1807_main.jpg

お得な定期購読のご案内

Apple、Apple のロゴは、米国および他の国々で登録された Apple Inc. の商標です。Mac App Store は Apple Inc. のサービスマークです。
Android、Google Play、Google Play ロゴは、Google Inc. の商標です。

1807_tit_contents.png

1807_nakamen_4.jpg

1807_tit_4.png

編集部チャレンジ企画 鍼灸受療率アップ大作戦!

第11回 いち早く独自のITシステムを導入した鍼灸院は「初めて患者」の目にどう映るか

●「初めて患者」DATA ●
土屋健一さん、44歳(取材当時)、ゴルフ場勤務。165㎝、75㎏。
事務系の仕事で肩がこりやすい。疲れてくると目や頭が痛くなる。

● 治療院名・施術者名 ●
長谷川鍼灸院・長谷川吾朗氏

鍼灸受療率アップの方策を探り、5月号は業団の若手理事による座談会、6月号は大手出版社の取材と、新たな展開を試みた本連載。7月号では再び、「鍼灸をまだ受けたことがない人に、編集部が同行して実際に体験してもらう」という当初の企画に沿って取材を行った。
今回の「初めて患者」は、数年来疎遠にしていた本誌編集Tの実兄。その兄の住む岐阜県内で開業して20年、長野式鍼灸臨床研究会の副代表を務める長谷川吾朗氏の協力を得た。

【入念な診察で兄の体質が明らかに】

事前のヒアリングによると、兄の主訴はパソコンでの事務作業による肩こりと目の疲れ。ありふれた症状といえなくもないが、その背景にある体質や生活習慣にどこまで迫れるかが、今回の取材のテーマとなりそうだ。鍼灸について兄は「施術の場面も道具も何も見たことがなく、未知の世界」とのこと。初めて触れたときの新鮮な反応を見る意図から、あえて予備知識は与えず当日に臨んだ。

駅で待ち合わせをして、兄の運転する車で取材先の長谷川鍼灸院へ向かう。移動中、改めて聞いてみると、兄はマッサージを受けた経験ならあるという。しかしそれは、温泉施設などで営業している「もみほぐし」のことを指すようであった。ご多分に漏れず、兄はあん摩マッサージ指圧師という国家資格があることを知らなかった。これまで出会った施術者も、無資格者である可能性が高い。

とはいえ、兄もそのような施術に治療効果を期待しているわけではなく、「身体の痛いところを悪くしない程度に触ってもらって気分転換できればええんや」と、淡々と語った。

目的地の長谷川鍼灸院へ到着。編集Tも長谷川氏に直接会うのは初めてである。あいさつを済ませるとすぐ、ベッドに兄を背臥位で寝かせて問診がスタート。長谷川氏がタブレット端末を開きながら、主訴や既往症、日常生活の様子などを聞いていく。長谷川氏は岐阜県や愛知県の知人らと共同で「長野式ITシステム®」*1を開発し、臨床に取り入れている。今回、兄には事前に問診票へ記入してもらっており、その情報がすでにシステムへ登録されている。通常の初診は院内で問診票を記入してもらい、その内容を長谷川氏がタブレット端末から入力するが、その場合の所要時間は患者の記入時間を含めて15分ほどだという。

長谷川氏はタブレット端末に表示された項目に従って問診を行い、兄のライフスタイルを明らかにしていく。大きい病気や、血液検査で異常が出たことはない。酒は週1回、家で缶ビールを1本飲むくらい。ゴルフ場勤務のため、朝は早い日で3時、遅い日でも6時には起きる。その分仕事が終わるのも早く、夜は10時くらいに寝る。睡眠に関する問題は特にない。仕事柄、ゴルフを多少たしなんでいるが、もともとスポーツや運動の習慣はない。食べ物の好き嫌いもない。

続いて、「長野式診断法」を使い、兄の身体の状態を調べていく。脈は平脈で、特に遅くも速くもないとのこと。

*1 長野式ITシステム
電子カルテ、辞書機能、症例検討、データ収集などの機能を持つ。「鍼灸治療用情報装置」 として特許出願中。商標登録済み。https://89navi.net

長谷川   お腹の状態を確認していきます。押されて圧迫感や、痛い、苦しい、こそばゆい(くすぐったい)感じがあったら教えてください。特にないですか。では、あばらのほうも失礼します*1。ここは右の期門という肝臓のツボですが、ここにちょっと芯があって、つまむと多少硬い感じがします。肝臓が少し弱っているかな。この肋骨の端のところは、右と左と比べて、どうですか(章門のツボを探る)。

患者   痛いというほどではないけど、どちらかというと左のほう(が痛い)かな。

続けて各経絡の「火穴」の反応を診ていくが、兄から特に「痛い」などの反応はない。

長谷川   身体の緊張は少しあるようですが、総じてひどいところはなく、結構元気ですね。

患者  やりがいのない患者ですみません。

長谷川   いえいえ。まあ、だいたい健康な方はそんなものです。

以上のようなやりとりをしながら、長谷川氏がタブレット端末に情報を入力し終えると、所見のあった部位を赤く示した人体図などが表示された。

長谷川   いずれも大したことはないのですが、お腹の状態から脾臓と肝臓系統、足のほうでは腎臓の経絡、手では心臓と肺の経絡に反応があります。親指がパンと張っているのは、肺が疲れているからですよ。これらから、循環や免疫に関係することが分かります。

患者   耳鼻咽喉科で気管支炎だといわれたことはあります。それから、毎年暑くなり始めの時期、電話中に急に喉がつかえて、せき込んで話が続けにくいときがあります。

*1  主だった腹診の反応がなかったため、募穴診も加えた。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年7月号」でお読みください。