膝関節専門医との医療連携に関する症例

佐藤雅美

【Ⅰ. 医療連携について】

23年前の開業時から、当院のコンセプトは、医師との医療連携である1)−4)。23年前、我々の業界と医師の世界との間には大きな壁があり、鍼灸院や整骨院が日常の診療において常に医師と連携をすることは、ほとんど皆無の状態であった。筆者は、当時の鍼灸学校で「医者は、胃なら胃しか診ないが、鍼灸師は全身を診ることができる」と教育された。しかし、実際に現代医療の最前線である総合病院の医療現場に就職して、自分を無力に感じた。腰痛患者の腰のなかすら、触れても見えるわけではなかった。CTやMRIの出現により、腰痛患者を診察することで、レントゲンでは得られない目に見える情報、客観性を得ることができた。それまでの経験と勘だけではない、見える医療の新しい風を感じた。

23年前、自身の開業に際し、ほとんどの鍼灸師が行っていないこれらの診断を取り入れる新しい医療が必須であると考えた。現在、当院の医療連携は、鍼灸師・柔道整復師である息子の佐藤公俊がすべてを担当している。20代の若い感覚で過去の連携を見直しさまざまな改革を加えることで、いっそうスムーズで患者のためになる連携へと変わりつつある。


1)  佐藤雅美. 鍼灸治療とはどんな方法ですか? 有効ですか?. In: 井須豊彦, 金景成. しびれ、痛みの外来Q&A─脊椎脊髄外来の疑問に答える─改訂2版. 中外医学社, 2017. p.86-9.

2)  井須豊彦. 首・肩・腕の痛みとしびれをとる本. 講談社, 2012. p.72-3.

3)  佐藤雅美. 脊椎脊髄外科における鍼治療の役割. In: 井須豊彦. しびれ,痛みの外来治療. 中外医学社, 2012. p.100-1.

4)  佐藤雅美. しびれ・痛みにおける鍼治療の果たす役割. In: 井須豊彦, 金景成. クリニカルスタッフのためのしびれ・痛み診療と薬物治療. 中外医学社, 2014. p.123-5.

当院では、来院する患者のさまざまな症状に対して、筋骨格系疾患や生命にかかわる循環器系疾患、脳疾患、内科系疾患も含めて、疑わしい場合には、速やかに専門施設へ紹介することにより、医師の診断と画像所見のほか、さまざまな検査情報を得ている。鍼灸師が自身の判断のみで長く患者を抱え込むことは、時には大きな疾患を抱えているかもしれないというリスクを有することにつながる可能性がある。疑わしい症状を有する患者を医師に紹介することは、患者の安全と信頼を得るために重要であると考える。

筆者は2015年に、医道の日本誌に「鍼灸師のための医療連携ケーススタディ」を12回連載した5)−16)。そこでは、来院した患者の症状について、疑問に感じたら医師へ診断を依頼して、その情報を得るようにしてきたことを報告した。実際に、椎骨動脈解離や早期の脳梗塞、がん、狭心症など、そのまま鍼灸院で加療を継続していたら、患者にとって大きな生命の危機となったであろう疾患も回避することができた。専門病院との間で、患者の紹介を通じコンタクトが取れる状況を、開業時から個人で、少しずつ構築してきた結果、いざというときには、それが大変役に立ってきた。患者の症状に対して、専門分野の医師と情報を共有して鍼治療を行うことで、患者を中心に、医師と鍼灸師の三者間に信頼関係が生まれる。


5)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(1): 208-13.

6)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(2): 144-9.

7)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(3): 120-5.

8)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(4): 96-101.

9)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(5): 124-9.

10)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(6): 122-7.

11)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(7): 126-31.

12)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(8): 112-7

13)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(9): 118-23.

14)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(10): 124-9.

15)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(11): 110-5.

16)  佐藤雅美. 鍼灸師のための医療連携ケーススタディ. 医道の日本 2015; 74(12): 130-5.

【Ⅱ. よく経験する膝の症状】

この1年間で膝関節痛を訴えて来院し、当院から医師へ紹介した結果、変形性膝関節症の診断を得たのは20例であった。男10人、女10人、年齢は40代から80代であった。特徴的な症状としては、膝の内・外側や膝蓋骨周囲などに痛みと腫れがあり、水が溜まるものが多い。軽度なものでは起立時や歩き始めの痛みで、休むと痛みが取れるものが多い。関節リウマチなどで重度な変性と強い痛みを有している症例に対しては、大学病院ですぐに手術に移行したものもある。

【Ⅲ. 鍼灸やマッサージが不適応として除外すべき疾患名と鑑別のポイント】

関節のさまざまな症状を訴えて、患者が来院した場合には、最初に視診、触診を行う。

視診では患者の歩き方や、膝の状態、変形などを観察する。痛みの原因が転倒や打撲、捻りなど外力が加わったことによる受傷の場合には、骨や靱帯の損傷も疑われる。この場合には、整形外科医の受診が優先される。

触診では、腫れや熱感の有無を確認し、熱がある場合には、化膿性関節炎、関節リウマチ、痛風も含めて炎症性の疾患が疑われる場合があるので、病院での血液検査が欠かせない。腫れがある場合には、膝蓋骨が見えにくくなる。関節水腫の確認も必要で、炎症時には関節液の貯留が疑われる。また、圧痛の確認も行うべきで、膝蓋骨周囲や膝関節の左右の側面、特に内側には圧痛が認められる場合を多く経験する。膝関節を動かしてみて、関節可動域制限や、異常な音が出ないかなどの確認も重要である。

当院では、患者に医療連携を行っていることを伝えると、患者自身が病院での検査を希望する場合も多い。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年1月号」でお読みください。

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