鍼灸と漢方を併用してメニエールの症状が改善した一例
(※近日、関連動画を公開予定)

横山 奨 氏

【Ⅰ. はじめに】

現代における漢方と鍼灸の連携には、さまざまな形態がある。場所としては、大学病院などの病院内や、医院やクリニックなどの診療所内で連携する場合もあれば、診療所や漢方薬局が鍼灸院と連携する場合もある。また、資格でいえば、医師一人が漢方と鍼灸を行う場合、薬剤師と鍼灸師の資格で行う場合があるほか、資格制度が始まった2009年以降は、鍼灸師と登録販売者の資格で行う場合も見られる。

アイム鍼灸院と漢方内科証(あかし)クリニックの場合は「医院やクリニックなどの診療所と鍼灸院での連携」となる。「病院内や診療所内での漢方と鍼灸」のようにカルテを共有したり定期的なカンファランスを開いたりというデジタルな連携は、設備投資や現実的なスケジュールの問題で実現することは容易ではない。担当の医師と会えるタイミングで該当患者の情報を整理したものを伝え、医師の方針をうかがい鍼灸の治療方針を意見交換すること、処方薬や患者の報告から医師の考える治療方針を推察することが鍼灸師側の連携の必須スキルとなる。

医師の負担を増やさないというのも医療連携では重要な視点だと考える。アナログな連携ではあるが開業鍼灸院という業務形態を考えた場合、2019年現在では最善の連携方法だと考えている。

【Ⅱ. 連携で効果が出やすい疾患、症状、証】

表2(※雑誌「医道の日本2019年12月号」参照)は証クリニックと連携して治療を行った症状の一部の一覧である。漢方内科の患者傾向として消化器系や自律神経系の症状が多く来院するため、それらの症状の連携は多い。医師からの依頼としては神経痛の疼痛緩和・改善は一定数あるものの、クリニックと鍼灸院の双方に来院している患者としては消化器系・自律神経系が多数を占める。
【Ⅲ. 腹診について】

筆者の鍼灸臨床のなかでは、腹診の重要度が高い。特に連携する証クリニックの漢方医は日本的な湯液(日本漢方)を行うため、腹診が診察の重要な項目になっている。漢方薬の処方内容を理解するうえで鍼灸師が腹診から得られる情報は大きい。

傷寒論系腹診は腹部の状態を、部位ごとの硬結、面状の張り、凹み、緩み、冷え、ほてりを三段階の圧で触診していく。第一段階は優しく触れて寒熱を診る。第二段階は軽く押圧し虚実を診る。第三段階は強すぎない程度に押圧し圧痛を診る。触診により得た情報から身体の状態を推察していく。

腹候の状態は漢方であればそれぞれの所見に対応する方剤や処方の方向性が示されるが、鍼灸においてはその所見そのものが治療対象になる場合がほとんどである。腹候から、そのほかの情報(医療面接、脈診、舌診、触診など)の裏付けをとることもできる。日本漢方では腹候の変化により処方が変化する場合が多く、腹候に対して直接的に鍼灸をすることは治療として有用であり、漢方医との共通言語の一つだと考えている。

【Ⅳ. メニエール病の症例】

【症例】
 63歳、男性。会社役員。

【主訴】
 回転性のめまい、吐き気

【既往歴】
 15年前、右耳突発性難聴。

【家族歴】
 特記事項なし。

【現病歴】
X−2年2月、A病院耳鼻科にてメニエール病と診断された。トラベルミン5㎎を発作時に服薬することと、運動で汗をかくように指導されるが、めまい、吐き気など改善しなかった。特に11月は1週間に1回は強いめまいと吐き気があり、めまいの持続時間も長かった。普段もフワフワとしためまいがある。右耳の耳鳴りと詰まり感もあるが、めまいと吐き気がつらい。めまいには鍼灸が有効と聞き、当院を受診した。
【初診時所見】
身長169㎝、体重75㎏、血圧110/70㎜Hg。右耳の耳鳴りと耳のつまり、2日に1回のやや硬い便、中途覚醒が2~3回あり、2時間で目が覚める、頭痛(こめかみの圧迫感)、頚の痛み、肩のこり、足先から足首の冷え、口が苦い、口渇はなし、ゲップがよく出る。

【VASによる評価】
 初診時のめまいのVAS81㎜(今まで最もつらいめまいを100㎜として)、吐き気のVAS60㎜(今まで最もつらい吐き気を100㎜として)。

【望診】
 顔色に艶がない。

【脈候】
やや沈、やや濇。左関上重按にて無力、軽按にて有力、左尺中重按にてやや無力。肝経虚、胆経実、腎経虚。

【腹候】
腹力5分の3、心下痞硬、小腹不仁、軽度の右胸脇苦満、上腹部右側腹直筋攣急、軽度の胃部振水音。

【舌候】
胖大、歯痕、湿潤、薄白苔。

【背候】
右翳風・天柱・風池・完骨・肩井の硬結(喜按)、脾兪・胃兪付近の膨隆および圧痛(拒按)、頚部から肩甲間部までの面状の張り。

【弁証】
 少陽病期、肝鬱気滞、痰湿。

【論治】
 和解半表半裏、疎肝理気、利水。

【治療】
使用鍼はアサヒディスポ銀鍼24㎜×24㎜×0.18㎜(8分8分2番)。鍼施術は毫鍼の接触鍼法を基本とした。曲泉・復溜への補法。上腹部への散鍼と瀉法。関元への補法と生姜灸。右翳風へ刺入して補法。天柱・風池・完骨・肩井へ補法。頚部から肩甲間部までの散鍼。脾兪・胃兪付近への瀉法。裏内庭への透熱灸。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年12月号」でお読みください。

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