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私たちの生活は、股関節屈曲であふれている

近年、さまざまな研究で、長時間の座りっぱなしは身体に悪影響を及ぼし、糖尿病、脳梗塞、心疾患、がんなど、重大な病気の原因となることが分かってきました。こういった健康リスクを避けるために、治療家はどういった対策をすれば良いでしょうか。また、患者にどういったセルフケアを勧めれば良いでしょうか。本記事でご紹介します。


長時間の座位がもたらす悪影響

デスクワークや車の運転、ソファでくつろぐ――。私たちの生活の中で座ることに費やされる時間は少なくありません。

長時間にわたる座位。

それこそが、さまざまな疾患の要因となり、脳や心臓のリスクファクターにもなり得えます。このことは「医道の日本」2017年2月号でも紹介しました。

長時間の座位が運動器、特に股関節の筋群にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

書籍『強める!殿筋 殿筋から身体全体へアプローチ』から考えていきましょう。


姿勢筋と相動筋

筋肉を機能的に2つのグループに分類することができます。1つは「姿勢筋」、もう1つが「相動筋」です。

姿勢筋は「重力に抵抗する役割を担い、安定させる」「負荷がかかると短縮する傾向を持つ」という特徴を持ちます。これにあてはまるのが、腸腰筋です。

一方、相動筋は主な機能が「動かすこと」で、「弛緩した結果として機能が抑制される傾向にある」のが特徴です。これにあてはまるのが、殿筋です。

姿勢筋と相動筋の関連性については、本書ではこう書かれています。


硬くなる傾向にある筋肉(姿勢筋)が固縮すると、弱くなる傾向にある筋肉(相動筋)の働きを阻害され、弛緩し筋力低下が起きる



これが、そのまま腸腰筋と殿筋の関係性にあてはまるということになります。




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『強める!殿筋』p24-25より





座位での腸腰筋と殿筋

股関節を解剖学的な視点から考えると、座位では股関節は常に屈曲位を強いられるといえます。

つまり、腸腰筋が常に収縮して、短くなった状態にあるわけです。この状態が続けば、やがて腸腰筋はその状態で固まってしまいます。また、座位では、股関節伸筋の代表である殿筋は、長くなり、弱まります。

前述の姿勢筋と相動筋の関係性からも、座位によって腸腰筋が固縮することで、腸腰筋の働きも阻害され、筋力の低下が起きることが考えられます。

さて、腸腰筋が硬く短くなり、殿筋の筋力低下が起きることで、どんなことが起きるのでしょうか。

本書では、その一例として歩行への影響を紹介しています。


歩行するとき、股関節は自然と伸展しなければならない。しかし、緊張した機構が、股関節の自然な伸展を制限する。それを補うために、寛骨はさらに前傾する。それは大殿筋の活動スイッチをオフにし、ハムストリングの活動スイッチをオンにする。同時に、反対側の寛骨はさらに後傾する。



さらに、これらの代償動作の結果として、引き起こされる腰椎への影響についても、こう解説されています。


腰椎の前弯が増加し、第4・第5腰椎間、第5腰椎・第1仙椎間の椎間関節への負荷の増加、それに伴い関連する椎間板の突出による神経根への負荷も増加する




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『強める!殿筋』p44-45より



筋トレだけでは機能は向上しない

このように、代償動作の結果から痛みや機能不全が起きたとき、治療者はどこに、どのようにアプローチするべきなのでしょうか。

著者のJohn Gibbonsは、筋力低下を起こしている筋(この場合は殿筋)に単に筋力トレーニングを行うだけでは、機能向上は起きないとしています。

相反抑制の理論を用いて、

「筋力低下をした筋肉の強化する前に、まず筋緊張や伸張の度合いを正常に戻すことから始めなければならない」

として、筋緊張を緩める方法として股関節屈筋群へのマッスルエナジーテクニックや筋膜リリーステクニックを紹介しています。




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『強める!殿筋』p102-103より




身体のなかで最も軽視されている部位「殿筋」

本書のまえがきの中で著者のJohn Gibbonsは、殿筋について「理学療法において最も軽視されている部位の一つである」と述べています。

近年、筋膜理論や体幹トレーニングが注目されるようになり、症状のある部位だけにアプローチするのではなく、根本的な原因を見極め、アプローチする考え方が浸透してきているようです。

本書は、大殿筋や中殿筋の機能解剖学や筋膜理論から姿勢や歩行を分析し、さまざまな検査によって殿筋の機能を評価する方法を紹介しています。

さらに、機能不全を起こしている殿筋やその拮抗筋である腸腰筋の機能回復を促すためのマニュアルセラピーや、殿筋が原因で起こる腰や下肢の痛みについて解説し、殿筋群の安定性を高めるためのエクササイズ方法を収録。


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『強める!殿筋』p160-161より




殿筋という1つの筋肉から出発して、痛みや機能不全の根本を探る方法を本書は提示してくれています。

治療の幅を広げるためのヒントが詰まった本書をぜひ参考にしてみてください。




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