赤羽氏法による電気鍼療法

養命閣鍼灸院院長、日本赤羽会会長 清水完治 

  赤羽氏法とは、故・赤羽幸兵衛先生が1950年〜1953年までに考案した知熱感度測定法、皮内鍼法、シーソー法の3法をいう。今までにない治療法として、国内、国外の医療業界で注目された。1953年5月に東京の教育会館で赤羽氏法の講演会が開催されたとき、日本の鍼灸を視察に来ていたドイツのシュミット博士は、赤羽氏法の理論と実際(治療法)とが一致していることに関心を寄せられた。この理論と治療法を赤羽氏法と名づけようと最初におっしゃったのは、故・間中喜雄博士である。筆者は2013年、赤羽氏法ができて60年になる節目の年に、DVD『よくわかる! 赤羽式皮内鍼法』(医道の日本社)を発行した。

【赤羽氏法とは】

  前述した通り、赤羽氏法は知熱感度測定法、皮内鍼法、シーソー法から成る。皮内鍼はよく知られているが、知熱感度測定法、シーソー法は知らない読者も多いと思う。端的にいうと、知熱感度測定法は異常経絡を探し出す方法で、シーソー法は疼痛やこりがある局所の対称点に瀉法鍼を行う治療法である。皮内鍼法を含め、その3法の概要を説明する。

1. 知熱感度測定法

  赤羽先生は「人間が病気になると皮膚の一部に感覚の異常が起こる」という仮説のもとに研究を進めた結果、局所反応点の触覚と痛覚は鋭くなり、温覚と冷覚は鈍くなる現象を発見。これをもとに手足の指端井穴に線香の熱刺激を加え、左右差を比較する方法を考案した。具体的には、各経絡の末端である井穴に線香または電子式知熱感度測定器を用いて、0.5秒の間隔で熱刺激を加え、何回目の熱刺激で患者が熱感を訴えるかを左右で比較する。実際、測定器の知熱部を井穴にあて、スイッチを入れると初めは熱刺激を感じないが、急に「チクン」と感じてくる。測定は肺経の左少商から始まり、右少商に移動し、膀胱経に終わるまでの十四経絡である。特殊経絡として膈兪経と八兪経が加えられている。経絡、経穴は左右対称であり、経絡に異常が起きると、左右の井穴の一方に熱低下が見られるため、この熱感度を記録する。左右差が2倍以上を異常経絡と呼んでいる。
  測定の結果、左右差が2倍以上ある異常経絡(例:肺経の少商に0.5秒の間隔で熱刺激を加えたところ、左は5回目で熱いと感じたが、右は16回でようやく熱感を訴えた。その場合、この患者の肺経は異常経絡と判断)の、数値の多いほうの兪穴に皮内鍼、数値の少ないほうの兪穴に瀉法鍼を行う(肺経の少商で右が16回、左が5回の場合、右肺兪に皮内鍼、左肺兪に瀉法鍼)。

  募穴を治療する際は、数値の多いほうに皮内鍼、少ないほうに瀉法鍼を行う。正中線の募穴を治療する際は皮内鍼のみ。手足の要穴を治療する場合は、数値の多いほうに皮内鍼、少ないほうに瀉法鍼を行う。治療5分後に左右差のあった異常経絡のみ再測定する。
  なおこの知熱感度測定は当初、線香のみで行っていたが、赤羽先生が線香を先端につけ加える圧力一定のバネ式測定を考案。その後、医道の日本社でデジタル式のニクロム線型を、ニクロム線が切れにくいテフロンで覆った清水式知熱感度測定器を東京電子医療が発売していた。現在はこれら小型の電子式知熱感度測定器が発売されておらず(製造中止)、温灸器のバンシン(株式会社チュウオー)と、川本正純氏(関西医療大学教授)が開発した、光線の熱刺激で測定する中型の知熱感度測定器(株式会社ジー. エム. イー)を用いている。
  線香でも行えなくはないが、線香を井穴に軽くあてて熱感を調べると痕が残る。行う際は患者へのインフォームド・コンセントが必要である。
  川本氏は独自の新しい井穴とそれに合わせた背部の経穴・兪穴を発表している。第1指の尺側井穴:中膂兪、第2指の尺側井穴:気海兪、第4指の橈側井穴:大杼、第2趾の内側井穴:関元兪、第3趾の内側井穴:督兪、第4趾の内側井穴:風門である。

2. 皮内鍼法

  皮内鍼は長さ1㎝ほどの短い鍼であり、太さは0〜2番で極めて細く、鍼先とは反対の端に小さい頭がある。皮内鍼は疼痛やこりの圧痛点に刺入するとすぐに効果がある。その手技は簡単であり、刺激量は一定している。
  皮内鍼専用ピンセットで皮内鍼をつまみ、皮膚面に2〜3㎜ほど水平に刺入する。このときピンセットを持つ手の反対の母指と示指で患者の皮膚を少し引っ張っておくと刺入しやすい。皮内鍼の刺入方向は皮膚および筋肉の伸縮作用を妨げない方向に刺入する。

  その後、5㎜四方くらいの絆創膏を皮内鍼の頭の下に貼る。これを下貼りと呼んでいる。下貼りを行うことで、鍼が固定されて安全である。この下貼りと皮内鍼の頭の上を覆うように、幅1㎝、長さ1.5㎝くらいの絆創膏を貼る(上貼りと呼ぶ)。皮内鍼の固定日数は5〜7日まで問題なく、入浴などそのまま日常生活を送っていただき、次の来院時にはがす。
  前述のように皮内鍼は知熱感度測定による治療でも行われるが、腰痛の治療などでは、患者に痛みを再現させる姿勢をとってもらい、圧痛点に用いてもよい。その際、腹臥位で皮内鍼を刺入し、起き上がらせて痛みの軽減を確認する。まだ痛みが残っているときは、その部位に印をつけ皮内鍼を入れ、絆創膏で固定する。そのほかの疾患も同様の方法で行う。

3. シーソー法

  シーソー法は赤羽先生が提唱するシーソー現象に基づいている。シーソー現象とは、怪我をしたり病気になったりするとその局所の機能が著しく低下、対称点である反対側の機能は逆に上昇する現象である。赤羽先生は局所反応点の知覚は触覚と痛覚が鋭くなり、温覚と冷覚は鈍くなるのに対して、対称点は逆現象で触覚と痛覚は鈍く、温覚と冷覚は鋭くなることを発見した。
  筆者は知熱感度測定に基づき、皮内鍼を固定したところとは反対の経穴を治療したり、あるいは疼痛やこりがある局所の対称点に治療したりしている(瀉法鍼と呼ぶ)。
  瀉法鍼に用いる鍼は当初、博鍼社の10番鍼、長さ7㎜のものを用いていたが、現在は製造中止となっており、バネ付き三稜鍼を用いている。しかし、5〜10番鍼であれば通常の鍼で代用可能である。その場合は直刺で、速刺速抜する。
  なおシーソー現象は体の左右、前後、内側・外側にも起きる。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年2月号」でお読みください。