あはきの教育現場の今
学校法人鬼木医療学園 国際鍼灸専門学校

【「東西医学の統合」のコンセプトで改革目覚ましい】

上野駅と成田空港を結ぶ京成線。国際鍼灸専門学校の最寄駅はその路線上の青砥駅である。校舎は駅の目の前に建ち、徒歩1分もかからない。駅からのアクセスのよさは、あはき師養成施設のなかでおそらく日本一であろう。

同校は1957(昭和32)年に鬼木市次郎氏により創設された。理療科、柔道整復科を設置した時期もあったが、現在は1970年に開設された昼間部の本科(あはき)のみである。「本校舎」は1年生と2年生の、「新校舎」は3年生の学び舎だが、全学年を収容できる「本校舎」を新築建設中で、2021年4月のオープンまでは「新校舎」に全学年が集まっている。

【伝統の継承と改革の断行】

初代校長の鬼木市次郎氏は全盲で、1990年にブラジルのサンパウロ市で視覚障害者の自立支援を目的とする東洋医学の専門学校を開校したことでも知られる。2000年より3代目の誠一郎氏が代表職を継承し、2017年6月に近藤雅雄氏が校長に就任。学校改革が一気に加速した。「あはきの学校改革に待ったなし」。近藤氏は断言する。

取材当日、近藤氏が取材者に分厚い資料を手渡し説明する様子を観て、同校の改革がいかに本気なのかをうかがい知ることができた。資料は「教育方針および運営組織」「教育目的と3つの方針」などのほかに、「学校長の行動規範」「近未来構想~国際鍼灸専門学校ビジョン2027~」「自己点検・評価実施項目」など、同校の基盤ともいえる事項が含まれていた。他者にビジョンを確実に伝えるため重要資料を準備して提出する姿勢に、改革の旗手の誇りがにじみ出ていた。
【医療に携わる者に問う】

近藤氏は厚生労働省に36年間務め、大学医学部では医師の教育・研究に携わり、あはき関連では1990〜1991年に厚生大臣指定講習会の講師を任じられた経験がある。同校では非常勤講師として生理学などの教鞭を執ってきたが、あはき教育が激動期を迎えるなかで校長に任命され、新しい取り組みに次々と着手した。「『東西医学の統合』精神で『全人的医療』を目指す」のコンセプトを明確に打ち出し、「小さくてもキラリと光り続ける有数の医療学園」をキーワードに定めた。

改革は小さな前進の積み重ねでもある。例えば近藤氏は、入学生には河崎一夫氏(前・金沢大学付属病院長)が2002年4月16日付朝日新聞の「私の視点」に寄稿した「医学生へ 医学を選んだ君に問う」の文章を紹介している。現在の医学生教育にも用いられる有名な文章である。「医学を専攻した者は『よく学び、よく遊び』ではなく『よく学び、よく学び』しかないと覚悟しなければならない、医師に知識不足は許されない、医師になることは身震いするほど怖いことだ、と書かれています。あはき師を目指す君たちにも医療者として同じことがいえます」と伝えている。

また、医学部では教室の後ろで助手が見張り、授業中に居眠りや内職をする学生はつまみ出される。そうならないように、「学生同士が指摘し合う環境をつくることが大事」だと近藤氏は語る。同校の座学は2クラスに分けて実施。学生一人ひとりの行動がよく見え、取材見学した授業では居眠りをする学生は1人もいなかった。60人収容の教室で座学中の居眠りを黙認する雰囲気の学校もあるが、同校には「そういう雰囲気」は感じられなかった。 「医は仁術といわれます。相手のことを慮る精神が基本にあります。自分が壇上で話す教員の立場になったらどうするか、どう感じるか。テーマを与えた模擬授業で体験させることもあります」
西洋医学の治療をよく理解したうえでの、あはき施術が必要であるという考えから、1年次に独自カリキュラム「東西医学入門」で東洋医学と西洋医学の両面を幅広く学ぶ。病気に興味を持つようにし、さらに独自カリキュラムの「生命の科学」や「栄養学」から、その後の「臨床医学各論」や「東洋医学臨床論」につなげ、より深めていく。また、医療に携わる者は論文としてまとめ、これを公開する義務があることを示し、論文の書き方や研究の仕方、発表の仕方を学生に配布している。

「高校まではlearn(学習)、高校を卒業したらstudy(独学研究)です。専門学校では自発的に学んでキャリアアップしていくstudyが中心です。暗記主体ではなく、物事を自分で考えながら勉強し、理解するクセをつける必要があります」と近藤氏。

臨床実習に携わる学科長の藤本武久氏も、同様に学生の自発性を重視している。そのうえで「『見て学ぶ』だけでは難しいので、学生に合わせた伝え方を心がけています」とのこと。

同校専任教員の寺町涼氏によると、3代目の鬼木誠一郎氏は学生に「やる気がなければ辞めていい」とはっきり伝えていたという。

「これまで前面に打ち出してこなかったコンセプトを明確化することで、コンセプトを軸に教員が取り組んでいることが学生にも伝わっているように感じます」と寺町氏。学校と学生の懇談会を年に2回行い、改善点をフランクに話し合う機会も設けた。授業評価の実施は年に1回。授業に対して点数をつけるのではなく、授業の改善を目的とし、教える側と学ぶ側の両方からアンケートを収集する。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2019年12月号」でお読みください。

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