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鍼灸師にもっと知ってほしい
歯科口腔領域での東西融合実践法

河野渡 氏

歯科医師の河野氏は、歯科医院を開業してまもなく鍼灸師の免許を取得。早くから東洋医学との融合に可能性を見出し、日本歯科東洋医学会設立にも携わった。自身の歯科医院では、東洋医学のメソッドを応用し、患者がリラックスできる環境を構築しているほか、鍼灸院を併設し、東西医学によるトータルメンテナンスを提供している。そんな河野氏に、鍼灸師は歯科口腔領域でどのように活躍していくことができるか話を聞いた。

【ぎっくり腰が引き合わせた東洋医学との出会い】

――河野先生は歯科医師になったのち、鍼灸師の免許を取得したそうですね。歯科治療に東洋医学を取り入れるに至った経緯とは何だったのでしょうか。

河野   私が日本大学の歯学部に在学していた当時、同じ大学の麻酔科の教授に故・谷津三雄先生(日本大学名誉教授)がいらっしゃいました。谷津先生は鍼灸に造詣が深く、鍼の実習を行っていたほどです。そういった話を聞いていたため、もともと東洋医学に興味はありました。

私が鍼の効果を実感したのは大学3年生のときで、くしゃみをした拍子にぎっくり腰になったことがきっかけです。それがたまたま日本大学病院の前だったので、そのまま一緒にいた友人に手を借りて整形外科を受診したのですが、「骨はどこもずれていないから、いわゆるぎっくり腰だ」と診断され、腰部に麻酔を打ち、消炎鎮痛剤を処方されただけでした。麻酔が効いている間は痛みませんが、それが切れたら全く動けません。それこそ靴下も履けないほどです。そんなときに友人から鍼治療を勧められ、確か六本木にあった鍼灸院で志室と中封に鍼を打ってもらったら、本当に痛みが消えてしまいました。

河野   鍼灸が自然治癒力を高めることは知っていましたが、ここまで即効性があるのかと驚いたのと同時に、「これを歯科に応用できないか」と考えるようになりました。

――河野先生ご自身の治効体験がきっかけだったのですね。鍼灸の専門学校に通い始めたのはいつ頃でしょうか。

河野   この歯科医院を開業してからですね。東洋医学をしっかり学びたいと考え、大阪鍼灸専門学校(現・森ノ宮医療学園専門学校)に入学しました。昼間は歯科治療を行い、夜間に学校で勉強という生活です。

ほかにも、大学卒業業後から東洋医学について学ぶ歯科医師の集まりにも参加していました。これが1983年から日本歯科東洋医学会となるのですが、創立時のメンバーのなかでは私が一番若手でした。同会初代会長の故・松平邦夫先生(松平歯科医院元院長)や2代目会長の福岡明先生(福岡歯科会長)、それに鍼灸の大家である間中喜雄先生から教えをいただいていました。その頃はちょうどニクソンの訪中やWHOが鍼灸を積極的に取り上げるよう勧告したときで、日本歯科東洋医学会でも主に鍼麻酔に注目していました。松平先生は、合谷に鍼を1本打っただけで患者さんに痛みを感じさせることなく抜歯していて、その光景は印象的な思い出です。私としては鍼麻酔に限らず、東洋医学をもっと歯科の臨床現場に取り入れていければいいなと考えていました。

――河野先生が日本歯科東洋医学会の会長に就任したのは何年でしょうか。

河野   2017年です。当会としては歯科医師にもっと東洋医学を活用することで得られるメリットを知ってもらいたいと考えていて、例えば歯科医師のための鍼灸講座を開催しています(『医道の日本』2018年11月号p.30を参照)。

河野   もちろん、歯科医師が行えるのはあくまでも歯科治療に限局した鍼灸治療だけであることは、強調してお伝えしています。こういった機会に歯科医師に鍼灸を知ってもらい、自分にできない部分を鍼灸師とタイアップして患者さんに提供するようになれば、それは鍼灸師にとってもメリットがあることだと思います。

【患者が感じる痛みの原因に音や匂いが関係している】

――河野先生の歯科医院では、どのように東洋医学を活用しているのでしょうか。

河野   鍼やレーザーでツボを刺激し、痛みを緩和させることももちろんですが、歯科医院に来院する患者さんは非常に緊張していて、痛みに敏感になっています。そんな患者さんの緊張を解く手段にも東洋医学を活用しています。

例えば、患者さんにはリラックスするための呼吸法を指導しています。また、消毒液などの「歯医者の匂い」は患者さんにとっては不快になりかねないので、当院ではアロマを焚いています。それから音も気をつけなければいけません。あの歯を削る音なども患者さんに緊張を与えてしまいます。院内では川のせせらぎや海の波といった自然音を流していますし、より敏感な人には「サウンドマスキング」という、ヘッドフォンで環境音を遮断しつつ、音を骨伝導で体内に伝える機器があるのですが、それを使いながら治療しています。これらは東洋医学における「気の流れ」の応用なんです。ヨガや座禅の基本は「調息」「調心」「調身」ですよね。患者さんにはその三調をできる限り分かりやすく説明するようにしています。

もちろん、西洋医学を否定するつもりはありません。ただ、東洋医学をミックスさせることで、患者さんにより貢献することができると考えています。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年11月号」でお読みください。