臨床で知っておきたい 鍼灸安全の知識

臨床で知っておきたい 鍼灸安全の知識

「安全で」「衛生的な」鍼、本当にできていますか?

安全で、衛生的な鍼を受けたい――。
鍼灸院を訪れる患者さんなら、誰もが持つ思いでしょう。とりわけ初めて鍼を受ける患者さんは「鍼による事故はないか」「衛生的なのか」という点が最も気になるところですが、あなたの治療院ではその思いに応えられているでしょうか? 
そもそも「安全の鍼」とはどのようなものなのか。また何を、どれくらい気をつければ「衛生的」と言えるのか。まず鍼灸師自身がきちんと「鍼灸安全の知識」を持って、それを実践し、患者に説明できなければ、これからの時代に取り残されていくばかりでしょう。
そこで、(社)全日本鍼灸学会研究部安全性委員会によって、鍼灸安全性に関する情報を収集・整理し、解説したのが本書です。鍼灸安全について最新の研究結果を学べるだけではなく、より「安全で」「安心な」鍼灸施術のための環境改善、意識改革、教育資料に活用できる、エビデンスに基づいた鍼灸安全性書籍の決定版。
少しでもリスクが少なく、衛生的な鍼灸治療を患者さんに提供したいと考えている、すべての鍼灸師の方々に読んでいただきたい1冊です。

ISBN:978-4-7529-1120-3
(社)全日本鍼灸学会研究部安全性委員会
仕様B5判 124頁
発行年月2009/06/01
1120-3
定価 本体 2,000円+税
ご購入はこちら(Ido Net Shoppingへ)

目次

第1章 鍼灸の有害事象 総論
第2章 鍼灸の有害事象 各論
第3章 衛生的な刺鍼
第4章 器具類と環境の衛生管理
第5章 その他
付録 マンガ覚えておきたい鍼灸インシデント

編集者インタビュー

編集を行った(社)全日本鍼灸学会研究部安全性委員会代表の山下仁氏に、本書の特徴や執筆の背景についてお伺いしました(委員会は2007年度末に解散し、現在は「研究部データベース委員会」に引き継がれている)。治療者なら誰もが必要とは認識しながらも、まだ十分には浸透していない「鍼灸の安全性」。いろいろと思い込みもあるようです。

――この本を出版されることになった経緯を教えてください。

 

山下 全日本鍼灸学会研究部安全性委員会は、1990年代半ばくらいから、鍼灸による事故や安全性に関する文献を集め始めました。そして2002年ごろから「では具体的にどうすればさらに安全な鍼灸臨床が実現できるのか」ということで、消毒方法や教育内容など安全性のエビデンスを分析し始めました。

 

学会でワークショップを開催し、いろいろな発表を行ったり、参加者の貴重な意見をいただいたりして、かなりの情報がたまってきたんですね。それを会員の方に限定するのではなく、一般の開業鍼灸師の先生方にも情報を広く共有して鍼灸の安全性と信頼性を高くする活動につなげたい、そのために本を出版しようということになったのです。

 

 

――本書は5章構成になっていて、段階ごとに知識を得られるようになっています。

山下 「第1章 鍼灸の有害事象 総論」では「有害事象」という言葉の定義から入って、全体としてどれくらい報告があるのかを、そして「第2章 鍼灸の有害事象 各論」からは「気胸」「感染」「折鍼」など個別の報告例について、医学界でどんな情報が流れているのかの各論に入っていきます。

 

それを踏まえて、「第3章 衛生的な刺鍼」、「第4章 器具類と環境の衛生管理」では、具体的にどのようなことに気をつければ事故のリスクが減るのか、という防止策について書いています。総論、現状把握、そして具体的方策という流れです。それに加えて、誤解されがちな用語や概念などについて説明したコラムをたくさん載せたのも本書の特徴ですね。

 

 

――「鍼灸の有害事象」が、すべて鍼灸によって発生したとは限らないというのは初めて知りました。


山下 「有害事象」は因果関係が確立されていないものも含みますので、例えば鍼をしたと同時に感染が起きれば「有害事象」と呼びますが、必ずしも鍼が原因とは限りません。もともと感染症があった患者さんが、初期症状として痛みや筋肉痛を訴えて鍼灸院に来て、鍼を受けた後に症状が進行したという場合も十分考えられます。

 

実際、検死解剖で鍼が「ぬれぎぬ」だった症例も報告されています。だから「鍼の有害事象」=「鍼による事故」ではないということ。これは非常に重要なことです。

 

 

――指サックをつけても衛生的に万全とは限らない、というのも意外でした。


山下 指サックをつけても、自分の手が血液に汚染されないだけで、それでいろいろなところを触って鍼を持ったら、当然汚れますよね。まるで指サックをつけたらすべて安全のような印象がありますが、衛生操作はきっちりやらないとだめなんですよ。そういった当たり前のことを改めて理解する必要があります。事故が起きる前の「転ばぬ先の杖」として、活用してほしいです。

 

 

――いわゆる「ガイドライン」と呼ばれるものとの違いを教えてください。

山下 マニュアルやガイドラインには「こうしたらいいですよ」ということだけが書いている場合が多いですが、本書では「そうすると何故いいのか」という根拠も記載するよう努めました。それを理解できれば、マニュアルに載っていないことでも、ある程度推測をしながら、安全な施術ができるようになる。だから、リスク管理に関する応用ができるようになるんです。


例えばディスポサーブル鍼だけを使う治療者と、オートクレーブで滅菌する再使用鍼を使う治療者では、衛生管理マニュアルは違ってきます。また、浅く刺す流派と深く刺して響かせる流派では、やはり知っておくべき注意事項が異なります。それぞれの鍼灸院や流派が、自分たちの特徴に応じて必要な情報を抽出して自分たちなりのマニュアルを作ればいい。そんな、マニュアルの元ネタ本になってくれたらうれしいなと思います。

 

 

――どういった読者に読んでほしいですか。


山下 教育や研究に携わっている方にはもちろんですが、一般の開業鍼灸師の先生方にも、是非、読んでほしいです。有害事象については、気胸だったら呼吸器系や外科系、銀皮症だったら皮膚科というように、それぞれ専門の医学学術雑誌で取り上げられるため、一般の鍼灸師の目には触れません。つまり、開業鍼灸師がアクセスしない医学雑誌で鍼灸の安全性が語られてしまっているという問題があるんです。日本の医学界で鍼灸の安全性についてどのように語られているかということを、本書で知っていただければと思います。


2007年まで毎年のように全日本鍼灸学会で安全性ワークショップを開催しました。そのワークショップに毎回参加して貴重な意見をくださった開業鍼灸師や学校教員の先生方がいらっしゃいます。その意見を反映してまた次回にとつなげていくことで、10年間続けることができました。この本は、そんな先生方のおかげで作成できたと思っています。

 

現在は安全性委員会は解散し、データベース委員会として有害事象や過誤防止にかかわるデータベース更新作業を継続したいと考えています。本書の読者の皆さんから感想や意見などをいただけば、それもまたフィードバックして、さらに安全で衛生的な鍼灸治療を浸透させていきたいと考えています。

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