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『はじめての鍼灸』重版出来! 記念インタビュー
戦隊ヒーロー出身の鍼灸師 吉田友一

鍼灸の普及に向けて、一般の方に分かりやすく伝えるアイテムが必要だ! という想いから誕生した冊子『はじめての鍼灸』。おかげさまで2019年6月の発行以降、業界内外から好評をいただき、このたび増刷を行いました(重版出来!)。
「たくさん印刷したことだし、もっと多くの方に活用してほしい。参考になりそうな活用法を教えてくれる鍼灸師の先生はいないだろうか......」
そんな編集部の求めに応じてくれたのは、元戦隊ヒーローの肩書きを持つ鍼灸師、吉田友一さん。今回、『はじめての鍼灸』の活用法をテーマに、京都市で治療院を開業している吉田さんにインタビューを行いました。


吉田友一(よしだともかず)
1982年、新潟県長岡市生まれ。2003年、俳優としてドラマデビュー。2004年、テレビ朝日系『特捜戦隊デカレンジャー』にデカブレイク役でレギュラー出演。その後もテレビや映画、舞台などで活躍。2012年、舞台公演中に顔面神経麻痺を発症。ステロイド治療を試みるも治らず、鍼灸治療を取り入れることで完治。この経験から鍼灸師になることを決意し、2013年、早稲田医療学園(現・人間総合科学大学)に入学。国家資格取得後は、沖縄県伊是名島にて地域医療に従事。2018年、京都よしだ鍼灸院開院。2019年、島根大学地域包括ケア教育研究センター技能職員。妻はデカレンジャーで共演した女優の菊地美香。



『はじめての鍼灸』は鍼灸院の経営に役立つ!?

――吉田先生、お久しぶりです。すてきな治療院ですね。

吉田 ありがとうございます。京都の町家を改装し、治療院にしました。2018年11月に開院しましたので、丸2年が経ちましたね。

――月刊「医道の日本」で吉田先生を取材したのが2018年の10月でした(2018年12月号掲載)。あのあと、すぐに開業されたのですか?

吉田 そうですね。物件はもう決めていました。取材を受けたときはまだ東京に住んでおりましたが、その年に結婚した妻と一緒に、京都へ移住しました。

――奥様の菊地美香さんにも以前、取材でお世話になりました(月刊「医道の日本」2020年1月号掲載)。そのときに、女優業の傍ら、治療院の手伝いもされていると聞いてびっくりしました。

吉田 妻のサポートは大変ありがたいですね。WEBサイトの管理、受付業務、患者さんのご案内まで、施術以外の部分は妻に任せています。本当に感謝しております。この場をお借りして妻へお礼させていただけますか(笑)。
いつもありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

――女優さんが受付をしている治療院とは、相当珍しいですね。

吉田 そうかもしれませんね(笑)。もちろん、女優・声優の仕事もありますので毎日ではありませんが、時間のあるときはスタッフとして頑張ってくれています。


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京都よしだ鍼灸院の治療室



――今回は『はじめての鍼灸』の活用法をおうかがいしたいと思います。吉田先生には『はじめての鍼灸』の誌面にもご協力いただいています。

吉田 はい、7ページに僕のことが紹介されていますね。

――元戦隊ヒーローが治療家に転身という、特徴的なご経歴をもつ鍼灸師として紹介させていただきました。このインタビューでは、「紹介されているから」ということを抜きにして、『はじめての鍼灸』がどのように活用できるかを語ってほしいのですが。

吉田 承知いたしました。僕は『はじめての鍼灸』が発行されてから、これまでに250部以上注文しています。

――そんなに! ありがとうございます。

吉田 いえいえ。この冊子は鍼灸院の経営に役立つと思っていますから。

――経営に役立つ、ですか。

吉田 はい。当院では、初診の患者さんには『はじめての鍼灸』を必ず配布するようにしています。
京都で開業して2年経過しましたが、おかげさまで多くの患者さんにお越しいただいています。そのなかには、鍼灸を初めて受診される患者さんも少なくないです。これまで、まったく鍼灸治療を受けたことのない患者さんが、それこそ"はじめての鍼灸"に当院を選んでくれるのは、とても嬉しいことです。
僕は治療のときに、今日の治療はどういった狙いで行うのか、治療後の過ごし方などについて説明しています。初診の患者さんや、鍼灸が初めての患者さんには、特に丁寧な説明を心がけています。しかし、そこで安心せずに、今日の復習的な意味合いで『はじめての鍼灸』を配って読んでもらうようにしています。
この冊子には、鍼灸を凝縮したエッセンスが、とてもわかりやすく、シンプルに書かれていますから。おうち時間で納得というか、鍼灸のことをより理解してもらうにも、最適です。

――『はじめての鍼灸』を患者さんへの説明に役立てているわけですね。

吉田 鍼灸師が患者さんに対して行う説明を、『はじめての鍼灸』が補完してくれると思っています。書物によるフィードバックですよね。
鍼灸師が治療そのもので「受けてよかったな」と患者さんに思ってもらうように頑張るのは言うまでもありませんが、「出版物」からの情報や言葉も利用できたら、よりいっそう効果があるかもしれません。
一人の患者さんに「受けてよかったな」と思ってもらうことに成功したら、その人が周りにも体験を話してくれたり、広めてくれたりする可能性も出てきます。

――なるほど、そうすると新しい患者さんも来てくれるかもしれませんね。

吉田 当院の場合、地元の患者さんがまったくいない、ゼロベースから開業しましたので、新しい患者さんに来てもらうという点で役立っています。
京都で治療院を開業するにあたって、当院のコンセプトを含め、鍼灸の効果や東洋医学のことなどをまとめた冊子を自分でつくろうと考えていたんです。その矢先に、『はじめての鍼灸』への協力のお話をいただきました。
実際に出来上がったものを読んでみると、鍼灸の基礎知識、歴史のこと、道具のこと、養生法のことなどが、幅広く、やさしい文章で書かれている。イラストもかわいいですし、すぐに気に入りました。自分で一からつくらなくても、こちらを配ればいいか、と思い直しまして。それで現在も活用させていただいている、という感じですね。



鍼灸師として、知らない場所でどれだけできるか


――少し話は変わりますが、なぜ東京から京都に引っ越されたのですか。

吉田 純粋に京都に憧れがありました。この建家もすごく歴史があって、築年数は100年を超えます。多くの改装を重ねているのでしょうが、昔ながらの日本の家屋という雰囲気が好きです。

――京都は、前に住んでいたとか、ご親戚が住んでいらっしゃるとかではないのですよね。

吉田 全くないですね。

――土地勘のない場所や、知り合いがいない場所で開業するのはハードルが高いように思うのですが。特に京都は難しそうな印象があります。

吉田 確かにその地域ならではのルールのようなものはあるかもしれません。でも、そのルールにしっかり則ってやりさえすれば、周囲からは特に何も言われないですね。僕はむしろ、積極的に地域に溶け込むようにしています。地域の防災活動を始め、行事にはできるだけ参加しています。昨年は、地区の組合長兼体育委員も任されました。

――引っ越して2年で地区の組合長ですか!

吉田 組合長は1年ごとの交代制で、地区の住人が順番に担当していきます。代替わりの時点で次は僕が当番だったので、素直にお引き受けいたしました。
地域の人たちとよい関係を築くのも、鍼灸院の経営において重要なことです。経営面に限らず、鍼灸を広めていくという意味でも、鍼灸がどういうものなのかを地域に伝える機会を増やすことは理想ですよね。


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町家が並ぶ住宅街にある京都よしだ鍼灸院



――つい疎かにしてしまいがちですが、地域交流は大切なのですね。

吉田 京都に引っ越してきた理由、もう一つあります。新しい挑戦は、東京から離れた場所で始めたかったんです。都内で開業していた頃は、俳優をやっていました。患者さんの多くは俳優仲間やスタイリストさん、芸能関係の方たちが中心でした。経営的にも問題なく、むしろ患者さんは多いくらいでしたが、拠点を東京に置いたままだと、元の業界に甘えてしまう気がしました。
俳優業をやめて、鍼灸師として新しい治療院を開業するのなら、まったく知らない土地で、どれだけできるかチャレンジしてみよう。そういう気持ちが強かったです。
一昔前の言葉を借りるなら、「男のロマン」ですね。

――まったく知らない場所でのチャレンジに価値がある、ということですか。

吉田 本気で鍼灸師をやっていくには、現状維持よりも、あえて難しい挑戦を自分に課すほうが、成長できると思いました。甘えは自分にとって危険だと。

――吉田先生は、沖縄県の離島でも訪問鍼灸に取り組んでいらっしゃいますが、その活動にも当てはまりそうな考えですね。

吉田 そうかもしれませんね。沖縄にも、最初は何も知らないままに飛び込んでいきましたから。離島での訪問鍼灸は、今も継続しています。昨年は新型コロナウィルスの影響で止む無く渡航が中止となりました。一昨年は妻と一緒に沖縄県の伊是名島と渡嘉敷島に行きました。
僕は、沖縄本島からフェリーで1時間のところにある伊是名島で活動していました。ずっとお世話になっていた島の診療所の山城啓太先生が渡嘉敷島に移られたので、一昨年は両方の島を訪ねました。島のおじぃとおばぁに妻を紹介し、久しぶりに訪問鍼灸で島を回ることができました。
その際に、『はじめての鍼灸』を持って行って、山城先生に渡したんですよ。ですから、伊是名島と渡嘉敷島の診療所には『はじめての鍼灸』が置かれています。


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医師の山城啓太氏(右)と渡嘉敷診療所前で



――離島の診療所にも! それはすごいです。

吉田 山城先生は離島の医師です。山城先生を始め、他の医療職に『はじめての鍼灸』を渡すと評判がいいですよ。患者さんに配る以外にも、もう一つ大事な活用法が医療職への配布なんです。



『はじめての鍼灸』で医療職に鍼灸をPR!


――鍼灸院の患者さん以外に、医療職の方にも配布されているんですか。

吉田 はい。僕の場合、医師や医学部生が中心ですね。

――詳しく聞かせてください。

吉田 僕は昨年から、島根大学の地域包括ケア教育研究センターの技能職員として働いています。同時に、島根大学大学院で生活習慣病、特に高血圧症についての基礎研究に従事しており、地域包括ケア教育研究センターでは健康調査・検診業務を行っています。

――お住まいの京都から島根って、近くないと思うのですが......

吉田 近くはないですね(笑)。僕は運転が好きなので車で移動しています。途中、温泉で小休憩を挟みながら、島根へ乗り込むのがセオリーとなっています。
大学院では、医学科講義といって、1限から学部生と一緒に講義を受けることもあります。現在は、コロナの影響でオンライン講義が中心ですが。
教授や学部生、院生には自分から積極的に関わるようにしています。学内で鍼灸師は特に珍しい存在なので、教授や医学生から、鍼灸のことを教えてほしいと頼まれることもあります。そういうときに、果敢に『はじめての鍼灸』を配っています。

――果敢に(笑)。先生方の反応はどうですか。

吉田 評判いいですよ。ある先生は「僕は鍼灸が大好きだよ。『はじめての鍼灸』読んだけど、よかったね。僕も知り合いに配るから、あと2、3部くれない?」と言ってくれたことがあります。

――なんと! 大学の先生自ら配ってくれているのですか。

吉田 島根大学には、鍼灸に理解を示してくれる先生が多いですね。疼痛ケアに鍼を取り入れている医師もいますし、漢方外来も設置されていますので、鍼灸や東洋医学との親和性が高いです。僕が教授陣に鍼灸治療を行う機会もあります。教授の先生から「疲れがたまっているから、鍼を打ってくれないか」とオーダーが入ります。
身近に医師やメディカルスタッフがいる環境なので、鍼灸師としての知識や腕を試されます。


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島根大学病理部での病棟実習で、腫瘍の組織像を観察。写真左は医師の長瀬真実子氏



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島根大学地域医療研究会の推薦図書コーナーには、『はじめての鍼灸』や月刊「医道の日本」が設置されている



――鍼灸師として成長できる環境なのですね。同時に、周囲の医師に鍼灸をPRできる機会でもあると。

吉田 そうですね。一般の方だけでなく、医療職に対しても鍼灸をPRしていくことは重要だと思っています。
昨年5月には、『はじめての鍼灸』を使って、島根大学でランチョンセミナーを開催しました。鍼灸にはどのような効果があるのか、患者さんにどのようにアプローチするのかといった講演をしたのですが、そのときに資料として『はじめての鍼灸』を配りました。医学部生や看護学部生らが20人ほど参加してくれました。
『はじめての鍼灸』は、治療院に来てくれた患者さんに配るだけでなくて、他の医療職への説明資料にもなる。僕の場合、そちらの使い方ができることが、とても助かっていますね。



鍼灸の普及は人と人が出会うことから始まる


――離島から大学まで、さまざまな場所で『はじめての鍼灸』を使っていただけて嬉しい限りです。

吉田 こちらこそ、助かっています。サイズ感も丁度よいですね。

――吉田先生は現在、京都と島根をどれくらいの割合で行き来されているのですか。

吉田 以前は、月の前半2週間を京都で過ごして、次週を東京、最終週に島根へ移動というサイクルでした。現在はコロナの影響で、だいぶ移動は制限されています。昨年はさまざまな変化が訪れました。講義はすべてオンラインで、中山間地域でのフレキシブル実習も中止となり、これもオンライン開催でした。

――東京の患者さんも診ているのですね。

吉田 以前から東京で診ていた患者さんがいます。2018年秋口から東中野にある堀歯科診療所内に併設されているサロンで患者さんを治療しています(編集注:堀歯科診療所は2021年に移転し、北青山のサウラデンタルクリニックとして開院)。院長の堀滋先生は、僕の活動を高く評価してくれて、東洋医学や鍼灸にたいへん理解のある先生です。
僕のなかでは、京都・東京での臨床、沖縄での地域医療活動、そして島根での研究と、すべてつながっています。

――さまざまな場所で、臨床と研究を行うことに意味があると。

吉田 僕の場合はそうですね。都会の方からすると、遠く離れた沖縄県の離島や島根県での活動はイメージしにくいかもしれません。でも、そういった地域にこそチャンスがあります。確かに都会に比べたら人は少ない。けれども医療を必要としている患者さんは必ずいて、奮闘している医療従事者がたくさんいます。鍼灸も何らかのかたちで、そこに貢献できるはずだと僕は考えています。

――鍼灸師の地域での活動が多くなれば、それだけ鍼灸を知ってもらえる機会も増えそうですね。

吉田 やはり"外"に向かって発信していくことです。最近は発信ではなく"発動"していくと周囲には言っています。治療院の中や、業界内で研鑽を積むのも重要ですが、他の医療職がいる場所やアウェイで活動することは、鍼灸師としての成長につながります。 すべては人との出会いから始まりますし、鍼灸の普及もそうだと思います。自身の活動を続けて、鍼灸の普及に貢献したいです。

――『はじめての鍼灸』の活用法から鍼灸の普及についてまで、たくさんのお話をありがとうございました。臨床に研究に、ますますの活躍を期待しています!

吉田 ありがとうございます、がんばります!




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