経穴主治症総覧
治療家必携のバイブル!
ツボの効能と臨床での使い方が分かる
「この経穴(ツボ)は、どんな症状に効くのだろう?」
鍼灸マッサージ師のみならず、治療家ならば誰もが知りたい「経穴の主治」。
『素問』『霊枢』『甲乙経』『黄帝内経明堂』などの古典では、どう書かれ、どう解釈すべきなのか。また、明治期以降の名人たちは、どのようにそのツボを治療に生かしてきたのか。
さらに、筆者の池田政一氏が長きにわたる臨床で、それぞれのツボをどう治療してきたのか――。すべてのツボの効果をまとめた治療家のバイブル。
関連書籍・DVD
漢方主治症総覧
臨床家のための症例別 伝統鍼灸治療法
漫画ハリ入門 楽しくわかる経絡治療
図解 よくわかる経絡治療講義
古典ハンドブック5巻セット
【レンタル動画】セミナーで身につく!池田政一の臨床 講義編①
【レンタル動画】セミナーで身につく!池田政一の臨床 講義編②
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ISBN | 978-4-7529-1152-4 |
編著 | 池田政一 |
仕様 | B5判 923頁 |
発行年月 | 2017/1/1 | 価格 | 17,600円(税込) |
目次
1.手の太陰肺経
2.手の陽明大腸経
3.足の陽明胃経
4.足の太陰脾経
5.手の少陰心経
6.手の太陽小腸経
7.足の太陽膀胱経
8.足の少陰腎経
9.手の厥陰心包経
10.手の少陽三焦経
11.足の少陽胆経
12.足の厥陰肝経
13.督脈
14.任脈
2.手の陽明大腸経
3.足の陽明胃経
4.足の太陰脾経
5.手の少陰心経
6.手の太陽小腸経
7.足の太陽膀胱経
8.足の少陰腎経
9.手の厥陰心包経
10.手の少陽三焦経
11.足の少陽胆経
12.足の厥陰肝経
13.督脈
14.任脈
ページサンプル
著者インタビュー
古典から現代の名人の著作まで幅広く紐解きながら、それぞれの経穴の主治症をまとめた『経穴主治症総覧』が2017年1月に発刊されました。経絡治療の大家ともいうべき池田政一氏がなぜ今、「そのツボは何に効くのか」を改めてまとめようと考えたのだろうか。編纂の動機と本書の活用法について聞いてみました。
─構想から6年かけた『経穴主治症総覧』がついに発刊されました。900ページ以上の大作ですが、長年、経絡治療を行ってきた池田先生が今、あえて経穴の主治症をまとめられたのは、いささか意外でした。というのも、経絡治療では、脈を診て六十九難型の「虚すれば其の母を補う」という古典に依拠した方法をとります。経穴の主治症を重視した臨床とは一線を画すと思いますが、なぜ経穴の主治症をまとめようと考えたのでしょうか。
池田あえて経絡治療の悪口をいえば、脈だけ診てやる『難経』に基づいた選穴方法で補瀉すると「腎虚証ならば必ず復溜を使う」といった具合に、ワンパターンになりがちなのですね。経絡治療では、手足の経穴に比べると、体幹部の経穴は軽視されていますが、はたしてそれでよいのかどうか。
治療家によってよく使う経穴があると思いますが、それ以外にも経穴はすごくたくさんあります。そして、さまざまな文献にそれぞれのツボについて「こういう病気に効く」と書いてあるわけです。『難経』に基づいた証による治療を土台にしながらも、そこに経穴の主治症をプラスできれば、治療の幅がどんどん広がるんじゃないかと考えたのが、この本をまとめた動機です。「このツボにはこういう主治症があるんだ」というのを臨床家ならば、一つでも多く知っておくべきでしょう。
治療家によってよく使う経穴があると思いますが、それ以外にも経穴はすごくたくさんあります。そして、さまざまな文献にそれぞれのツボについて「こういう病気に効く」と書いてあるわけです。『難経』に基づいた証による治療を土台にしながらも、そこに経穴の主治症をプラスできれば、治療の幅がどんどん広がるんじゃないかと考えたのが、この本をまとめた動機です。「このツボにはこういう主治症があるんだ」というのを臨床家ならば、一つでも多く知っておくべきでしょう。
─ それは、経絡治療だけではなく、中医学だろうか、長野式だろうが、どんな治療法を使っている治療家でも、ということでしょうか。
池田どんな治療法を用いていても、経穴の主治症を知ることは、絶対にプラスになると思います。自分で「これだ!」と思う治療法と出合って突き詰めていくと、一つの型ができてきます。その型を手に入れるまでが一苦労なのですが、型を手に入れてからは、ワンパターン治療に陥ってしまうおそれがあります。どんな治療法でも、型ができたことに満足してしまっては、そこから先の発展はありません。
もちろん、まだ治療法が定まっていない人にとっても、経穴の主治症を知ることは臨床に大変役に立つことです。しかし、すでに一つの治療法を型として持っている人ならば、経穴の主治症を改めて知ることで、より深い見識を得て、新たな視点が広がることでしょう。自分の臨床経験と照らし合わせることによる気づきもありますからね。現に、私自身がこの本を編纂することで臨床の幅が広がりました。古典ではどう記載されていて、明治以降の名人たちはどのような目的でこのツボを使っていたのか。それを知ることは、新たな発見の連続でしたね。
もちろん、まだ治療法が定まっていない人にとっても、経穴の主治症を知ることは臨床に大変役に立つことです。しかし、すでに一つの治療法を型として持っている人ならば、経穴の主治症を改めて知ることで、より深い見識を得て、新たな視点が広がることでしょう。自分の臨床経験と照らし合わせることによる気づきもありますからね。現に、私自身がこの本を編纂することで臨床の幅が広がりました。古典ではどう記載されていて、明治以降の名人たちはどのような目的でこのツボを使っていたのか。それを知ることは、新たな発見の連続でしたね。
例を挙げれば、『黄帝内経明堂』に出てくる経穴のなかで主治症が一番多いのが、何だと思いますか。実は、湧泉なんですよ。「ええー!」と思いましたね。中国の鍼灸師が多く使ったからでしょうけど、湧泉が一番多いというのは、面白いです。振り返ると、自分自身も結構使っているな、と。
また、中封を見てみると「食下らず」に効くと『銅人』にも『聚英』にもあります。確かに中封を刺激すると、後で腹がすいてきたりするんですよね。中封は肝経のなかの肺に関係するツボでもありますから、呼吸器症状があって食欲不振というと、中封を使ったほうがいいんじゃないだろうか。そんなふうに発想が広がっていきます。
また、中封を見てみると「食下らず」に効くと『銅人』にも『聚英』にもあります。確かに中封を刺激すると、後で腹がすいてきたりするんですよね。中封は肝経のなかの肺に関係するツボでもありますから、呼吸器症状があって食欲不振というと、中封を使ったほうがいいんじゃないだろうか。そんなふうに発想が広がっていきます。
─本書では、354穴が収録されています。理由を教えてください。
池田『鍼灸甲乙経』に記されている349穴に『銅人』に記載されている5穴を加えた354穴の主治症をまとめました。現在、学校の教科書では『資生経』から5穴(眉衝・督兪・気海兪・関元兪・風市)、『類経図翼』から2穴(急脈・中枢)を加えた361穴が載っていますが、追加分については古典文献における記述が少なく、過去の先生方の文献でも主治証が記されていないために省略しています。奇穴についても記していません。
─どのような古典が本書に収録されていますか。
池田『難経』には主治症の記載がないので、まず『素問』と『霊枢』に記されている経穴の主治症を取り上げました。次いで時代的に古い順に『傷寒論』『金匱要略』『脈経』『黄帝内経明堂』『医心方』『鍼灸甲乙経』『備急千金要方』『外台秘要方』『銅人腧穴図経』『鍼灸聚英』『類経図翼』『黄帝明堂灸経』『鍼灸則』『鍼灸説約』と、日本でいう江戸時代末までの書物を「古典書物」として引用しました。
私は書誌学に詳しくないので間違いがあるかもしれません。『明堂灸経』は宋代の『太平聖恵方』のなかの灸に関する記述のようです。『鍼灸則』は江戸時代の菅沼周桂、『説約』は江戸末期の石坂宗哲が書いたものです。
『鍼灸則』や『鍼灸説約』は、今回改めて序文から目を通して、いずれも「経絡治療」というよりは「経穴治療」というスタンスなのだという感想を持ちました。『明堂灸経』も灸点の記載が中心なのです。
そのほかに『医学入門』や『鍼灸大成』なども古典では知られていますが、ほかの書物と記載内容が重複していますので、外しています。『甲乙経』や『脈経』も、『素問』『霊枢』からの引用が多いですが、この2冊については経穴の主治症があるので収録しています。
私は書誌学に詳しくないので間違いがあるかもしれません。『明堂灸経』は宋代の『太平聖恵方』のなかの灸に関する記述のようです。『鍼灸則』は江戸時代の菅沼周桂、『説約』は江戸末期の石坂宗哲が書いたものです。
『鍼灸則』や『鍼灸説約』は、今回改めて序文から目を通して、いずれも「経絡治療」というよりは「経穴治療」というスタンスなのだという感想を持ちました。『明堂灸経』も灸点の記載が中心なのです。
そのほかに『医学入門』や『鍼灸大成』なども古典では知られていますが、ほかの書物と記載内容が重複していますので、外しています。『甲乙経』や『脈経』も、『素問』『霊枢』からの引用が多いですが、この2冊については経穴の主治症があるので収録しています。
また、古典からの引用だけでは臨床に使いづらいので、ツボごとに「意釈と解説」をつけて、古典における病名や病理の説明を行いました。なにしろ、古典には現代医学的にはあり得ないようなことも書いてあります。そのあたりの注意点や補足についても、各経穴に「まとめ」の項目を入れて記載しました。古典をきちんと踏まえることで、古典のよいところも悪いところも見えてきますよ。
─ 古典だけではなく、明治期の名人が、その経穴にどのような主治症があると考えて、どんな刺し方をしたかなども、それぞれ記載されていますね。
池田経穴の主治症を一つひとつ知っておこうと思うと、古典にプラスして、明治期の名人たちがどのように使っていたかも気になってきて、この際なのでまとめました。柳谷素霊、岡部素道、本間祥白、竹之内診佐夫、代田文誌……といろんな名人たちの視点からのツボへの言及を集めました。上地先生はわりと具体的な刺し方が書いてありますね。中医学や深谷灸などからの視点も入れました。常々、私が思っているのが「絶対にこの治療法だけがいいのだ」と一つの治療法に偏らないほうがよいというこ とです。私も中国鍼を使って、殿部に深く刺すことがありますからね。
一つの治療法をベースにしながら、そこに新しい要素を足していく。この本を見れば「腰痛にこんなツボを使うのか」「首藤傳明先生はこんな使い方をしている」「上地栄先生はこんなやり方で刺しているのか」など、本人が勉強しようと思えばいくらでも勉強できるような材料を提供したつもりです。必要に応じて私自身の臨床での用い方も「まとめ」に入れたので、参考にしていただければと思います。どのぐらいの深さの鍼を刺すかのか、お灸だったら何壮ぐらいがよいのか。そういう臨床上のポイントを書いたので、ぜひ追試してみてほしいです。自分自身もこの本を編纂したことで、追試しなければならないことが随分と増えました。臨床の幅がさらに広げられそうで、治療家としても非常に意義深い経 験になりました。
また、巻末には索引もつけました。経絡別になっているので、全体の病理をみたうえで「この脈の状態ならば、大腸経を使いたいんだけど、どれがいいだろうな」などと考えるときに便利だと思います。
一つの治療法をベースにしながら、そこに新しい要素を足していく。この本を見れば「腰痛にこんなツボを使うのか」「首藤傳明先生はこんな使い方をしている」「上地栄先生はこんなやり方で刺しているのか」など、本人が勉強しようと思えばいくらでも勉強できるような材料を提供したつもりです。必要に応じて私自身の臨床での用い方も「まとめ」に入れたので、参考にしていただければと思います。どのぐらいの深さの鍼を刺すかのか、お灸だったら何壮ぐらいがよいのか。そういう臨床上のポイントを書いたので、ぜひ追試してみてほしいです。自分自身もこの本を編纂したことで、追試しなければならないことが随分と増えました。臨床の幅がさらに広げられそうで、治療家としても非常に意義深い経 験になりました。
また、巻末には索引もつけました。経絡別になっているので、全体の病理をみたうえで「この脈の状態ならば、大腸経を使いたいんだけど、どれがいいだろうな」などと考えるときに便利だと思います。
─ 臨床のヒントが詰まった治療家のバイブルになりそうですね。読者に一言、お願いします。
池田哲学の専門家は古い哲学書から全部読まないと、新しい哲学は論じられません。東洋医学の専門家も同じで、まずは古典書物を大切にしっかり読んで勉強していないと、新しく何かを論じることはできないでしょう。現代医学的な鍼灸を行うのは、私はダメだと全然思いません。むしろ、鍼灸の発展のためには必要でしょう。ただ、古典を知ることなく、いきなりそこに行くのは無理があると思います。土台がグラグラになってしまう。
鍼灸が何千年も前から現在まで残っているのは、それだけ効果があるという証でもあります。だったら、そのもととなる古典を徹底的に研究したうえで、治療に生かすべきではないでしょうか。ぜひこの本を読んで、足りないと思う部分があれば、読者に付け足してほしいと願っています。
鍼灸が何千年も前から現在まで残っているのは、それだけ効果があるという証でもあります。だったら、そのもととなる古典を徹底的に研究したうえで、治療に生かすべきではないでしょうか。ぜひこの本を読んで、足りないと思う部分があれば、読者に付け足してほしいと願っています。
「月刊 医道の日本」2017年2月号より転載
●池田政一(いけだまさかず)
1945 年、愛媛県生まれ。1968 年、明治鍼灸専門学校卒業。鍼灸と漢方薬の理論と臨床の一致をライフワークとして研究を続け、国内外で講演活動を続けるとともに、多くの内弟子を育ててきた。元・鍼灸経絡治療学会学術部長。現在、漢方薬専門店と鍼灸治療院を開設。
著書に『図解鍼灸医学入門』『古典ハンドブックシリーズ』『伝統鍼灸治療法』『蔵珍要篇』『古典の学び方』(以上、医道の日本社)、『臓腑経絡からみた薬方と鍼灸(全五巻)』『古今腹証新覧』『脈経解説』『新古典の学び方』『鍼灸と湯液の臨床百選』(以上、たにぐち書店)、『難経真義』(六然社)、『日本鍼灸医学・経絡治療基礎篇』『日本鍼灸医学・経絡治療臨床編』(ともに経絡治療学会)。
1945 年、愛媛県生まれ。1968 年、明治鍼灸専門学校卒業。鍼灸と漢方薬の理論と臨床の一致をライフワークとして研究を続け、国内外で講演活動を続けるとともに、多くの内弟子を育ててきた。元・鍼灸経絡治療学会学術部長。現在、漢方薬専門店と鍼灸治療院を開設。
著書に『図解鍼灸医学入門』『古典ハンドブックシリーズ』『伝統鍼灸治療法』『蔵珍要篇』『古典の学び方』(以上、医道の日本社)、『臓腑経絡からみた薬方と鍼灸(全五巻)』『古今腹証新覧』『脈経解説』『新古典の学び方』『鍼灸と湯液の臨床百選』(以上、たにぐち書店)、『難経真義』(六然社)、『日本鍼灸医学・経絡治療基礎篇』『日本鍼灸医学・経絡治療臨床編』(ともに経絡治療学会)。