新連載 チクチク療法の臨床

ナガタクリニック院長 長田 裕

  チクチク療法(正式名:痛圧刺激療法)は当初、無血刺絡と呼んでいたが2014年の3月以来、チクチク療法という呼び名に変えている。
  無血刺絡は2004年3月に始まった。その後2007年に一般書『無血刺絡療法』(河出書房新社)を発刊したが、2014年1月に完売絶版となったところで「チクチク療法」と名前を変え、内容も増補改訂して出したのが『自分でできるチクチク療法』と『チクチク療法の臨床』(ともに三和書籍)である。
  チクチク療法は、2つの主要テーマに分かれる。1つはチクチク刺激とデルマトーム理論。もう一つは、養生法としての「呼吸・運動・食事・日光・体温・睡眠・心の持ち方・自己チク療法」などである。このなかで自己チク療法とは患者自身がチクチクを行う方法を指している。
  長所は、①道具が簡単、②コストがかからない、③治療が短時間、④危険性は今までない(NO HARM)、⑤その場で改善確認できる疾患が多数ある、⑥患者自身が治療者になれる、などである。
  チクチク治療の目的は、自然治癒力を引き出すきっかけ作りである。チクチク刺激によって副交感反応誘導から自律神経、血流、ホルモン分泌、排せつ反応などを調節・改善・促進させ、自然治癒力が向上するのだ。

【チクチク療法の道具】

  「自分でできるチクチク療法」の道具にはシャープペンシル、インクの抜けたボールペン、爪楊枝などを紹介しているが、治療家は(株)カナケンから販売されている長田式器具を使っている。しかし今では、指先や爪先などを使うことも可能である。基本は痛圧刺激である。
  では、どこをチクチクするのかというと、それはデルマトーム理論を理解する必要がある。それについては、あとで簡単に説明したい。筆者はこれを毎日滅菌消毒し、1人1本の使用で治療に当たっている。



【関連書籍】
▼『医道の日本2016年2月号』
https://www.idononippon.com/magazine/2016/20162.html

【チクチク療法の原点】

  チクチク療法の原点は刺絡であり、無血刺絡とは「血を出さない刺絡」という意味で命名した。11年前、安保徹氏の著書『「薬をやめる」と病気は治る』(マキノ出版)に、鍼の効果は「チクン」とする痛みにあると書かれていた。もし人体に刺入しなくても、痛み刺激だけで効果があるなら、筆者は理想的な治療法になるだろうと考えた。刺絡はご存知のように注射針を使って少量の出血をさせる瀉血治療のことである。しかし、効果はというと「チクンの痛み」によるものなのか「瀉血そのもの」によるものなのか、はっきりしない。
  その頃、筆者が脳外科医時代に使っていた「刺抜きセッシ」を思いついた。そして、それを使って試行していくうちに、今までの医療では治せないとされた多くの疾患に、すばらしい効果があることが判明した。

【チクチク療法の安全性】

  さて、チクチク療法の安全性について、まず自身の体験談を紹介する。
  今から約35年前、背中へ鍼治療を受け、肺に穴が開く気胸になった。いわゆる医療ミスにより1週間仕事を休まざるを得なかった。
  あとで知ったことだが、紀元前4世紀に医学の父・ヒポクラテスが「医療というのは、まず第一に患者を傷つけないこと」(NO HARM)という言葉を残していた。HARMとは危害、損害である。つまり、「危害を加えない医療」というのは医学が誕生した頃からの人類の理想の治療だったのだろう。
  ではチクチク療法はというと、筆者が2015年末までに治療した新規症例数は約5400人であり、11年間で約10万回、つまりのべ約10万人をチクチク治療した実績があるが、1年半遅れてチクチク治療を始めた芝山鍼灸整骨院院長の芝山豊和氏は、10年間で筆者の5倍の約2万5千人もの新規症例数を診ており、施術回数は20万回を超えている。ところが、我々にはヒヤリハットの経験がない。そういう意味では限りなく危険性はない、といえるだろう。
  しかし、2012年3月から無血刺絡療法普及会講習会を開催し、全14回で受講者数の合計が約150人。2015年度、新潟・仙台カナケンセミナー8回を受講した治療家が合計で約80人とチクチク療法を使う者が増えているので彼らにも細心の注意を払うよう指導している。



【関連書籍】
▼『医道の日本2016年2月号』
https://www.idononippon.com/magazine/2016/20162.html

【どこを突いて治すのか? 】

  次に突く場所についてである。筆者はキーガン・デルマトームを使っているが、その図は三十等分されている。そのデルマトームを立体的に作ったのがデルマトーム人形である。
  そして、脊椎の中心に治療点を設定したのがゼロポイントである。ゼロポイントは鍼灸の督脈に相当するが、微妙に異なる。督脈は頚椎C3からC7までの治療点にツボがない。チクチク療法はこの治療点を設けたことによって、頚椎ヘルニアに伴う頚部神経根症の治療が可能になった。
  例えば、親指のしびれは第6頚部神経根の症状であるが、それは第5頚椎と第6頚椎の間にある。ところが同部の督脈に経穴がないので治療ができない。第7、第5、第4、第3頚部神経根症も同様であった。
  治療ができたのは第8頚部神経根症(大椎を使う)と、第2と第1(これらは瘂門と風府であるが)頚部神経根症の後頭神経痛の治療であった。
  こうした経緯で、必要に迫られて作成したのがゼロポイント治療点である。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年2月号」でお読みください。



【関連書籍】
▼『医道の日本2016年2月号』
https://www.idononippon.com/magazine/2016/20162.html