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難治不妊症が鍼灸治療の体質改善で妊娠に至った症例

井上美生香

【はじめに 〜不妊患者が急速に増えた理由〜】

「不妊」や「妊活」という言葉がすっかり定着している現代。ここ何年かで、不妊治療専門病院が次々と新しくできている。その背景には、不妊に悩む夫婦が急増していることにある。今や5.5組に1組の夫婦が不妊に悩み、治療または検査を行っているという。

しかし、「不妊=病気」ではない。子宮や卵巣、また精子の状況が正常でないケースばかりではなく、妊娠を希望する夫婦のうち約半数が、ホルモン値や子宮、卵巣の検査、また精子の検査をしても、どこにも原因が見つかない不妊となっている。

不妊患者は30年前に比べ、急激に増えた。その理由として社会的な背景がある。1980年代頃までは、多くの女性が20歳代で結婚、出産をしていた。現在では、晩婚化が進み、30歳代後半〜40歳代で妊娠を希望する女性が増加し、全国では約4人に1人、最も多い東京都では3人に1人が35歳以上の、いわゆる高齢出産である。また、女性の働き方も変わり、転勤や出張、休日出勤、残業などが増え、仕事中心の生活が当たり前となった。趣味や習い事に時間を割くような余裕のある生活を送る女性が少なくなったように思う。

女性の社会進出による晩婚化、そして仕事中心になったことによるストレスや不摂生な生活習慣や食生活、それらが重なり、卵子の老化や劣化が原因で妊娠しづらい体質となったのではないかと考える。

【鍼灸治療はなぜ不妊に効果があるのか】

筆者は開業以来、経絡治療による体質改善を本治として、さまざまな症状を治療してきたが、とりわけ不妊には鍼灸の効果が高いと実感している。鍼灸治療の目標は「①冷え体質の改善」と「②ホルモンバランスの調節」、さらには「③老化や劣化した卵子の若返り」である。

「①冷え体質の改善」については、冷え症の女性はもともと多いが、特に不妊治療で来院する患者のほとんどが冷えを訴える。冷えには「表面的な冷え」と「身体の芯からの冷え」があるが、不妊治療で来院する患者は身体の芯から冷え切っていることが多い。基礎体温は、低温期(卵胞期)で36.2〜36.5℃、高温期(黄体期)で36.7〜37.0℃が正常範囲とされているが、基礎体温が低めの不妊症患者は身体の芯から冷え切っているタイプなので、鍼灸治療で冷え体質の改善を促すことが必要となる。

「②ホルモンバランスの調節」については、基礎体温を毎日つけている患者に持参してもらいチェックすると、高温期と低温期が2層にならずにジグザグしていたり、排卵日から月経初日が14日よりも短い、または、高温期と低温期の差が小さいなど、理想とされる基礎体温でないことが多々ある。その場合は、ホルモンバランスの乱れが不妊の要因の一つとなっている可能性が高いので、鍼灸治療で整えていく。

「③老化や劣化した卵子の若返り」については、年齢が大きく関与するが、ストレスが多い生活や冷え体質、そして食生活の関与も少なくない。

以上の3つを目的に、不妊症患者への鍼灸治療を行うが、冷え体質も、ホルモンバランスの乱れも、自律神経のアンバランスが原因であることが多い。自律神経にアプローチできることが、鍼灸治療の大きな強みであり、不妊に効果が高い所以である。

上の3つを目的に、不妊症患者への鍼灸治療を行うが、冷え体質も、ホルモンバランスの乱れも、自律神経のアンバランスが原因であることが多い。自律神経にアプローチできることが、鍼灸治療の大きな強みであり、不妊に効果が高い所以である。 一方、卵子の老化や劣化については、鍼灸治療のみで改善するのは難しいかもしれない。だが、鍼灸師の的確なアドバイスによる生活習慣と食生活を改善してもらったうえで鍼灸治療を行うことで、何年も妊娠できなかった患者が3カ月程度で妊娠に至った症例は多数ある。

不妊患者に限らず、治療で重要なことは、患者からの信頼である。鍼や灸を施すだけでは治すことはできない。患者の気持ちに寄り添い、治してあげたいという気持ちが患者に伝わることが重要であり、患者が疑問に思うこと、教えてほしいことを解決するのも鍼灸治療には必要な要素となる。

不妊患者は特に、職場はもちろん、親や友人にさえ相談できずに不安になっている場合が多い。そんななかで、鍼灸師が唯一の相談相手となることもある。「どこの病院に行けばよいのか」「どんな検査をすればよいのか」「なぜ赤ちゃんができないのか」など、患者が納得のいく説明やアドバイスをすることで、「この先生のアドバイス通りがんばってみよう」と思ってもらえるはずだ。そのために筆者は、何人かの不妊専門病院の信頼できるドクターが発信している情報や、不妊カウンセリング学会からの最新の情報を取り入れるようにしている。しっかりアドバイスすることで、鍼灸師への他力本願ではなく「自分もがんばってみよう!」と思ってもらうことが、結果を出す早道なのである。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年7月号」でお読みください。