鍼灸、機械灸、鍼通電、モビライゼーションを用いた
五十肩と変形性肩関節症の治療(※関連動画あり)

岡田高 氏

【Ⅰ. はじめに】

筆者は、はり師・きゅう師の免許のみを有する鍼灸師として、日々臨床に携わっている。治療に用いる手法は、免許の許す範囲において非常に多様多彩であると自負している。それは、東洋医学の基本である「病を診ず人を診る」を信条にしているためである。例えば同じ「肩関節周囲炎」と診断された患者でも、一人ずつに合わせた治療方法を用いる。「肩が痛い」という表現は同じでも、患者によっては「鍼が怖い」「お灸は痕がついたら嫌なのでしてほしくない」「電気を使う治療は苦手」「テーピングは皮膚が弱いから無理」などの要望がある。このような人々にも最善の効果を得てもらいたいという思いが、鍼と艾に留まらず、超音波治療器や耳鍼、ひいてはセラミックヒーティングによる枇杷の葉温圧灸治療器などの各種機器の導入などにつながっている。

読者の皆さんは大いなる好奇心を持って本稿を読んでいただき、ご自身の頭に浮かぶ「あの患者さん」の症状改善に向けて、興味のある手法が見つかれば、積極的に導入されることを期待している。

なお、治療に用いる機材は次のとおりである。

【鍼】
 ステンレス製の毫鍼0.5寸0.01㎜~2寸0.24㎜
 円皮鍼として、パイオネックス0.3㎜~0.9㎜(セイリン製)

【灸関係】
 台座灸として、温灸用せんねん灸ハード・ソフト(セネファ製)
 セラミックヒーティング枇杷温圧灸「HerbQ」(株式会社チュウオー製、販売終了)

【低周波治療器】
 Trio-300(伊藤超短波製、販売終了)
 ATミニ(伊藤超短波製)
 ピクトロンPG-7(大島製作所製、販売終了)

【超音波機器】
 イトーUS-750(伊藤超短波製、販売終了)

【耳鍼用機器】
 AGISCOP DT(SEDATELEC製)

(※治療機材の図は、雑誌「医道の日本2019年10月号」参照)


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【Ⅱ. 肩関節周囲炎の治療に用いる手法】

1. 毫鍼を使った治療

置鍼のみ、置鍼と低周波治療器のMCRモード(微弱電流刺激)もしくはTENSモード(鎮痛メカニズムに基づいた刺激パターン)、運動鍼のいずれかを症状のある部位に行う。これら刺鍼法を用いても硬結や愁訴の残る部位に対しては、筆者考案のヴァリアブル刺鍼法とモビライゼーションを行う。ヴァリアブル刺鍼法とは患部を運動させながら、刺鍼する場所を探り取る取穴・刺鍼法である。それに関節可動域を広げるモビライゼーションを組み合わせたものを本稿では、「Vacp+Mob」と記載する。

2. 灸療法

台座灸、八分灸、透熱灸、HerbQによる枇杷温圧灸を用いる。または、HerbQの施灸中に患部を運動させる、運動灸も行うことがある。また、治療のインターバルに自宅施灸を行ってもらう。HerbQは基本的に5秒ずつ、ツボや部位に押し当てる。温熱の強さ、圧迫の強さに関しては常に患者が心地よいと感じているかどうか必ず尋ねて調節する。

3. 耳鍼用機器

耳ツボの神門と肩関節点にパイオネックスを貼付する。

4. 肩関節のモビライゼーション

上記1~3の施術を必要に応じ取捨選択して行ったあと、徒手による肩関節モビライゼーションを行い、関節の可動域を拡大する。HerbQを行ったあとに運動灸を行うことを、本稿では「HQ+Mob」と記載する。モビライゼーションでは、肘関節を屈曲させ、肩関節の疼痛部位と手関節を持ち、内旋、外旋を行う。患者によっては、初めは屈曲運動しかできない場合もあるので繊細に扱う。患者の状況が改善し運動量が増えてくれば、肩関節を上下させたり、肩関節の内旋・外旋の度合いを強めていく。最終的に腋窩に対してHerbQを行うことができるようになるまで、肩関節の外転によって腋窩が表出してくれば、回復の度合いが高くなる。

(※施術写真は、雑誌「医道の日本2019年10月号」参照)
5. セルフケア

治療後には、患者の家庭での状況に合わせ、自宅での施灸、自宅での通電(ATミニを使用)など、可能な自宅療法を指導する。それらができない状況の患者で、皮膚の過敏症がなければパイオネックスの貼付かキネシオロジーテープによるテーピングをしたうえで、受動運動系運動療法を指導する。

【Ⅲ. 初診時の内容】

まずは問診票を記入してもらい、その内容に沿って口頭での質問を加え、より詳細な状況を確認する。単なる症状のみならず、患者のライフスタイルや、東洋医学に対するイメージや認識も把握しておく。また、自らの治療スタイルや考え方を伝えることで、信頼関係を築くことを最も大切にしている。さらに、開業2年目よりノイロシステムビジョンを用いた良導絡測定を臨床に導入している。「望・問・聞・切」による四診に良導絡測定の結果を加えることで、患者の状態をより客観的にとらえ、治療に臨むようにしている。

患者の来院経緯はさまざまで、整形外科での診察加療を経て来院するケースもあれば、他の鍼灸院や整骨院で治療を受けた経緯のある患者や、自己判断で「五十肩です」と申告して来院する場合もある。いずれの場合も、肩関節の痛みを今一度整理し、患者本人に納得してもらう必要がある。また、完治には時間がかかることを伝え、治療期間をともに歩むために必要な情報を伝えるようにしている。患者には必要な情報を記したシートの該当部分に直接マークをつけて持ち帰ってもらう。

例えば、本稿で1つ目に取り上げる症例の「五十肩」の場合は、「A:痛みの原因」は、「①組織性=b. 加齢による組織の変性」であり、それに対する「B:痛みの緩和法」は「①b.の場合=鍼灸治療+微弱通電療や超音波療法とコラーゲンの摂取による組織の回復+適切な自宅療法と運動」が選択肢となる。

肩関節の治療において最も重視しているのは、関節可動域の測定値の変化である。初診時はもちろん、毎回の治療開始時に、屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋・結帯肢位による大椎と母指頭間の距離(以下大椎母指頭間距離)の測定は欠かさない。また初診時の問診から外傷性が疑われるときは、ヤーガソンテスト、スピードテスト、ペインフルアークテストを必ず加えている。

(※施術写真は、雑誌「医道の日本2019年10月号」参照)

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年10月号」でお読みください。

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