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Holistic Health Centerの南秀史郎氏に聞く
「アメリカで成功する秘訣」とは? [2009.12.14]

海外で治療院を開くにあたっては、どのような苦労があるのでしょうか。言葉、制度、経営など、日本とは異なる環境で鍼灸治療を行うことについて、日本に一時帰国中の南秀史郎氏に話を聞きしました。南氏はカリフォルニアで、世界一険しい波“マーヴェリックス”に挑む、数少ない日本人ビッグウェーバーとしても活躍中です。

鍼灸院の経営とサーファーとしての夢。その2つを両立させながら、豊かなライフスタイルを送る秘訣とは?

【海外で誰もが経験する壁】

――先生はアメリカで活動される際、一番苦労されたのは語学であると『医道の日本』2009年11月号にお書きくださいました。鍼灸師として海外でチャレンジするには、やはり語学が問題となるのでしょうか。


確かに語学の面では苦労しましたね。いろいろな医学用語がありますから、語学ができなかったら鍼灸の免許を持っていても大変だと思います。私は学生の時に渡米したので、学生生活を通じて自然と語学を覚えていきましたね。また、患者さんから英語を教えてもらったところもだいぶあると思います。だから、言葉の壁については、向こうで生活していれば少しずつ克服していけると思いますよ。


それと、治療に関して言えば、言葉はあまり重要ではないんです。手技や治療自体で患者さんに分かってもらえますから。だからこそ真剣勝負という意気込みで治療に臨んでいます。アメリカ人の医師以上に、体を張って今までやってきたというのが現実です。

 


――そうしますと、語学よりも苦労することが他にあるということでしょうか。


ビザの問題が一番ネックでしょうね。ただ、今は日本の鍼灸資格を持っていて、さらにアメリカの鍼灸資格も取れば、ビザは取れるはずです。H1という特殊技能者に与えられるビザを取得すれば、6年以内に永住権の申請ができます。ただし、取得にはスポンサー、つまり現地での雇い主が必要なんですね。これを見つけるのが難しいんですよ。


僕のところにも、日本の雑誌を見て連絡を取ってくる人はいますね。実際、僕がスポンサーになって今までに3人、永住権を取った人がいるんですよ。実力のある人にはスポンサーになってあげたいんですけど……ビザが取れないことも考えられるので、簡単にスポンサーになってあげられないのも現状です。だから、やはり一番の問題はビザなんです。ただ、アメリカは優秀な人材を積極的に採用する国です。アメリカに貢献できるような人にはビザが出るでしょう。その点では日本よりビザが取りやすいのかもしれないですね。

 


――アメリカは、意欲がある人にとって開かれた国なんですね。


そうです。日本も本当はそうならなくちゃいけないですよね。少子化で、これからどんどん子どもが減っていくでしょう。だから、日本の大学に勉強をしに来る外国人を、日本のブレーンとしてキープしなくちゃ駄目ですよね。アメリカはそういうことをやっています。アメリカで学ばせたノウハウを外国に流出させてしまうよりは、ビザをあげてアメリカに住んでもらった方がアメリカの国益になるじゃないですか。だから、日本もそういうふうに変わっていかないと、将来危ないと思いますね。

 

 

【「人を育てる」治療院経営】

――先生の治療院には今、スタッフの方はどのくらいいますか。 
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日本人の鍼灸師が今6人いて、あとはアメリカ人、中国人、韓国人と、もういろいろです。

日本人スタッフの多くはアメリカで免許を取っているんです。もともと別の目的で渡米して、その後、方向転換して鍼灸の世界に入ってくる人が多いですね。ITのエンジニアだったのに、鍼灸治療に出合って、魅力を感じて資格を取った人がいます。また、別の人はスポーツトレーナーを志して、大学時代にATC(NATA公認アスレティックトレーナー)の資格を取りました。しかし、運動療法だけではなかなか患者さんの治療ができないという壁にぶつかったんですね。彼はサーフィンをやっていたので、僕のライフスタイルを見て「ああいうふうになりたい」と(笑)。それで、鍼灸を始めてくれました。

 


――スタッフの皆さんは常勤ですか?


常勤です。正社員は5人なんですが、あとはみんなインディペンデント・コントラクターという雇用形態のスタッフです。彼らは治療院を使って治療して、会社からはその歩合で給与を支払うという形でやっています。


インディペンデント・コントラクターとして働くスタッフには、鍼から漢方薬から治療に必要なもの全部をうちのクリニックが支給します。漢方薬1つオーダーするのも、個人でやると結構時間を取られます。治療の準備から患者さんの予約まで、うちが全部一括してやってあげる。だから、スタッフは診療所に来て患者さんを診るだけでいいのです。

 


――治療について、先生からスタッフに指導されることはありますか?

日本人スタッフについては、治療方針を統一しようと思っています。経絡治療学会理事で学術部長の池田政一先生がアメリカでセミナーをされる際には、スタッフを連れて行ったりしています。日本式の鍼灸、経絡治療という方向に変えていきたいんですよね。ただ、それぞれみんな考え方も違うし、やり方も違うので、うるさくは言いません。


僕の役割は、開業希望者の独立をサポートすることだと思っているんです。今は大学を出ただけではすぐに開業するのは難しいでしょう。お金を取らないで、アシスタントとして僕のやり方を見せて少しずつ教え込んでいきます。だいたい1、2年、僕の下でアシスタントをやって、ある程度のレベルになったら独立させてあげる。そうして育った人たちが、今でも何人もスタッフとして残ってくれています。一番長い先生はもう14年になります。空手の段位ではないですが、スタッフは年月とレベルに沿って腕を磨いてくれています。だから、100パーセント任せられるスタッフばかりですよ。

 


――経営面では、先生はどういった役割でいらっしゃいますか?


僕は、経営には一切ノータッチです。家内に社長として入ってもらっています。また、別にマネージャーが3人います。経営の方は、マネージャーたちと家内に任せています。僕は患者さんを診て治療したり、僕よりもその患者さんと相性が良さそうなスタッフがいれば、そのスタッフに治療を任せる。そういう役割ですね。


あと、患者さんによっては西洋医学的な検査・治療が必要かどうかの判断も出てきます。うちはインテグレーティヴ・メディスン(統合医療)を目指しているので、西洋医学の先生にも常駐してもらって、チームとして治療していくという形を取っています。それと食餌療法や運動療法なども含めて、総合的にやるようにしていますね。

 

 

【仕事を盛りあげてくれる、豊かなライフスタイル】


――先生はサーフィンや空手だけではなく、サンフランシスコの日本人会が主催するお祭りに参加するなど幅広く活動されています。そういった交流がアメリカで治療院を経営していく上で役立つことはあるのでしょうか。


お祭りの方はそうでもないですけれど、サーフィンと空手を通じて、結構患者さんがいらっしゃいますね。ベテランのサーフィン仲間も多いんです。だから、僕がサーフィンの大会に行くと、「腰が痛い」「肩痛い」と言ってきます。こっちは勝負に行っているわけだけれども、治療の話で時間を取られることが多いですね(笑)。


それは冗談として、実際、どこでどういうつながりで患者さんが来るか、というのは分からないですからね。下手な宣伝でお金をかけるよりは、いろいろなコミュニティーに入っていったほうが患者さんに出会えるのではないかなと思っています。もちろん僕の場合は、患者さんを紹介してほしいから参加したのではなく、自分の興味でいろいろ活動しているのですが、それにしてもありがたいですよね。僕みたいな風貌でもちゃんと患者さんが信頼して来てくれるというのは(笑)。

 


――最後にこれから海外を目指す人にアドバイスと先生の今後の抱負をお聞かせください。

日本人として負けられないという気持ちを持ってやらなくちゃいけないかなと思って、今年はサーフボードに日の丸を入れたんですよ。今、日本人のビッグウェーバーは僕以外にいないので、ぜひ若い日本人サーファーには海外に出てビッグウェーブの大会でも勝負してほしいと思っています。


もちろん僕自身もまだまだマーヴェリックス(注:サンフランシスコのビッグウェーブ)に挑み続けるつもりです。すいません。またサーフィンの話ばかりになってしまいましたね(笑)。


鍼灸師としては母が年なので、将来的にはまめに日本に帰ってきて、開業したいという気持ちも持っています。ただ自分のライフスタイルは崩したくないので、難しいところですね(笑)。

 

ただ近い目標としては、カリフォルニアでは鍼灸と言えば、TCM(中医学)がほとんどを占めていますから、日本鍼灸をもっと広めたいと思っています。池田先生がアメリカでセミナーをされる際はお手伝いをしています。経絡治療にはとても可能性を感じますし、日本の鍼灸は素晴らしいです。日本鍼灸のために少しでもお役に立てればいいなと思っています。

 

 

南秀史郎(みなみ・ひでしろう)氏

1981年、大阪鍼灸専門学校(現・森ノ宮医療学園専門学校)卒業、鍼灸師資格免許取得。1982年、カリフォニア州サンフランシスコに渡米。1985年、Canada College ビジネスホテルマネージメント科を卒業。1988年、サンフランシスコ東洋医科大学卒業。1989年、カリフォニア州鍼灸漢方薬剤師免許取得、ホリスティクヘルスセンターを開院。1995年、(株)ホリスティクランドを設立、Menlo Park分院を開院。1997年、全米空手道選手権優勝。2007年、サーフィン日本人最大ウエーブ記録達成(10m)、沖縄松林流空手道五段、山根流古武道三段、S.F.樽神輿実行委員、Odyssey中学教員。

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