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インタビュー

今、被災地はどうなっているのか?(東松島市)

東日本大震災と福島第一原発事故の脅威にさらされ続けた2011年も間もなく終わろうとしています。小誌編集部は今年7月、被災地の1つ、東松島市を訪れ、樋口秀吉氏(社団法人宮城県鍼灸師会会長)が代表世話人を務める「被災者支援プロジェクトチーム 東洋医療」の活動を密着取材しました。震災発生から丸9カ月、密着取材からおよそ5カ月が経過した、東松島市の今を樋口氏にうかがいました。

――震災発生から9カ月になりますが、先生が活動されている東松島市は今、どのような状況なのでしょうか。


樋口 廃屋の解体やがれきの撤去が進んでおり、目につくところはかなりきれいになりました。損傷の度合いが比較的低い家は修理され、再び入居する人も出てきています。しかし、東名運河を渡った海岸に近い地域では一切の居住が禁止されており、運河の手前、内陸側でも新築や建て替えが禁じられています。


そういうわけで、海岸に近い地域では戸数が大幅に減少しています。例えば、被害の大きかった東松島市野蒜の亀岡地区では、震災前の約460戸が現在約40戸になってしまいました。この辺の地域は商店がなくなり、病院も流失し無医村の状態になっております。また、鉄道の復旧についても絶望的で、JR仙石線の東名・野蒜間は復旧する計画が立っておりません。

 

 

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がれきの多くは撤去されたが、現状では新たに家を建てることができず、集落の人口減少が著しい

 

 
――先生のお宅と治療院はどのような状況でしょうか。


樋口 震災発生時からほとんど変わっていません。立て替えて年内中には入居する予定でしたが、まだ、建設の着工まで行っていない状況です。私のところは、特別名勝松島保護地区に指定されていて文化財保護の規制がかけられており、国の文化庁の許可が必要で、それが下りてこないのです。

 
そんな状況ですけれども、患者さんがちらほら来てくれています。保険診療をしているのですが、まだ一度も申請書を出していない状況です。このまま手をこまねいているわけにもいかないので、現在、仙台市に新しい治療院を開くために準備を進めています。12月中には開院させて、2院体制でやっていこうと考えています。

 

 

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JR仙石線の旧野蒜駅。野蒜・東名間は復旧の計画が立っておらず、仙石線は折り返し運転を余儀なくされている

 

 
――「被災者支援プロジェクトチーム 東洋医療」の活動は避難所がなくなるまで継続するとのことでしたが、その後どのようになっているのですか。

 
樋口 ほとんどの被災者が自宅や仮設住宅に入居を済ませているので、プロジェクトチームの当初の役割は終えたのですが、現在もボランティアの申し込みが来ています。一時期に比べて希望者はだいぶ少なくなったのですが、遠方からの申し込みがあったり、先月は十数人の団体でのボランティアを受け入れました。

 

 
――仮設住宅でのボランティア活動ということで、避難所での活動と何か違いはありますか。

 

樋口 仮設住宅にも様々なボランティアが入って活動しています。大きな仮設住宅群はボランティアも多いですね。ただし、避難所と違って、仮設住宅は被災者にとって「自立への道」なのです。だから、あまり手厚くボランティアをすることは、被災者の自立への動きにブレーキをかけてしまう恐れがあります。やはり人は与えられると、それが当たり前になって、さらに要求するようになってしまうんですね。また、医療ボランティアは、すでに現状復帰している鍼灸院や整骨院の営業妨害になってしまう危険性もあります。


ですので、仮設住宅に全面的に移行してからはボランティアをやらない予定でした。しかし、小規模で交通機関も整備されていないような地域にある仮設住宅は注目されず、まったくボランティアが入っていないところもあるので、11月からはそういうところを調べてボランティアを派遣するようにしています。

 

 

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仮設住宅群は規模や設備など、地域によってばらつきがあるという。これから本格的な冬を迎えるが、窓を二重サッシにするなどの防寒対策が11月になって着手されたところもあるという

 

 
――被災者の方々は仮設住宅に移られて、どのように変化していますか。


樋口 震災直後のような切迫感は薄らいでいますが、その分、今後の生活に対する不安が色濃くなってきました。それぞれの家庭の状況によって不安感もまちまちで、個々人がそれぞれの問題に直面していかなければならないといった感じです。前向きな人はむしろ少数なのではないでしょうか。

 


――避難所で診た患者さんを、その後継続して治療することもあるのでしょうか。


樋口 避難所から仮設に移ると、みなさんバラバラになるので、どこに入居されたのかはまったくわかりません。ただ、一度仮設に行った際、プロジェクトチームの看板を覚えていてくれた方がいて、声をかけてくださいました。看板を立てたり、受付などをしっかり行うことで「医療ボランティアとして、立場を明確にする」ということが活きたんだと思います。

 


――最後に、ボランティアを希望されている人に向けてお願いいたします。


樋口 ボランティアを希望してくださる方がいらっしゃるのは大変ありがたいのですが、「年末年始は家族でゆっくりしたい」「そっとしておいてほしい」というのが被災者の本音です。ですので、年末年始はボランティアの受け入れを停止させていただきたく思います。来年以降もボランティアの受け入れを行いますが、期間や人数をセーブして継続していく予定です。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

 

 

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