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教卓の向こうから(3)谷口剛志先生
(明治東洋医学院専門学校)

鍼灸マッサージ師の養成施設で働く先生たちが、どのような授業を日々心がけ、またどんな思いで学生に教えているのか――。それを探るべく、このコーナーでは、教育現場の生の声を取り上げていきます。第3回は明治東洋医学院専門学校の谷口剛志先生。教員歴は11年で、整形外科領域の講義・実習、そしてスポーツ鍼灸実習を担当されていますが、今回は趣向を変えて、教員養成学科「症例検討」の授業にお邪魔して話を伺いました。

―――「症例検討」の授業のスタイルについて、教えてください


谷口 すでに鍼灸学科を卒業した有資格者が「学校で自分も教えたい」という目的で入学するのが教員養成学科です。自分自身も初めて教員として授業をしたときに、すごく不安だった経験から、出来るだけ早い段階から実際の授業を想定して3年前から実施しています。

 

この授業では、まず「プレゼンテーター」として電子カルテをスライドに映しながら、症例報告を行います。症例は、勤務先の治療所や附属治療所の臨床実習で治療を担当した症例から選びます。

 

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次にプレゼンテーターの傍らに立って、授業を進行していく「ファシリテーター」を担当させます。ファシリテーターは、症例報告の内容について、聴いている学生達から質問を促す、自らプレゼンテーターに質問をすることで議論を活発にさせ、より深く症例について学ばせる役割が与えられています。


このプレゼンテーターとファシリテーターをそれぞれ経験させることで、学生側・教員側の立場の違いや授業の雰囲気を感じることが出来ます。

 



――「授業の授業」ということで、少し複雑ですが、ファシリテーターが“教員役”で、プレゼンテーターや聴いている学生達から、症例に対する意見を引き出すこと自体が授業の練習になっているわけですね。

谷口 そういうことになりますね。本校では鍼灸学科生の臨床実習でも、全く同じスタイルで症例検討を実施しています。進行役は我々教員になりますが、その実習に教員養成学科生を参加させ、実際の実習現場で「ファシリテーター」を担当させます。実習の総括として、私あるいは鍼灸学科の学生達から「ファシリテーター」の良かった点・悪かった点などのフィードバックを受けるという形です。



――カルテの記載不足や、選穴の理由についての質問が多かったです。


谷口 「治療でどうしてその経穴を選んだのか?」という選穴の理由については、いつも議論が盛り上がります。カルテは用紙だけ決まっていますが、どう書くかは全くの自由なのでプレゼンテーターの個性が出ます。今日観ていただいて感じられたかもしれませんが、プレゼンテーターには、もっとポイントを絞って発表して欲しいと伝えています。そこがなかなか難しく、結局は患者の既往歴、症状、経過など、カルテに沿ってだらだらと読んで終わっています。そういうプレゼン方法も含めて、良い発表だったかどうか、皆でディスカッションしながら、お互いの意見をフィードバックしていきます。

聴いている学生から質問がどれぐらい挙がるか?は、ファシリテーターの質問の仕方一つで変わってきます。今日の授業でもありましたが、「『これは違う』という意見は何かありますか?」という否定的な質問の仕方だと、みんな手を挙げにくくなります。そうではなく、具体的なポイントに絞って「みなさん、この点についてはどのように考えますか?全員、同じ意見ですか?」と聴いてあげる方がいろんな質問や意見が引き出しやすくなります。そういうケースは、実際の授業でもよくあることなので、どのように質問を投げかければ、考えさせることが出来るか?実際のリアクションを肌で感じながら学んでほしいと思っています。

 



――授業を拝見して思ったのですが、ファシリテーターにいわゆる「ダメ出し」するときにも、先生は慎重に言葉を選んでいる印象を受けました。

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谷口 私の方からいきなりダメ出しすると、その時は「なるほど!」と思ってもらえても、なかなか身に染みてわかってもらえない。頭ごなしに指摘するのではなく、まず学生から「どのような意図で質問したのか?」「今日の議論のポイントはどこか?また、その設定したポイントが十分に伝えられたか?」という考えを引き出し、その上でアドバイスするという方法を 常に心掛けています。

 

教員養成学科の学生は鍼灸師の免許を持っていて、実際に臨床現場で働いています。ですが、教員の立場になったときに、それをただ単純に伝えるのではなく、いかに学生の考(ニーズ)を感じて、自分達の思いを伝えることが出来るのか?を常に意識してほしいですね。



――先生のそのような授業への姿勢自体が、教員養成学科の学生にとっては、また手本になるわけですね。これからこの業界を目指す人も含めて、最後に一言、お願いします。

谷口 スポーツや美容など鍼灸師が活躍できるフィールドをもっと増やしていく為にも、まずは鍼灸師自身のレベルアップが必要だと思います。国民の皆様や様々な業種の方に鍼灸治療や鍼灸師について知っていただく為にも様々な場面で啓蒙していく必要があります。
これからこの業界に入ってくる人たちにも、そういった気構えを持って知識・技術の研鑽に励んでほしいと思います。

 

 

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