外国人旅行者への治療 ─留意点と基本的な英会話─

大饗里香 氏(acu.place 自由が丘)

【外国人に鍼灸マッサージ治療を行うときの留意点】

日本の文化は世界のなかでも独特です。私たちにとっては当たり前の習慣が外国人にはどう映るのか、また、外国人は鍼灸にどのような理解や期待を持って来院するのか、鍼灸師として留意しておくとよいことがあります(内容は来院の可能性の高い一般的な欧米在住の方を想定しています)。

(1)日本では美徳だけれど!?

日本人はよく礼儀正しくて親切、丁寧、謙虚、真面目といったイメージを持たれています。日本のおもてなしや心遣いに感動してくださる外国人も多いです。ただ、丁寧さや謙虚さから「sorry」を何度もいうと「そんなに悪いことをされたのかな」と思われてしまうことも。英語の「sorry」は、日本語の「すみません」より重たく受け取られると思っていたほうがよいでしょう。

また、日本では曖昧さも美徳ととらえることがありますが、それを知らない外国人には、言葉足らずで、愛想笑いや照れ笑いをする日本人は何を考えているのか分からないと思われてしまいます。逆に外国人は物事をストレートにいい、自己主張が強すぎるように見えることがあります。よし悪しではなく文化の違いなのですが、鍼灸師としては誤解のもととならないように、いいにくいことでもはっきりいわなければなりません。


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(2)日本では普通だけれど!?

日本では鼻水が出たとき、人前で鼻をかむことを恥ずかしいと感じ、すすってしのいでしまう人が結構多いですよね? しかし、多くの欧米人は何度も鼻をすする音をかなり不快に感じます。逆に鼻をかむことをあまり恥ずかしいとは思わないので、なぜ鼻をすすり続けるのか理解できないそうです。鍼灸師としては、施術中であればいったん退室して鼻をかんでしまうほうがよさそうです。

それから、日本では中指を使ってものを指し示しているのを目にすることがありますが、中指は欧米では通常相手に屈辱的な思いをさせる意図で使われますので、ものを指す場合はペンなどを使うのが無難かもしれません。

また、日本に来た外国人が戸惑うことの一つに靴の脱着があります。海外では室内でも靴を脱がない国が多いので、日本に初めて来たら、どこからが土足厳禁なのか分からないのです。何もいわないと靴で室内に上がってしまったり、トイレのスリッパを履いて出てきてしまったりするかもしれないので、説明してあげるとよいでしょう。

(3)外国人にとって鍼灸とは!?

アメリカでは、ほんの四十数年ほど前から鍼灸の認知度が上がり、今では大学院レベルの鍼灸学校が全米に62校もできるほどニーズが高まっています1)。現代医療に限界を感じた人、自然志向の人、特に都市部の高い教育を受けた人や比較的高収入の層に支持されています。ヨーロッパやオーストラリアでも同じ傾向があります。


1)Fan, Arthur Yin, and Sarah Faggert. “Distribution of licensed acupuncturists and educational institutions in the United States in early 2015.” Journal of integrative medicine 2018; 16(1): 1-5.

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年8月号」でお読みください。

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