中国における灸に関する新しい動き

形井秀一

【1.はじめに】

「保健艾灸師(ほけんがいきゅうし)」という名前を聞いても、日本の多くの方はピンと来ないだろう。しかし、中国の富裕層と呼ばれる一部の人々にとって、活動的に仕事をこなし、生き生きとした生活を送るために、保健艾灸師は必要不可欠な存在といえるかもしれない。

「保健艾灸師」は、2016年に、中国で、職種・職業として正式に認められた「灸を用いた養生・保健に携わる職業」である。中国において、中医師ではなく、健康の維持・増進に貢献する新しい職業として、灸を実施する職種が認められたというわけである。

【2.中国の医師制度】

中国の医師は、西洋医学の医療を実践する者と中医学の医療を実践する者、西医と中医の統合医療を実践する者、あるいは、チベット医学やモンゴル医学などの民族医学を実践する者がある。また、どの医学を中心とした学部かにより、西洋医学と東洋医学を学ぶ際の授業時間の比率は異なる1)。つまり、学生のときに学ぶ東西医学のカリキュラム上の履修時間数の違いはある。だが、いずれの学部で履修しても国家試験に合格すれば国家資格として医師免許を取得し、卒後は医師として仕事をする。

さて、中国の鍼灸は中医師が行うが、鍼灸が行われる場は、主に公立の病院である。以前から民間が経営する病院は中国にもあったが、民間の病院は経営が難しい状況が続いているといわれていた。しかし、2010年代になって、外国民間資本による民営病院への投資が許可制となるなど、病院の民営化が促進されてきた2)。今後、漢方・鍼灸を専門に行う民間の中医医院も増えてくるかもしれない。

いずれにせよ、鍼灸は中国では医師が行ってきた治療法である。しかし、医師ではなく、「保健艾灸師」なる制度が出現し、医業ではない職業として灸を行うことが認められるようになった実情がどのようであるかは、興味のあるところである。

1)  高鵬飛, 宗形佳織, 詹睿, 他. 日中の伝統医学教育システムの相違. 日本東洋医学雑誌 2012; 63(2): 131-7.

2)  日本総研. 中国の「民営病院」は新たな投資市場になるのか. 日本総研ニュースレター, 2014 年05 月01 日付. https://www.jri.co.jp/page. jsp?id=25896

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年12月号」でお読みください。

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