カヌースラローム世界選手権帯同レポート

松岡治療院・整骨院 松岡優

  私がカヌー競技をサポートするようになったのは、2007年に秋田県で国体が開催されるにあたり、40競技にトレーナーを帯同させて選手の競技力向上を図り、天皇杯優勝を勝ち取ろうとする活動があった頃からです。秋田県は当時からカヌースラローム競技で好成績を挙げていました。さらなる高得点を狙うために、当時秋田県トレーナー部会の会長をしていた私が競技担当者となりました。国体や日本選手権、シーズン初めの富山ジャパンカップなどに帯同して秋田県選手をサポートしているうちに、2004年のアテネオリンピック予選会で初めて日本代表帯同トレーナーの要請がありました。2007年の北京オリンピック予選(ブラジル)、翌年のアジア選手権などでの帯同を経て今日に至っております。  
  今回は2014年9月10日〜23日に開催されたカヌースラローム世界選手権で日本代表に帯同をした活動内容をレポートします。

カヌースラローム競技について

  今回の世界選手権はアメリカ・メリーランド州オークランドのカヌースラロームコースが舞台となりました。自然国立公園の中にあるスキー場の一角に作られた人工のコースです。本来のレースは自然の川で行われますが、シドニーオリンピックから人工コースで行われるようになり、2020年東京オリンピックも人工コースが使用される予定です。  
  競技は2種目で、体育座りのように長座して漕ぐK(カヤック)と、カナダの原住民が移動に使った正座で漕ぐC(カナディアン)があります。約200メートルの距離をスキーの回転競技のように21〜24本のゲート(ポール)をタッチ(触ると2秒、不通過で50秒加算)しないでタイムを競います。競技時間は100〜110秒ほどです。  
  静水(流れのない川)と違って落差があり、岩や障害物によってコースは湾曲しています。コースの中にはアップゲート(ゲートを流に逆らって下流から上流に進む)もあります。ボートの平衡感覚を保つのが難しく、重心がぶれない体幹の強化が必要です。また、舟には舵がないので、パドルを水面下で舵のように微妙に動かしてコース取りをします。ストップや前進、転倒防止の繰り返しなので前腕筋群や手首、上腕筋群も酷使します。選手は男子も女子も腹筋が割れています。  
  このように、常に変化する川の流れの中での競技であり、各競技日でゲートセッテングも変わるため、各国とも時差調整も兼ねて大会の2〜3週間前には現地入りします。そして全コースを5〜6に区切り、1つの区切りを4〜5回、納得のいくまで実際のコースで繰り返し練習します。  選手は比較的神経質な性格が多く、宿舎に帰ると個人行動をする選手をよく見かけ、陸上の投てき系の選手にとても似た要素があるように見えます。

今大会の活動内容

  この世界選手権は選手9人、コーチ4人、トレーナー1人の総勢14人のメンバーで参加し、コンドミニアム形式のリゾートホテルの滞在となりました。私の役割は、選手全員の健康管理と鍼灸マッサージを駆使してのコンディショニングです。コンドミニアム形式は食事がないので、常に選手の食事内容をチェックすることが難しく、コンディショニングの把握に苦労しました。選手とは1日2回の練習時間の合間にできるだけ会話を多くし、カヌー練習中はコースに近い岩の上で動作を注意深く観察し、治療時間をいつもより長くしてコミュニケーションを取りました。  
  私の方針で、就寝中以外で部屋にいるときは常にドアを半開きにし、誰でも分かるように日本語でルームプレートを貼っています。選手がいつでも気軽にマッサージルームである私の部屋に遊びに来て、相談ごとがあれば応じ、食事の誘いがあれば一緒に出かけてコミュニケーションを取るためです。ドアの件は海外のホテルでは物騒なのでよく注意されますが、お構いなしにやっています(あまり真似をしないで下さい)。  
  治療に関しては、大きなケガをしている選手は午前練習と午後練習の間の、できるだけ早めの時間に1回目の治療を入れます。それ以外は基本的には練習後に鍼と灸、スポーツマッサージ(以下、マッサージとします)を中心に40分ほど施術し、時間の無駄をなくすために早い者順で予約制にしています。  
  また、今回のようにカヌースラローム遠征は外食が多いので、スーパーマーケットや特にホテル付近のレストランをグーグルマップで検索します。自分で真っ先に食べてみて、味と値段をチェックして選手に知らせるのも私の大事な仕事です。中華のバイキングは選手に大変喜ばれるので、細かく調べます。今回の遠征では6ドルのランチを見つけて、ミラン・クバンコーチまでもが感激し、感謝されました。  
  試合当日はビデオ分析班と一緒に朝7時にホテルを出発し、控えテントに一番乗りしてテーブル、治療用ベッドなどをセッティングします。選手が各自のスタート時間に合わせて会場入りするのを待って、必要に応じてストレッチやマッサージを行います。もちろん、予選日は2レース、次の日は準決勝、決勝と各1レースがあるので、希望する選手だけに試合直後のクールダウンのマッサージを行います。

試合前日のハプニング

  今回の遠征は大きなケガもなく順調な仕上がりで試合前日を迎えていました。当日も少し余裕を持ってホテルのベランダで読書をしていたら、佐々木将太選手が腰に手を当てて部屋に入ってきました。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2015年2月号」でお読みください。