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即実践! 受療率4%時代の鍼灸院経営術

富田秀徳

【「孤独」と「不安」しかなかった 開業当初の現実】

  とにかく電話が鳴らない。
  なぜだか電話が鳴らない。
  とても不安になる。
  とても孤独になる。
  とても落ち着いてなんかいられない。

  あまりにも電話が鳴らないので、さすがに電話機が壊れているのかなと思い、自分の携帯電話から治療院に電話してみると、
  「ルルルルルルル……」
  ちゃんと鳴るではありませんか。
  続いて、ちょうど同時期に開業した元クラスメイトK先生の治療院(今では不妊専門で有名な繁盛治療院)に様子うかがいがてら電話してみることにしました。
  「もしもし、K治療院です。ご予約でいらっしゃいますか⁉」
  電話越しですが切羽詰まった緊張感だけは感じました。とっさに、
  「ええ、近所の者ですが、今日これからうかがいたいのですが……」
  茶目っ気出して冗談のつもりが、
  「ええっ! 今からですか、ありがとうございます‼」
  こちらが名乗り出る間もなく、受話器の向こうの安堵の表情が想像できました。
  あまりにリアルにテンションが上がっているようだったので、さすがに慌てて、
  「オレッ、富田だよ、富田。調子どうかと思って電話してみたよ」
  正体を明かすと、しばらく無言のあと、かなり落ち込んだ様子で、
  「そういうのマジ勘弁してくださいよ……」
  普段は温厚で柔和なK先生に本気で嫌がられたのを覚えています(今だから笑って話せますが、当時かなりたちの悪いシャレだったなと今さらながら反省しています)。
  こうした開業当初の藁にもすがりたい気持ちは、当院やK治療院に限ったことではなく、多くの鍼灸専門治療院が経験することです。

【我が国における鍼灸マーケットの現状】

  我が国における鍼灸の受療率は約7〜8%と長きにわたって低位で推移し、2013年では5.6%、2014年では4%台にまで落ち込んでいることはよく知られた事実です。また、知人の税理士曰く、開業後3年でリタイアする鍼灸院は8割にのぼるそうです。
  さらに、毎年4000人強の新人鍼灸師がどんどん輩出される時代です。普通に考えれば非常に厳しいマーケット環境であることは容易に察しがつきます。
  誤解を恐れずにいえば、国民の大多数は「鍼灸を必要としていない」現状があります。
  しかし、悲観することはないと私は思っています。なぜなら、裏を返せば残り96%も伸びしろのある、大きな可能性を持つブルーオーシャン(チャンスの多い)マーケットであるといえるからです。要は単なる数字データをどちら側から解釈するかの問題です。
  また、受療率の低さも決して「鍼灸が大嫌い」という理由ではなさそうです。一般ユーザーにとって鍼灸とはいまだ「よく分からないもの」というのが正直なところのようです。すなわち「この得体のしれない“鍼灸”というもの」がもっと明確に理解されさえすれば、この大きな市場は動き出すのかもしれません。
  もちろん今までも業界としていろいろ試行錯誤し、パブリシティや施策は試みられてきたのだろうと思いますが、結果からいえば効果は極めて限定的であったといわざるを得ません。

【これから始まる「そろばん」のお話】

  「ロマンとそろばん」──東京R不動産の林厚見氏がいっていた言葉ですが、筆者にはとても印象深く残っています。
  「ロマン」を熱く語る鍼灸師はとても多いように思いますが、「そろばん」を持ち合わせている鍼灸師は総じて少ないように感じます。
  「鍼灸師は食えない」
  いつからか業界内でよく耳にする言葉ではありませんか? 一方で、順調に経営し繁盛している鍼灸院も数多く存在しています。
  いまだこの業界では「そろばん」の話をすること自体、少しタブーな感じがあるようです。しかし、実社会はそれほど甘くはなく、きちんと経営できていない多くの鍼灸院は退場させられてしまいます。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年1月号」でお読みください。