関節リウマチ患者の実態 (患者の声)からみた 鍼灸師の役割と課題

粕谷大智 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部鍼灸部門主任

  近年、関節リウマチの治療は大きく進展し、治療の目標が「寛解」を目指せる時代となった。これは、①早期に専門医にかかり、早期診断・早期治療が定着してきたこと、②薬物療法では、1999年にメトトレキサート(MTX)と、2003年に生物学的製剤の導入により、関節リウマチの病態の根源である自己免疫異常を早期に是正し、関節の破壊を抑制することが可能となったことの2つが挙げられる。これにより関節リウマチは、一生付き合っていかなければならない痛くてつらい病気ではなくなったのである。
  このような状況のなかで、世界的に関節リウマチの診療レベルを標準化・均等化して、治療の目標を明確に設定(Treat to Target:T2T)し、その目標に向けた治療であることを医療者やリウマチ患者自身も理解しておく重要性が認識されてきた。日本リウマチ学会が発表した関節リウマチ治療の新しい考え方は以下のとおりである。
  1. 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医が決める。
  2. 最も重要な治療ゴールは、長期にわたり生活の質(QOL)をよい状態に保つこと。それは次のことにより達成できる。
  (1)痛み、炎症、こわばり、疲労などをコントロールする。
  (2)関節や骨に対する損傷を起こさない。
  (3)身体機能を正常に戻し、社会活動への参加を可能にする。
  3. 治療ゴールを達成するために重要な方法は、関節の炎症を止めること。
  4. 日頃から疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合に治療を見直すことで可能となる。
  実際に、この数年で日本リウマチ財団登録認定看護師制度が導入され、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカーなどが密に連携を図り、医療・福祉・支援といったトータルマネジメントとしてのリウマチ医療が動き出している。
  そのなかで、関節リウマチ患者は正しい知識と情報を持って、医療者との信頼関係を築いていける「患者力」が求められ、さらに医療者は患者の声を臨床現場に反映させ、長期にわたりQOLをよい状態に保つこと、つまり医療者の「臨床力」が求められている。



【関連書籍】
▼『医道の日本2016年4月号』
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【関節リウマチ患者の現状】

  我が国には、リウマチ患者やリウマチ診療に携わる医療関係者で構成される社団法人日本リウマチ友の会がある。会員は約2万人で、「リウマチに関する啓発・リウマチ対策の確立と推進に関する事業を行い、リウマチ性疾患を有する者の福祉の向上に寄与することを目的」として活動してきたリウマチ患者のための会である。会は5年に1回、会員を対象にアンケート調査を行い、リウマチ患者の実態について調査結果を公表している。その内容にはリウマチ患者の本音が読み取れる。
  2015年の「リウマチ患者の実態」のなかにおける「どんなことがつらいか」について聞いたアンケートの調査結果を示す。上位より「治らない」55.0%、「つらいことがあったが、今は慣れてしまったので、つらくはない」36.0%、「何かにつけて人手を頼むとき」29.1%、「激しい痛み」20.2%(重複回答)となっており、「痛みがつらい」「日常生活に支障がある」と、多くの患者が訴えている。
  また、「どんなことに不安を感じるか」についての調査では、「悪化・進行」71.7%、「日常生活動作の低下」65.1%、「薬の副作用や合併症」60.7%が三大不安であり、それに加えて、「老後が不安」「経済的な不安」と続いた。
  近年、リウマチ治療の進歩は目覚ましく、著しい関節の変形を認める患者は少なくなってきたことは確かである。しかし、罹病期間が長く、関節の変形や内臓障害などを有する患者も多く、アンケート結果から分かるように薬物療法を中心とする治療を行っていても、痛みや日常生活動作の低下に悩み苦しんでいる患者はいまだ多いことが想像される。
  今後、リウマチ患者の病苦や不安のアンケート結果の上位である「痛みがつらい」「日常生活動作の低下」「薬物療法の副作用や合併症が不安」などに鍼灸治療がいかにしてかかわり、少しでも改善できるかどうかのデータを示し、鍼灸治療がリウマチ患者のQOL向上に寄与しているといった効果を提示することが我々の役割と考えている。

 

 

つづきは、雑誌「医道の日本2016年4月号」でお読みください。



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