医療連携の現場から
東北大学病院 漢方内科

東北大学病院は、宮城県仙台市の中心に位置し、病床数1176床、1日外来患者数2306名(平成30年統計)と宮城県の医療を支える基幹病院である。また、質の高い臨床研究や治験の推進などにおいて、その中心的な役割を担う「臨床研究中核病院」のほか、「特定機能病院」「がんゲノム医療中核拠点病院」などに認定されており、まさに日本の医療の中核を担っている病院ともいえる。今回はそんな同大学病院にある漢方内科で行われている漢方薬治療と鍼灸治療、また西洋医学と東洋医学の連携の様子を取材。また、未来の医療連携を生み出すため、同大学が実践している教育についても話を聞いた。

【東北大学病院の鍼灸師の1日】

東北大学病院では1996年より、漢方内科において鍼灸治療を行っている。今回、同科にて鍼灸外来を担当している金子聡一郎氏に協力を依頼。院内での勤務に同行した。

朝早くから始まる勉強会
取材当日の7時30分、外来が始まるより早いこの時間から、金子氏は漢方内科に所属する医師や鍼灸師からなる朝の勉強会に参加した。この朝の勉強会では、症例検討、日本漢方のバイブルである『傷寒論』の輪読会、中国語の医案(症例)の輪読会、医学論文の抄読会や学会で発表するポスター資料に関するディスカッションなどが行われる。当日は、ポスターの内容を確認しつつ、医師や鍼灸師各人が専門分野からの見解を述べていた。

また、会議室には別の医療機関につながっているモニターが用意されており、同じ機器が設置された宮城県内の医療機関からリアルタイムで会議に参加できるようになっていた。金子氏によると、「これは地域医療振興のために宮城県が主導して構築したネットワークシステムで、カルテなどの情報を医療機関で共有できるほか、このようにテレビ会議を行うことも可能です」とのことだった。
外来での施術と医学生への鍼灸教育の両立
朝の勉強会が終わると、金子氏は漢方内科の外来ブースに移り、鍼灸の施術を行う。そのまま午前が過ぎるかと思いきや、10時30分頃に今度は医学生が待つ研修室へ移動。5年生に対する鍼灸に関する実習を行った。東北大学医学部では、まず4年生の時点で全学生に漢方と鍼灸に関する講義が1コマあり、5年生と6年生では選択科目として漢方内科での臨床実習を選ぶことが可能である。金子氏は同科における鍼灸に関する実習や授業を担当している。

取材時は、5年生への実習に関しては、まず鍼がどういうものか知ってもらうため実際に鍼を手に取ってもらい、その後、刺鍼を経験してもらう。そのうえで刺鍼の作用機序など、基本的な内容を解説する。また、鍼灸が保険(養療費)適用になる疾患があることや、世界の鍼灸事情や研究の概要なども説明、学生が自分の足三里への刺鍼を体験する場面もあった。

その後、12時頃から再度外来患者の診療に入る。同大学では鍼灸師は金子氏を含め2人在籍しており、それぞれが別の曜日を担当し、1カ月でのべ約100人に治療を行っているという。患者の問診、脈診、腹診、舌診などの確認などは一般的な鍼灸施術と変わらないが、特徴的なのは押手を使わない点であった。これは清潔操作の一環として行っているとのことだった。

異なる立場との交流を深める症例検討会
16時頃に外来が終わると、同科の漢方専門医、専攻医や研修医、鍼灸師、大学院生などを交えた新患の症例検討会が始まる。患者の電子カルテを見ながらディスカッションを行うのだが、これには各専門家の意見を取り入れることのほか、それぞれの立場の人間が同じ空間で学習するといった目的もある。

検討会では、鍼灸を追加したほうがよいという意見になれば、そのまま金子氏らに患者が紹介される。事前に患者の情報共有を行うことでスムーズな鍼灸治療の開始を可能にしている。また、鍼灸師も初診時の検査結果などを共有することによって患者の状態を把握し、治療に臨むことができる。
医師へのQuestion
【10年先の連携を見据えた教育改革】


「Q. 他職種連携のポイントは」

高山   他職種連携は大きな病院と中規模の病院、また鍼灸院、歯科医院、診療所とのつながり(連携)を通じて行われます。さらに細かく見ると病院内でも診療科同士のつながり、指導医から研修医、医学生のつながりがあります。これらを全部円滑にしていくことが必要です。鍼灸を医療機関においてより認知してもらうためには、つながりの最初の段階である医学生から、鍼治療を理解してもらうことが一番のポイントだと考えます。

「Q. 医学部では現在、鍼灸を教えているのか」

高山   現在、日本国内にある82の医学部で行う卒前卒後の漢方教育について、共通化された基盤カリキュラムを使おうという活動がありまして、私も協力しています。そのなかでは、鍼灸教育を入れたほうがよいとする大学も多いのですが、その理由は文科省の方針だけではなく、国際基準で認証された医学部になるためでもあるのです。認証を受けた医学部を卒業すれば、海外で医師免許を用いる申請を行うことができる資格を得ることが可能です。その認証基準のなかには、自国の伝統医学を教えていることも含まれています。日本でいう伝統医学は漢方や鍼灸が該当するので、医学部で鍼灸も教えたほうがよいというのは、国際基準を考慮してだと思います。

東北大学では、鍼灸の講義や実習を学んだ人たちが毎年卒業しています。これが非常に大切で、10年経て世代が変われば、多くの医師が鍼灸を知っていることになる。それがつながりとして一番理想的な形です。つながりとしてはほかにも、医師と鍼灸師、そして医学生が一緒に勉強できるようにと考え、症例検討会を開催しているのもポイントですね。漢方専門医を取得するために勉強している耳鼻科医などの専攻医も一緒に勉強しています。

他職種が相互理解をするためには、多くの職種と関係を構築しディスカッションができる環境が必要です。医学生には興味があれば鍼治療の臨床研修を手伝ってもらいますし、鍼の研究で論文を書いたりしています。そうして鍼灸論文が増え、質のよいものが「PubMed」という医学論文のデータベースに蓄積されていけば、信頼性も向上していきます。

 

つづきは、雑誌「医道の日本2020年2月号」でお読みください。

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