アスレティックリハビリテーション/
エクササイズ/鍼の臨床例
(※動画あり)

【骨盤と胸郭の可動性・安定性、協調性を高める
 アスレティックリハビリテーション】


仁賀定雄 氏・二瓶伊浩 氏

呼吸による胸郭の動きの評価とアスレティックリハビリテーション

骨盤の動きは腹圧によっても整えることができる。まず取り組むのは呼吸のトレーニングである。

安静時呼吸では胸式か腹式か胸腹式か呼吸パターンを観察する。呼吸時の肋骨の動きは、肋椎関節の関節面の角度の違いにより、上位肋骨と下位肋骨は動き方が違う。吸気時、上位肋骨は前上方に動き(ポンプハンドルモーション)、下位肋骨は左右方向に広がるように動く(バケットハンドルモーション)。また深呼吸では頚部の筋群、大胸筋、腹直筋、脊柱起立筋群などが過剰な緊張を起こし、努力性呼吸をしていないかを観察する。目指す呼吸パターンは胸腹式呼吸である。

難易度を上げてのアスレティックリハビリテーション

横隔膜・腹壁・骨盤底筋群により腹圧を一定に保ちながら行う呼吸は、骨盤帯を安定させるトレーニングとしても行う。また上肢、下肢の動作を加えることで段階的に難易度を上げることができる。上肢を天井に向かってリーチをすることで、前鋸筋を介して内外腹斜筋~反対側の内転筋群の関節サポートシステム(Anterior Oblique Subsystem)1)に刺激が入る。その結果、下位肋骨は正しい位置でバケットハンドルモーションが起こり、横隔膜は機能的に腹圧をコントロールすることができる。横隔膜が正しく機能すれば腹圧が腹壁と骨盤底筋群を全方位に押し込み、仙腸関節の関節面が適合し、骨盤帯としての理想的なポジションで安定する。その位置で呼吸トレーニングを続けることで、横隔膜と連動する骨盤の動きが改善される。

【POINT】
術者が胸腰椎移行部の下に置いたタオルを軽く引っ張ることで、患者は自分自身の腰椎のポジションを認識できる(タオルが抜けるようであれば、腰椎が過伸展していることを背中の感覚から認識できる)。


1)Clark L. Sutton. NASM Essentials of Sports Performance Training, Jones & Bartlett Learning 2010.


⇒仁賀定雄氏による【鼡径部痛症候群の新しい定義と身体の連動に着目した問診診察】の記事はこちらから。


アスレティックリハビリテーションの様子をYouTubeに公開しました。

【身体の連動を考慮した下肢症状へのエクササイズ】

大木智裕 氏

雑誌「医道の日本2019年7月号」のp.30で紹介した動作評価と手技のあと、それぞれエクササイズを行う。ここではベッドサイドで応用できるメニューを紹介する。エクササイズを行う回数はおおよその目安である。

Ⅰ. 足関節可動域制限へのエクササイズ

01 下腿回旋(Fibula Rotation)

【目的】
足関節の背屈制限がある場合、脛骨と腓骨の動きが硬くなっていることが多い。脛骨と腓骨の動きを出して(腓骨[外果]の回旋動作)、足関節の可動域を改善する。
【注意点】
足部を回内・回外しないようにする。動作とともに膝の位置がぶれないようにする。

02 トリプルフレクション(Triple Flection)

【目的】
股関節、膝関節、足関節の3関節を、伸展した状態から同時に屈曲することで関節の屈曲動作を修正し、正しい運動を覚え直す。
【注意点】
屈曲の際に膝関節が内側、外側に広がらないようにする。足指も背屈させる。
【POINT】
足趾関節も背屈させることで、股関節の屈曲動作がしやすくなる。

03 トゥータッチ・プログレッション(Toe Touch Progression)

【目的】
足関節背屈にかかわる下腿三頭筋のストレッチができる。股関節の屈曲動作の改善にも有効。両大腿部の間にボールを挟み、体幹や股関節に刺激を入れることによって自然に股関節屈筋に力が入りやすくなり、前屈動作のサポートとなる。
【注意点】
膝が曲がらないようにする。
【整動鍼における膝痛治療の実際】

栗原 誠 氏

Ⅰ. はじめに

整動鍼における膝痛治療は、膝の痛みのタイプに応じて対応の仕方が変わる。タイプを分ける際に指標になるのが痛みの位置と動作であり、そこからツボを割り出すことができる。そしてそのバックボーンとなる理論の根幹をなす概念が連動である。膝関節は単独で動くことはない。膝関節の疾患に対応するためには、足関節や股関節との関係を外すことはできない。整動鍼の最大の特徴は「ツボで動きを整える」という切り口から、ツボの作用を整理していることである。問題となる動きが分かると、自ずとツボが導き出される。

Ⅱ. 膝痛へのアプローチ

1. 膝痛治療のヒントになる連動

(1)足関節と股関節
膝に生じた問題を解決する際に重要なのは、足関節と股関節である。足関節との関係においては腓骨が大きくかかわっている。つまり、股関節や足関節の調整をすることが膝の治療となる。膝への負荷が集中する部位と考え、膝そのものにはほとんど刺鍼をしない。雑巾しぼりをイメージすると分かりやすい。雑巾の両端をしぼれば、中心の繊維がねじれて負荷が集中する。この負荷を軽減しようと思ったら、中央部分ではなく、両端の力をゆるめなければならない。この場合の中央部分が膝関節であり、両端が足関節と股関節である。

(2)左右の股関節
股関節は左右で連動している。例えば、右が外旋しやすいと、左が内旋しやすくなる。この身体に潜む原理を利用し、右の股関節が外旋しづらいとき、右を外旋しやすく調整することに加えて、左の股関節が内旋しやすいように調整するという方法がある。

Ⅲ. 整動鍼の臨床

1. 問診

(1)患部の位置をできるだけ正確に把握する。そして、実際に触れてみる。ここではおおよその確認が目的であるから、患者には「後ほど、改めてしっかり見せてください」というように伝え、およそ10分ほどで切り上げる。

(2)「どんな場面で痛みが出現するか」というのは、整動において最も重要な質問である。どこに負荷がかかっているのか、どのパターンの連動に支障を来しているのかを患者から聞き出し、候補を複数個挙げておく。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年7月号」でお読みください。

お得な定期購読のご案内

Apple、Apple のロゴは、米国および他の国々で登録された Apple Inc. の商標です。Mac App Store は Apple Inc. のサービスマークです。
Android、Google Play、Google Play ロゴは、Google Inc. の商標です。