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IT眼症を含むVDT症候群への経絡治療と「目の竹温灸」

山田善章

【VDT作業の特殊性 】

  銀座で開業して11年になる。筆者はIT関係企業での就業経験から身につまされるものがあり、オフィスワーカーの心身の疲労に注目してきた。例えば、肩こりは鍼灸マッサージの治療対象として昔からよくある症状だが、近年みられるVDT(Visual Display Terminals)作業による肩こりは、かつて多かった家事労働、肉体労働による肩こりとは様相が異なる。IT眼症はVDT症候群と呼ばれる諸症状(眼精疲労、頭痛、頚肩こりなど)の一つと考えられるが、その治療のためにはVDT作業の特徴と、症状が発生するメカニズムを理解する必要がある。
  目の疲れとして感じる症状は、かすみ目(焦点調節機能低下)、ドライアイ、目の奥や周囲の痛みや圧迫感などの違和感がある。通常これらは、数時間の休憩により解消される一過性のものであるが、それらが慢性化して、一晩休息をとっても解消されないものを眼精疲労と呼ぶ。  
  VDT作業の特徴としてまず、ディスプレイを至近距離で凝視することが挙げられる。これにより、水晶体の厚さを調節する毛様体筋が常に緊張を強いられる。このような状態が長時間続くと筋疲労が蓄積され、焦点の調節機能が低下して、かすみ目の症状が現れる。  
  それから、集中して凝視し続ける作業では、まばたきの回数が少なくなり角膜が乾燥するため、ジーンとしみるような痛みを感じたり、かすみがかかったりする、いわゆるドライアイになりやすい。また、作業現場の高ストレス環境が自律神経に影響を及ぼし、交感神経を優位にさせ、涙の分泌量が少なくなることもドライアイに関係していると思われる。

  こうしたストレス環境による自律神経の失調は、頚部や肩甲骨周囲の筋を緊張させ、頚肩こりや頭痛の要因になると考えられる。また、血行が不良となるため目のクマができたり、顔色が悪くなったりする。さらに、目の奥や周囲の違和感といった症状も引き起こされる。  
  次にVDT作業では、バックライトのついたディスプレイに表示された高コントラストな画像や細かな文字などを見続けることが多くなるが、これらは光を感知する網膜にとって負荷の高い刺激となる。また、視覚中枢では大量の情報を解釈し、さまざまな判断も行わなければならない。その結果、目の網膜から伸びる視神経、さらに視覚にかかわる脳神経系も興奮状態を強いられ、疲弊する。この神経疲労は、前述の自律神経の失調にも関係していると考えられる。  
  目の酷使による直接的な影響以外に、VDT作業時の姿勢にも注目したい。ほぼ例外なく、上半身が前傾した姿勢となるはずである。この状態では、5〜6㎏ある頭部の重量による負荷が後頚部から肩背部、腰部の筋肉にかかり続け、特に脊柱起立筋、僧帽筋などが疲弊する。また、キーボードとマウスを扱うときは、肩甲骨を挙上する姿勢となる。それを担う僧帽筋、肩甲挙筋も酷使される。特に小さな肩甲挙筋の疲弊は著しい。このように筋疲労が蓄積して頚肩こりの症状を引き起こす。さらに、経験上、後頚部の緊張と緊張性頭痛との関係が深いと考えている。  
  以上のように、VDT作業は筋肉系と神経系の両方に悪影響を及ぼし、これらが相まって、眼精疲労、頚肩こり、頭痛を引き起こす。よって、これらの症状は別個に診るのではなく、一連のものとして扱っていく必要がある。なお、近年急速に普及したスマートフォンの長時間使用が身体に及ぼす影響も、基本的に上述のVDT作業と同じ性質のものである。

【東洋医学的にみた目の症状 】

  東洋医学的には、目の症状は肝の病証ととらえられる。その機序によって、当院では目の症状を次の3つのタイプに分類している。

1. 肝気鬱結型
  肝は情動に侵されやすい臓器である。精神的なストレスを受けると肝の疏泄機能が失調し、邪気(気鬱)が発生する。それが進行すると熱を帯び(火化)、顔のほうに上がる(肝火上炎)。その結果、いらいら感、目の充血や顔面潮紅、不眠を伴う眼精疲労となる。いわゆる実証の症状だが、その一方で下半身は冷えていることが多い。

2. 肝血虚型
  肝は目に開竅し、目は血を消耗する臓器である。血をため込んで各臓腑へ分配するのが肝の役割だが、目の使いすぎによってその血が不足し、先に述べたさまざまな症状を引き起こしている状態である。どちらかというと一過性のものが多い。

3. 肝腎陰虚型
  「2. 肝血虚型」が長期化し、年齢を重ねて40代以降になると腎陰が不足し、肝腎ともに陰液不足となってさまざまな症状が現れる。いわゆる老眼、白内障などの加齢時にみられる目の疾患もこの年代から進行し始めるが、目は相変わらず酷使され無理を強いられることから、さらに症状は重くはっきりと現れるようになる。

  以上3つのタイプは明確に分かれるものではなく、どの型の特徴が色濃く現れるかでその治療方針を決定することになる。当院では「3. 肝腎陰虚型」の患者が圧倒的に多い。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年3月号」でお読みください。