医療連携の現場から
金沢大学附属病院漢方医学科

医療機関における鍼灸との連携のスタイルは、各医療機関によりさまざまである。今回紹介する金沢大学附属病院漢方医学科は、2011年開設当初から湯液と鍼灸の併用を行い、医師が積極的に鍼灸を推奨している。入院患者が退院し外来患者となったとき、引き続き信頼できる鍼灸師の手厚い鍼灸治療を受けられるように、近隣に開設された鍼灸院と強力な連携も図っている。同科に勤務する鍼灸師が連携する鍼灸院で施術を行うのである。取材当日は2019年4月から同科の研修生となった鍼灸師からも話を聞くことができた。連携の現場に身を置く鍼灸師は、医師やスタッフから何を求められているのか、面接採用試験で選ばれる鍼灸師の条件は何かという切り口からも、連携のポイントを探っていきたい。

【鍼灸への信頼が連携を強固にする】

2011年4月、金沢大学附属病院では日本東洋医学会専門医である小川恵子氏が赴任し、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の特殊外来として「和漢診療外来」が開設された。東方会方式の鍼灸治療に手ごたえを感じていた小川氏は、開設時から湯液と鍼灸を併用していた。2012年4月、鍼灸師の津田昌樹氏(はり灸 夢恵堂・富山市)と連携が始まり、接触鍼の臨床研究を開始。2014年4月、津田氏の治療院に勤務する鍼灸師が病院での臨床と研究に加わった。同時に東方会北陸支部を開設し、鍼灸師の人材育成の面でも積極的に活動を開始。2015年、研究と臨床が評価され「漢方医学科」が独立診療科として設立された。

2017年11月、東方会北陸支部1期生の竹部隆江氏(はり灸 夢恵堂)が加わり、2018年4月には岩橋麻子氏(鍼灸師)が病院雇用された。2019年4月、漢方医学科は鍼灸臨床研修制度を開始し、第1期生として清松諒太氏が加わった。現在、漢方医学科所属の鍼灸師は3人である。

2015年4月、津田氏は金沢大学附属病院の近くに分院を開院。漢方医学科を受診する患者のなかで、患者からの希望がある場合や、医師が鍼灸治療が必要であると診断した場合に紹介するという形式で連携し施術を行っている。
主訴の内訳
疼痛、不眠、末梢神経障害、嘔気、浮腫、嚥下困難、易疲労、冷え、咳嗽、頭痛、めまい、耳鳴など。渾然として一体となった痛みや不快感、身の置き所のない苦痛など、複数の症状を持つ患者が多い。

湯液治療と鍼灸治療の併用
鍼灸治療により痛みを緩和し湯液で維持するなど、併用することで相乗効果が期待できる。漢方医学科の入院患者は疼痛性疾患が多いため、鍼灸を併用することが多い。外来患者で、特に筋骨格系や疼痛性疾患の場合には、必ず推奨している。

カンファレンス
漢方医学科全員がそろう木曜日の朝に実施。診療における情報の共有を図る。

抄読会
週に2回、火曜日と木曜日の午前8時から抄読会を実施。古典の勉強、研修発表も行う。

医師と鍼灸師へのQuestion:漢方医学科
患者のための漢方医学と西洋医学の融合


「Q.病院内で東方会方式を用いるメリットは」

小川   私の前任地である千葉大学附属病院では、東方会方式で鍼灸を習得した先輩である林克美先生が緩和ケアチームで鍼灸治療を担当していました。私も鍼灸に魅力を感じていたので、本格的に鍼灸を習得したいと思い、東方会の入門塾で学びながら、林先生とともに緩和ケアチームの鍼灸治療を担当していました。緩和ケアチームが担当する患者さんは、手術や化学療法などで消耗しているので、治療の刺激は弱いほうがよいと実感しました。東方会式接触鍼法は刺入しないので感染のリスクが少なく安全ですし、痛みがほぼないので患者さんに安心感を与えます。また、東方会方式では接触鍼ばかりでなく、必要に応じて刺入鍼も行います。患者さんの状態を診なからドーゼを調整し、さまざまな手技を使い分けながら治療できるのが東方会式の鍼灸治療の魅力です。また、私は小児外科が専門ですが、小児には円鍉鍼による施術が非常に有効です。
小川   灸は糸状灸も行いますが、知熱灸が中心です。良質な点灸用もぐさを使用していますので香りもよく、院内での灸治療も問題はありません。ただ、灸治療の際には空気清浄機を設置する配慮をしています。

2011年に赴任したとき、和漢診療外来は私一人で担当していました。また、緩和ケアを含む入院中の患者さんへの鍼灸治療も私が行っていましたが、2014年より鍼灸治療は東方会方式の技術を学んだ鍼灸師に任せています。

「Q.鍼灸師と医師が連携するメリットは」

小川   一人の患者さんを一人で診ると視野が狭くなりがちで、見えるものも見えなくなってしまいますが、チーム医療でいろいろな人が診ると、情報を共有することができ、俯瞰的な視点で患者さんを見ることができます。特に鍼灸師は治療中に患者さんとゆっくり丁寧に接することで細かな変化も把握でき、この情報を多職種の医療従事者と共有することで、質の高い治療につながっています。

「Q.鍼灸師が医師と連携するうえで求められる知識、技術、態度。採用のポイントは」

小川   「満足せずに素直に学ぶ姿勢」でしょうか。日々の臨床で疑問に思ったことや、患者さんを治してあげたいという思いは、勉強することで知識となり、臨床力が身につき、自信へとつながっていくと思います。また、相手を尊重することや、自分が分からないことを素直に「分からない」といえるのも大切です。面接では質問に対する答えや発言のほかに、醸し出す雰囲気、目線、落ち着きといったところも見ます。あとはコミュニケーション能力の有無ですね。

私たちは病院のなかで他科と連携したチーム医療を行っています。いろいろな職種や年齢層の人たちと仕事をするうえで、よりよいコミュニケーションは信頼感につながり、チーム医療が円滑に運びます。また患者さんのなかには、話下手な人や、自分のことを話したくない方もいるので、その場の空気を読み、その時々に合わせた対応が必要になります。コミュニケーションは言葉だけでなく、表情や態度でも図ることができますので、笑顔や相手を思いやる姿勢も大切だと感じています。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年10月号」でお読みください。

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