900号を迎えるにあたって

株式会社医道の日本社 代表取締役
戸部慎一郎

机に向かって黙々と「医道の日本」の原稿を書く祖父の背中と、鍼やもぐさなどの商品を手早く袋詰めする祖母の手つき―。

私の祖父で、創業者である戸部宗七郎のことを思い出すとき、まず脳裏に浮かぶのは、こんな光景だ。また祖父は写真を撮るのが好きで、業界の先生方が来るたびにカメラで一緒に撮影をしていたこともよく覚えている。

私自身も、小中学生の頃、夏休みになれば、「医道の日本」の合本作業を行う祖父を手伝ったものだ。もぐさの香りを嗅ぎながら幼少時代を過ごした私の身体には、鍼灸が自然と息づいているに違いない。

時代が移り変わるなかで、「医道の日本」がこうして900号を迎えられたことを大変嬉しく思う。そればかりか、完売する号も少なくない。メディアが多様化し活字離れが進む逆風のなかで、大いに健闘しているといっていいだろう。

今回、この巻頭言を書くにあたって、600号、700号、800号と読み返したが、誌面のカラー化を始め、時代が求める誌面づくりを編集部が行ってきたことを改めて実感した。また、ウェブ上の動画公開、バックナンバーの電子化、SNSやツイキャスによる発信など、紙媒体を中心としながらも、メディアを取り巻く環境の変化に応じて、それを補強する新たな試みにも挑戦している。

そんななかで、変わらないものもある。かつては祖父の家に斯界の著名な先生方が集まり、酒を酌み交わしながら、鍼灸マッサージ業界の将来を真剣に語っていた姿を子どもながらに覚えている。それは、今の編集部が会議室で毎号企画を練り、喧々諤々と議論する姿と重なり合う。

ここまで発刊を継続することができたのは、「医道の日本」の発刊をいつも楽しみにしてくれている読者の方々のほか、著者やデザイナーの方々、印刷所の方々、広告主であるメーカーや治療院の方々、全国の書店員の方々など、数え切れないほどの雑誌に携わる皆さまのおかげである。

また、先代の社長である父、戸部雄一郎(2007年に他界)と私の妻や家族、そして、これまでの80年の間に医道の日本社で尽力してくれた、すべての社員にも、この場を借りて感謝を伝えたい。

今後も「医道の日本」は、私たちの仲間である鍼灸マッサージの業界をサポートするメディアであり続ける。次なる節目である1000号を祝して、サポーターの皆さまと、また今日の日のように喜べるときが来たならば、これほど素敵なことはない。