医療連携の現場から
三重大学・鈴鹿医療科学大学合同

【地域総活躍社会のための慢性疼痛医療者育成事業】

本連載では、毎回医師やそのほかの医療従事者と鍼灸マッサージ師が連携している現場を取材しているが、第5回ではその前段階として、学生たちが「医療連携を学ぶ場」を訪ねた。三重大学・鈴鹿医療科学大学合同「地域総活躍社会のための慢性疼痛医療者育成事業」のワークショップについては『医道の日本』2018年10月号(p.51)でも紹介したが、この2大学の医療職を志す学生が集まり、「慢性疼痛」とそれにかかわる多職種間での連携について学んでいる。

特徴的なのは、医師や看護師、薬剤師、そして鍼灸師などを志す学生が、同じ場所で同じ講義を受け、また自身の専門でない他の医療職の仕事を体験することができる点だ。今回は学生の段階から医療連携の基礎を築くこの取り組みと、実際に連携を行っている講師に聞いた臨床現場の様子を紹介する。

【次世代の医療連携を担う学生が多職種の業務を知る機会 】

本ワークショップは8月21日~23日の3日間にわたり、鈴鹿医療科学大学白子キャンパス(三重県鈴鹿市)で開催した。2017年から始まり、今回で2回目となる。両大学あわせて41人の学生のほか、前回の参加者である三重大学医学部医学科の学生3人と、鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科の学生1人が学生サポーターとして参加した。

内容は、主に慢性疼痛に関する病態整理や診断方法などといった講義と、他の職種が行っている施術に関する体験型実習で構成されている。初日最初の講義では、丸山一男氏(三重大学医学部附属病院麻酔科科長・教授)が「痛みの概論と各職種に関連した痛みの仕組み」と題し、痛みとは何か、どういった機序で起こるのかなどについて説明。感覚神経(Αδ線維やC線維など)によって伝わる痛みが違い、痛みの信号をどの部分でどのように抑えるのかといった目的と、手術や薬、鍼灸、漢方それぞれの処置にどのような効果が期待できるのかを解説した。

また、鈴木聡氏(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科准教授)による「痛みと鍼灸」の講義でも、鍼灸を知らない学生に向けた道具の解説から、先の丸山氏の講義内容を踏まえ、鎮痛作用のメカニズムを生理学的に説明した。なお、講義は西洋医学的な内容ばかりではなく、西村甲氏(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部鍼灸サイエンス学科教授)の「東洋医学的考え方」では、気・血・水という東洋医学ならではの概念が紹介されていた。

体験型実習としては、鍼や電子温灸器の実物に触れたほか、実際に刺鍼練習台への刺鍼、虚証・実証の状態を再現した模型に対する腹診、芍薬甘草湯といった漢方薬の試飲、筋骨格系のストレッチなどが行われた。

今回参加した学生の半数が所属している三重大学には鍼灸の学部はないため、こういった場が初めて鍼灸を知る機会にもなる。本ワークショップが行われるようになった経緯について、鈴木氏はこう話す。

「2006年に三重大学と鈴鹿医療科学大学の間で締結した包括的な連携協定がきっかけです。その協定の一環で、当時三重大学には鍼灸や漢方の外来がなかったことから、これら外来を設立することにもなりました」

この包括的な協定は、双方で異なる医療・福祉系の学部学科を所有していたことから、相互に補完し合うことを目的に実現したという。その一環として、三重大学医学部附属病院には2010年から鍼灸外来、その後漢方外来も設立された。このように教育現場で行われる連携は、将来的に臨床現場におけるチーム形成の礎を築くものになるに違いない。

【鍼灸師にはほかの医療職にない 患者との時間がある】

Q.鍼灸師と連携することのメリットは。

丸山   患者さんのなかには、薬に抵抗感を持っている人もいます。そんな方にも、鍼灸を用いれば、物理的な刺激で腰痛などの痛みを取ることができます。また、これはその医療機関の方針にもよりますが、鍼灸は基本的に診療時間が長いですよね。患者さんのお話をゆっくり聞くことで、精神的に落ち着くことができるなど、患者さんにとってのメリットが多いと感じています。

横地   治療の選択肢が増加することですね。鍼灸にできることをすべて知っているわけではないので、その時々で「鍼灸で何かできるだろうか」と鍼灸師の先生に相談しています。例えばすい臓がんの患者さんが訴える背中の疼痛緩和などに、鍼灸は役立ちます。また、鍼灸治療を受けたあとに「夜よく眠れるようになった」と話す患者さんがいますが、鍼灸が持つ睡眠への効果については、医師でも知っている人は少ないと思います。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2018年12月号」でお読みください。

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