郎氏(前出)に師事したことを発端とし、学術書での独学からスタートした。カウンセリングや心理療法の講座、事例検討会を含む勉強会や研究会、学会でのワークショップ、放送大学大学院の臨床心理学関係講座の聴講などでブラッシュアップしてきた。心理療法の学会では、初学者のためのワークショップも充実している。

【場面構造 】

1. 予約時
  初診予約時に、来院の意思が明確な場合と、そうでない場合がある。前者の場合はすぐに日時の調整となるが後者の場合は、症状や経緯を聞き取ったり質問に答えたりしながら相手の意思が固まるのを待つことになる。

*2 1940年代に米国の臨床心理学者カール・ロジャースが提唱した心理療法の一種。

その際、こちらから鍼灸、心理療法を勧めたり、来院を促したりしないようにしている。予約はその時間枠に1人の患者しか受け付けない。同時に2人以上の患者が治療室にいることはない。また、待合室でもすれ違わないように時間設定している。メンタルの不調を訴える患者が予約なしで来院するという状況は経験したことがない。

2. 初診時

  患者が来院する10分程度前から、意識的にゆったりとした心持ちになるように準備している。施術者が忙しそうにしていると、患者が落ち着かなかったり、気を使ったりするためである。インテーク面接(初回の面接)は20〜30分程度で、下記の順に進めるが、流れによって前後する場合もある。
  はじめに、患者の希望での来院か、周囲に促されての来院か。後者の場合は来院することに納得しているのか納得していないのか。同伴者がいる場合は、親か配偶者がほとんどであるが、同席を希望するかしないか、を聞き取る。  
  次に、症状と経緯、精神科や心療内科あるいはその他の診療科の受診歴、服薬歴、心理療法の受療歴などを、患者が話すままに聴き、間に質問を挟んでいく。その過程で、鍼灸や心理療法への不安、また、来院すること自体への不安にも対応する。
  当院側から以下のことなどを説明する。薬は出せないことや、治療室以外では会わないことなどの「できないこと」。気分の変調や不安が強いとき、希死念慮が出たときなどは電話をかけてきてもよいこと、メールをしてきてもよいことなどの「できること」。秘密は守られること。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年2月号」でお読みください。