身近なものでつくる 竹の輪灸・燻蒸灸・せいろの灸

小柴 元 氏

【身近なものを活用した手づくりの灸道具】

鍼按小柴療院は1942年、ランドマークタワーやベイブリッジなど、横浜のベイエリアを見渡せる丘の上で開業した。現在は同じ場所で、院名を鍼灸接骨小柴療院に改名し、2代目の小柴元氏が治療を行っている。

「先代の院長であった父は盲ろう重複障害がありました。できるだけ父の傍にいたいという気持ちで、鍼灸の道に進みました。当院は、父の頃から『地域に根差した、昔ながらの治療院』という雰囲気でした。今も変わらず、地元の方を中心に治療を行っています」と小柴氏が話すとおり、取材時も、地域の高齢者が代わるがわるに来院していた。

小柴氏は、15年ほど前から灸の道具を手づくりしている。初めは、自宅での施術用に円筒灸を購入した患者に対し、紙粘着テープ(ニチバン製、紙バン)の空芯を利用してつくった台座を配っていた。しかし次第に、治療院での施灸時に使用する道具の創作も開始。現在は、側臥位用の竹の輪灸、オリジナルの傘をつけた燻蒸灸という箱灸や、腰部を温めるためのせいろの灸などを活用している。

「必要に駆られてつくった、というのが本音です。当時、よく灸頭鍼治療を行っていましたが、安全のために、艾が燃えている最中は患者さんの横から離れられません。そのため、せっかくほかの患者さんが来院してくれて、ベッドも空いているのに、手が離せなくて治療をお断りするという場面がありました。だからといってスタッフを増やすと、院内が混み合ってしまいます。そんなとき、10分間でも道具に治療を任せられれば……と思い、灸道具をつくり始めました。もちろん燻蒸灸や竹の輪灸の場合でも、常に様子を観察しておくことは必要ですが、当院は仕切りが少なく室内のベッド全体に目が届きますので、より多くの患者さんに治療できるようになりました」
道具を利用し始めてから、別のメリットも見えてきたという。

「以前は広い範囲をしっかり温めるときは、5~6カ所に刺鍼して、艾球を何度も繰り返し燃焼する灸頭鍼治療を行っていました。すると院内に煙が充満し、施術者側もつらく、患者さんの衣服にも臭いがしっかりついてしまいます。うちわを2枚張り合わせたもので煙をカバーしたり工夫していましたが、燻蒸灸の使用で、煙の問題はずいぶんと解消されました。また竹の輪灸の使用で、灸頭鍼のために本来は不要なところにも刺鍼をしたり、鍼が倒れないように深めに刺鍼することもなくなり、鍼が苦手な患者さんへの負担も軽減したと思います。今も灸頭鍼は行いますが、以前ほどの頻度ではありません」

小柴氏の道具の多くは、治療院の廃材や100円ショップで手に入る資材でつくられている。身近なものを利用しながらの工夫を、本稿にて紹介する。

【01 自宅施灸用の台座「セルフ1号」】

セルフ1号は、小柴氏が最初につくった灸道具である。使い終わった紙粘着テープの芯の底部に、同じく使い終わった円筒灸(大和漢製、達磨)の台紙を貼り、芯の外周にセロテープを巻く。芯の内側と底になる円筒灸台紙の裏表に、キッチン用のアルミテープを貼り合わせ、芯と底を接着する。中央に穴を開けて、円筒灸を穴に通して使用する。円筒灸は水をつけて糊を溶かして接着するタイプだが、セルフ1号では水をつけずに使用している。小柴氏は下記の目的のために製作し、自宅施灸用に円筒灸を購入した患者に配っている。

・燃焼中も台座を持って移動することができる。
・台座をつけることで、より安定させる。
・肩などの手の届く範囲は、手で持ったまま据えられ、テープでも留めることもできる。
・穴から円筒灸を出す高さを変更することで、熱さを調節できる。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年11月号」でお読みください。

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