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生きた筋膜の構造を知れば、治療が変わる

文:編集部

【遺体解剖から生きた人体の解剖へ】

  身体の内部組織はすべてつながっていて、相互に関係性を持つ――。
  患者の身体と日々対峙している治療家ならば、誰もがそんな実感を持っていることだろう。その一方で、従来の遺体解剖では個別の組織の働きを明らかにすることはできても、身体を統合するネットワークを解明することは難しい。
  だが、科学・医学技術の進歩によって、生きている身体で何が起きているのかが今、明らかになってきている。つまり、身体でネットワークを張り巡らせている、ファッシア(膜・筋膜)の構造や機能が分かってきたのだ。
  フランスの形成外科医、ジャン・クロード・ギンバルトー(Jean-Claude GUIMBERTEAU)氏は、生きた人体における解剖を試みた挑戦者の一人である。ギンバルトー氏は、患者の同意を得て、手術中に高解像度技術によるデジタル内視鏡を行い、生体組織の撮影を行った。その結果、シャープで明瞭な筋膜を始めとした結合組織、つまり、ファッシアをとらえることに成功した。
  その研究成果は『人の生きた筋膜の構造』(医道の日本社)にまとめられているが、その一部を紹介しながら、生体における身体ネットワークの世界を少しのぞいてみよう。

本書付属DVDの映像を独自編集したサンプル動画をYouTubeに公開しています。

【コラーゲン線維のネットワーク】

  「巻頭企画Ⅰ」では、ファッシアがコラーゲンを主成分とし、そのコラーゲンが身体に走る微量な電気の通り道となり、経絡となるのではないかというキーオン医師の仮説を取り上げた。実際に、コラーゲン線維のネットワークはどのように構成されているのか。ギンバルトー氏が撮影した写真によると、それは、全く無秩序な形で分布されていることが分かった。
  この事実から、ギンバルトー氏は結合組織を体系的に理解することよりも、結合組織がどのように身体に運動を行わせているのかを探求することになる。
  「私は、この結合組織の複雑な体系を理解しようとする作業を断念することもできた。しかし、結合組織が非常に正確かつ巧妙に隣接組織の効果的で独立した運動を行わせている可能性に興味をそそられた」
  身体には、このような原線維ネットワークが全体に張り巡らされており、連続性を持っている。例えば、臨床において、患者の皮膚を伸張させたり、持ち上げたり、牽引したりしても、抵抗はあるものの、皮膚が裂けることはない。そして、皮膚を放せば、まるで組織が記憶を持つように元に戻る。
  ありふれた現象だが、これまでは「弾性」「柔軟性」「可逆性」という表現で説明されるのみで、生理学的には十分な説明がなされてこなかった。だが、組織は連続性を持ち、構造化していることを示したうえで、ギンバルトー氏はこう説明する。

  「可動性のある構造は組織記憶の形態を与えられる。力学的な圧力の間に損傷しない限り、必要な運動を行ったら、常に元の状態に戻ることができる」

【身体のフレームワークを形づくる「微小空胞」 】

  生きた人体で分かってきた組織の連続性。そこに細胞は関与していない。身体のある領域には、細胞が全く存在していないが、原線維物質は常に存在している。
  細胞についての研究は進む一方で、身体のあらゆるところにあり、身体を統合するファッシアは梱包材にすぎないと軽視されてきた。それが今、見直されてきているということだ。
  そのような細胞が存在しない無細胞空間において原線維がつくる多面体のことを、ギンバルトー氏は「微小空胞」と名づけた。微小空胞が連続して「微小立体」を構成し、身体のフレームワークを形成する。それが、ギンバルトー氏の持論である。
  微小空胞は、運動中に身体のさまざまな部位が行うリクエストに適応する。運動における微小空胞の基本的な役割のことをギンバルトー氏は「滑走システム」と名づけた。
  具体的には、例えば、腱周囲には、多種多様な血管があるにもかかわらず、腱の運動中、周囲の組織が安定したままで、腱の運動には影響しない。その理由は、微小空胞による「滑走システム」が働いているからだと、ギンバルトー氏は分析する。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年6月号」でお読みください。