更年期障害、美容に対する透熱灸
(※関連動画あり)

森 洋介 氏

【Ⅰ. はじめに】

杉田由範氏のもとで2年間研修を積んだ森氏は、灸痕が残る透熱灸で患者の症状が改善していくのを目の当たりにしてきた。しかし、森氏の地元である名古屋はまだ灸が盛んではないので、杉田氏から学んだ透熱灸をそのまま用いることはできない。名古屋で受け入れられるように煙を極力少なくし、艾の種類と艾炷の捻り方を調節して灸の温度をコントロールしている。

更年期障害を専門にしているため、女性の患者が多く、灸痕が残らないように灸点紙を用いる。また、杉田氏とは指の長さも太さも違うので、自分の指でできるやり方を工夫している。

【Ⅱ. 灸の体験を提供】

灸を受けたことのない患者には、灸の体験をしてもらう。体験で患者の灸に対する緊張を解くことが目的である。体験の前に「頭痛が起こりやすい」「目が疲れやすい」など21項目の確認事項を記載した森氏作成の「お灸体験用予診表」に記入してもらい、簡易の東洋医学的判断を行い、灸が合う体質かどうかを鑑別する。体験日から2週間以内に来院して治療を受ければ、初診料は無料となる。

予診表の最後に灸のリスクを記載している。「灸点紙を使用しても火傷のリスクが生じる可能性がある」ことを患者に確認してもらい、同意を得る。

過去に有痕灸で改善した患者が、問診票の「直接灸を受けたい」の項に印をつけていた場合は、最初から有痕灸を行う。また、頭や足裏など見えにくいところには透熱灸を行う。


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【Ⅲ. 問診・診察・治療】

問診は10~15分程度で、更年期障害の患者の場合は長めに時間をとり、丁寧に問診を行う。「更年期チェック」(簡略更年期指数SMI)では、「顔がほてる」「汗をかきやすい」「腰や手足が冷えやすい」といった自覚症状(計10項目)の程度を確認し、点数化する。治療を重ねるごとに点数が減少して50点以下になったら、自宅灸中心で様子を見ていく。

脈診、舌診、腹診により患者の状態を把握し、太極療法により取穴を行う。圧痛や硬結のある経穴に施灸する。反応のない経穴は用いない。

【Ⅳ.灸の道具】

艾は、杉田氏から贈られた佐藤商店の「純和灸」とセネファの点灸用もぐさ「白富士」を使い分ける。温度の低い施灸には、柔らかく上質な「純和灸」を用いる。「白富士」は硬く捻ることができ、高い温度の施灸に用いる。顔面麻痺や顎関節症、蓄膿症の患者には「純和灸」で施灸する。艾は事前に揉んでほぐし、繊維をバラしておく。

艾をブレンドしたり、フライパンであぶって水分を飛ばしたり、きゅう師は誰でも道具の工夫をしているが、艾へのこだわりが特別強いわけではない。艾は天気によっても状態が変わる。そのときの艾の状態を自分で確かめ、艾を自分に合わせるのではなく、艾の状態に自分の技術を合わせるようにしている。

線香は、杉田氏が使用していた手びねりの線香が一番使いやすいが、煙が少ない備長炭を使用。灰が熱いことと、折れやすいのが難点であるが、顔面部への施灸の際、煙が目に染みることが少ない。

セルフケアには「せんねん灸セルフケアサポーター」の台座灸を無料で渡している。
【Ⅴ. 施灸法】

1. 一房の量
1回に持つ艾の量を「一房」という単位で表現する。森氏の場合、一房は麦粒ほど。つまり、艾は少なく持ち、捻る際に艾炷の大きさや形をコントロールする。一房を多くして多壮灸を据え続けることも可能だが、多すぎると艾炷が硬くなりやすく、「いうことをきかせづらい」。

2. 艾炷の捻り方
おおよそ2回捻って半米粒大の艾炷をつくる。一房で艾炷は4つ程度。硬めの艾炷を捻るときは示指を使い、柔らかめの艾炷を捻るときは中指を使う。

3. 艾炷のとり方
艾を捻った手を手前に引いて、艾炷を切り離す。こうすることで艾炷の底辺に艾の線維(しっぽ)が飛び出しにくくなる。

4. 艾炷の置き方と点火の仕方
母指と示指で線香を短く持つと操作性がよく、線香を最後まで使い切ることができる。指にはめた灸療リングの皿に湿らせた綿花を置き、薬指の先を綿花で湿らせて、その薬指で灸点を湿らせ、その上に艾炷を立てる。艾炷を立てるときは、灸の火が真っすぐ透るように底面をしっかり密着させている。線香は回さずに艾炷の先端に軽くつける。1回点火したら線香の灰を払ったほうが、次の点火がやりやすい。

5. 多壮灸
灸の熱が続けて感じられるほうが、患者は安心する。先に点火した艾炷の火が消える前に次の艾炷を立てる。「リズムのよい灸」となる。3~5壮の多壮灸は温度が低くなるので、艾炷を少し大きくしたり少し硬く捻ったりして一定の温度になるように調整する。壮数の違いは患者の素体や患部の反応、症状の軽重によるが、急性の症状は少穴多壮、慢性の症状は多穴少壮と使い分けている。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年11月号」でお読みください。

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